白か黒か、正義か悪か…
私は、10代、20代ととても生き辛さを抱えながら生きてきました。
それは、私に真ん中という選択肢がなかったからです。
勝つか負けるか、イエスかノーか、好きか嫌いか、白か黒か、正義か悪か、0か100か…。そんな二択しか選べない世界の住人が私でした。
そんな私は、よく人から言われました。白よりの黒もあるし、黒よりの白もあるし、灰色だってあるんだよと…。でも、私には理解出来ずにいました。それでも、口に出したりはしていましたよ。灰色もあるよねとか友達に言ったりするんです。でも、口に出したって根本は変わらなかったです。
その世界の住人は、正義感に溢れ間違っていようがいまいが進んで行きます。それが、私でした。
そんな人間だったから、人からは疎まれていたと思います。言ってもない事を私のせいにされたり、偽善者だと言われたり陰でしていました。
それでも、私は自分の二択を曲げずに生き続けました。そして、あり得ないと思われるかも知れませんが…。私は、誰かの痛みを癒してあげたかったのです。同情心ではなく心からそう思っていました。だから、友人を思った言葉をたくさん言いました。どこまでも、踏み込んでいきました。それが、正しいと思っていたから…。それが、誰かの力にになると信じていたから…。
でも、そんなものを求めてる人なんていなかったと思います。ただ、話を聞いて欲しいだけ。ただ、応援して欲しいだけ。そんな感じでした。
誰かに寄り添って話を黙って聞いても、意見を少し言ってしまう人間でした。だから、嫌われていたんだと思います。
最低の人間だったのかもしれません。
私は、いつの間にか臆病者になりました。そして、どんどんと内に入っていきました。誰かと、どう接していいのかがわからなくなってしまったんです。
それからは、自分の話をするだけに変わりました。すると、自分勝手と呼ばれるような人間になっていきます。そう言われたら、次は自分を出さないようにします。嫌われたくなくて話を聞くだけの側に回りました。そしたら、いい人だねって言われるようになります。
いい人って言われるようになると、よけいに自分の意見や話しなんかほとんど言えなくなり、いいように使われるようになります。だんだんと自分は、使い捨てられるもののように思えていきました。
そんな日々を過ごしていく過程で、足の後遺症が発見されました。私は、自分に対してどうでもよくなってしまいます。一生一人で生きていき、死ぬ運命なら、別に何でもいいやーって思って生きていきます。(自分なんかどうでもいいと思っていた時期の話はまた別で書きます。)
そう思っていたのですが、出会いがあり結婚をする事になりました。
でも、結婚は二択の世界の住人の私を苦しめるものでした。足が悪くても、私は足が悪くなかった日々と同じように生きていたかったのです。それを受け入れる事は簡単な事ではなかったからです。
勝ち負けでいったら、負けてる気がしたんです。出来ない自分を受け入れたくなかったんです。
だけど、夫の実家に法事に行ったりすると私の足を気遣って、本来ならば嫁である私がやるべき事を夫の従兄弟の奥さん達がやってしまうんです。
二択の世界の住人の私は、それが許せなかったんです。お前には出来ない、お前にはやれない、そう言われてる気がしたんです。
大人げないですが、私は夫の家の法事から生き苦しさを覚え、夫に喧嘩を吹き掛けてしまって…。駅に向かって歩いてくんですよ。夫は、追いかけてきてくれ、夫の母親は心配してくれていました。今思えば、変なプライドだったんです。
そして、帰宅後、夫に私は情けなくて惨めだったと話してしまいます。夫は、どうしていいかわからずにただ黙って聞いてくれていました。
今なら、やってくれてありがとうございますと笑顔で言えます。
それは、出来る事と出来ない事がハッキリとわかってきてるからです。
でも、あの頃はそんな事を言えませんでした。
そんな二択の世界を生きていた私は、足が悪くなっていくのと比例して二択の世界ではなくなっていきます。曖昧なものがあってもいいじゃない。白か黒じゃなくてもいいじゃない。勝ち負けなのだろうか?好きか嫌いじゃなくて、普通でもいいじゃない。そんな風に物事の考え方が変わっていきました。
そしたら、急に生き辛さが消えていきました。30歳を越えて初めて生き辛さを感じにくくなっていきました。足を受け入れ始めたからなのもあったと思います。
生きてく事って、こんなにもしんどくないんだと思えました。
それまでは、ずっと息を吸っても吸っても入っていかないような感覚でした。酸素さえもうまく吸えない。その苦しさは、一生存在していく。
それが、私なのだと思っていました。
でも、違いました。たった、一つ選択肢を増やすだけで私の世界は変わりました。
勝ち負けなら引き分けを、好き嫌いなら普通を、白か黒なら灰色を…。
三択の世界は、酸素がちゃんと吸える世界でした。
そしたら、足が悪くなって出来ない事も受け入れられるようになっていきました。
三択目は、きっと自分に優しく出来る選択肢だったのかもしれません。
私は、ずっと二択に囚われていただけだったのかもしれません。
私と同じ二択の世界の住人の方がいるなら、あの日私がたくさんの大人に言われた言葉を伝えたいです。真ん中もあるんだよって!
そして、私からはこの言葉を伝えたい。選択肢を一つ増やすだけで世界は変わります。不思議と自分に優しくなれるんですよ。
もう私は、二択の世界の住人ではありません。根っこには、存在してるから時々は出てきてしまうけれど…。昔のように私を苦しめる事はありません。
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