第20話「光一の日記(2)」

 二〇二五年五月二十八日


 久しぶりに姉さんの家に行った。悟郎ごろうさんに挨拶し、夢月むづきと遊んで。


 十六歳の夢月はすっかり緊張していた。彼女にとっては死んだはずの両親との再会だ。それがどんな結果と心境をもたらすのか、俺にはまるで想像がつかなかった。


 もし、あの子が自分の正体を明かしたとしたら、姉さんや悟郎さんは信じるだろうか。


 いや、彼女自身がそれを望まないかもしれない。大体それをして、一体どのようなメリットがあるというのか。悟郎さんが薄々気づいているかもしれないとはいえ。


 ……〈リライト〉がまた攻めてきて、夢月とヨルワタリがまた戦った。


 こちらは逃げることぐらいしかできなかった。歯がゆい。


 当事者のはずなのに。


 狙われているのは俺の方なのに。


 仮に。もし、俺がヨルワタリに乗ることができたなら——


 ……いや、馬鹿な妄想だ。俺もあの子と同様、疲れているのかもしれない。


 ……それにしても。


 本物のロボットに乗ったことのない身とはいえ、あの子の操縦には無駄が目立つ。


 いや、さすがにこれは言い過ぎか。守ってもらってる身でこんなことを言うのは、あまりにもおこがましい。ゲームとは違うのだから。

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