友愛数の短編集

友愛数

君と僕

明日は卒業式。

もう君ともしばらく会えないね。



君と会ってからは楽しかったような気がするよ。

君と初めて会ったのは…確か2年前の今日だったかな?

校舎裏、1人で蹲って泣いてるのを僕が慰めてあげたんだっけ?

そしたら「虐められた」って言うから驚いたよ。

君はクラスで1番明るくて、かつ成績が良くて、それであって容姿も完璧だった。多分他の人からの妬みだったんだろうけど、君となら一緒に過ごせていけるかなって、そんな気がしたんだ。



毎日放課後屋上に2人集まって色々話したね。

毎日自慢げに虐められた時の傷を見せてくるもんだから、最後らへんはもう呆れ返ってたんだよ。本当に。

でも、僕は君が強がってること。知ってたんだよ。

毎日昼休みに泣いていて。

僕にくらいそんな姿見せてくれたって良かったのにさ。

でも最初ら辺は君は殆ど口は聞いてくれなかったよね。

心を閉じちゃったみたいにさ。でも、段々打ち解けてくれたのはとても嬉しかったよ。



あの日、ほら、夕日がやけに綺麗だったあの日。

確か、1年前の今日だっけ?

2人で伸びる影を見てなぜか笑ったんだよね。

その日に君はこれからどうして行くか話してくれたんだ。

びっくりした。僕とは全く違う道に進んで行こうとしてるんだから。

でもさ、嬉しかったのもあるんだ。

君はいつも後ろを向いて、一向に前に進もうとしなかったから

さ。前を向いて歩き出そうとしたのが嬉しかった。



それから僕と君とは殆ど話さなくなった。

話すとしたら僕が一方的に話しかけるくらいだったね。

わざわざ階段まで登って家まで会いにいって。

意外に長いんだね。君の家の前の階段。

運動を全くしない僕からしたらたった50段の階段も100段位に感じられたんだ。いっつも疲れて、息を切らして、汗を流して君に会いに行った。


楽しかったな。



でも君は前を向いて、これからに希望を見出して、1歩踏み出したっていうのに。

僕はちっとも前を向けなかった。君から話してくれないのが寂しかったのかな。

―いや、違うか。


さっき「前に向いて歩き出したの嬉しかった」って行ったけど、半分本当。半分嘘だよ。

本当は羨ましくて、―妬ましかった。


前を向けない僕に比べて、君は前を向いた。

勇気の違いに腹がたった。ほんの少しだよ?少し。

僕だけが取り残されたみたいで、嫌だった。

―待って、置いていかないで!僕を1人にしないで!


そんなことを毎日思ってた。

でも今は違うよ。

僕も前を向いて歩き出すって決めたんだ。

君とは違う道だけど、君の背中をいつまでも遠目で眺める事なんか出来ないから。

君の事は遠くから見守ってるね。


伝えたかったことがあるんだ。

でも恥ずかしいや。まだ言えない。

でも…今言わなかったら後悔するよな…

言おうかな…今から。


君に伝えるために階段を登る。

息が苦しい。現実から目を背けたいのだろう。

でも前を向くんだ。


やっと登りきった。

疲れた。桜並木がとても綺麗だ。


―あった。君の家。

僕は屈んで伝えたかったことを伝えた。

1つは前を向いていくこと。

もう1つは…


―『ずっと、大好きでした。』









今日は、君の命日。


君と僕-fin-

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