vsサバサキ Turn‐4
「主と共に歩む希望の
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サバサキは吹き出すように笑う。
「最後の最後で引いたカードが、ついさっき手に入れたカードとは笑わせるなぁ。そんな付け焼刃で俺に勝つつもりか?」
出会ったと時と違い、身長はアオバと頭一つもないところまで成長している。アオホシ園の教室に混じっても違和感ないだろう。
「《
彼女の姿に見惚れていると笑顔で駆け寄って来る。
「マスター!」
その敬称にはむず痒いものがあった。
「マスター……? 仮契約だって言ったろ。まあ、今は猫の手も借りたいくらいだ。この状況、どうにかできるか?」
「任せてください。私がマスターを勝利に導いてみせます」
「分かった。オレも全てを《ねもね》に賭ける!
アオバは心臓を拳で叩き、飛び出したカーネルを《ねもね》に渡す。小さな生命を扱うように両手でそっと体内に取り込んだ。
アオバ:
「バトル! 《
ステッキから魔力を固めた散弾が放たれる。
『シードバレッド』
サバサキ:
「やりましたよ、マスター! これでカーネルは0です」
「いや、まだだ」
「そう! 俺が持ってるカーネルを破壊しても、《サムライ・リザードマン》が最後のカーネルを持っている限り俺はDIVEに敗北しない」
「そ、それでは……」
「オレがDIVEに勝つには、次のターンの攻撃を凌いだ上で《サムライ・リザードマン》を倒さなければいけない」
「お前のターンなんて来ないけどな!」
《ねもね》の反応からしてDVIEのルールを理解していない節がある。先ほどの気合の入った返事も勢いから出たものだったか。
「ここまでか…………ターンエンド」
《ねもね》はステッキを握り直す。
「私は諦めません」
「
いつの間にか姿を消していた《スカウト・ゴブリン》はアオバに飛び掛る。短剣が深く突き刺さりアオバが持つカーネルが0になる。
アオバ:
アオバが《サムライ・リザードマン》を破壊しなければ勝てないのと同様に、サバサキは《ねもね》を破壊しなければ勝てない。
「すみません。マスター! 背後まで気が回らず……」
「オレにかまうな! 来るぞ!!」
「《サムライ・リザードマン》で《
よそ見した隙を《サムライ・リザードマン》は見逃さない。《ねもね》はとっさにステッキを構えて魔法の盾を展開する。攻撃を受け止めたかと思いきや、盾を足場にして巨躯が宙を舞う。
重力に従って反転。体重を乗せた一刀が《ねもね》を切り伏せる。
「《ねもね》ーーーーーーッ!」
うつ伏せに崩れ落ち、ノイズで体が大きく揺らぐ。いつ霧散してもおかしくない。
《サムライ・リザードマン》はサバサキの元まで戻る。役目を終えたからではない。得体の知れない危機感を真っ先に感じ取ったからだ。
「なんだ? これは――――」
擦るような奇怪な音が耳を撫でる。
石畳の表面に苔がむしていく。露出した地面からは新芽が顔を出す。まるで《ねもね》の周りだけが、何十年、何百年という月日が経過して原生林に回帰しているかのようである。
草木からシャボン玉のような生命力の光が広場に満ちていく。傷ついた《ねもね》の取り込まれるとダメージの揺らぎが収まる。そして、指先がピクリと動いた。
「マスターは…………私に命を預けてくださったのです…………。倒れるわけにはいきません」
《ねもね》はしっかりと自分の足で立ち上がった。
「…………バカな………………何が起きている!?」
「まさか…………」
アオバはカードに目を落とす。
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■【核醒】自分{《
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「カーネルがベースにある時、その真価を発揮する――――――」
「か、【核醒】効果だと!?」
「
『サンクチュアリ・ガーデン!!』
「くっ、…………だが、所詮、現状維持! 《サムライ・リザードマン》を倒す手段は無いんだからな! ターンエンド」
「《ねもね》が繋いだこの1ターン、無駄にしてたまるか!」
九死に一生を得たが《ねもね》もそう長くはもたない。正真正銘これが最後のドローになる。
「
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《ファイヤーレッドスピア》
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■相手{
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このカードでは《サムライ・リザードマン》を倒すことはできない。奇跡は二度も続かない。あと一歩が足りない歯痒さで犬歯がギリリと音を立てる。
「マスター、指示を――――」
《ねもね》はまっすぐ敵を見据えたまま語りかける。その背中は出会って間もないのにも関わらず、頼もしく思えた。
「マスター?」
「いいや、気合入れただけだ」
《ねもね》より先に諦めてどうすると両手で頬を叩いて奮い立たせる。
このままでは終われない。希望はあると彼女は背中で語っている。
もう一度、初めから考え直せ。手札、
思考の海へ深く、深く、DIVEしろ――――!!
「…………泣いても笑ってもラストターンだ。いくぞ、《ねもね》」
「はい!」
「
アオバの手に炎が宿る。槍の形に変化しても熱は感じない。
「残念だったな! 《サムライ・リザードマン》は
「ああ、分かっている。オレが破壊するのは、《スカウト・ゴブリン》!」
穂先を標的に向けて投擲する。見事、体を貫いて炎に焼かれた。
「ダメージを減らして少しでも生きながらえようって根端か? 結局、《サムライ・リザードマン》を倒さなきゃDIVEには勝てないんだぜ」
「分かってるさ。ここが勝負時――――。バトルだ。《
《ねもね》は果敢にも正面から挑む。
「血迷ったか! 《サムライ・リザードマン》の【核醒】効果! このカードが攻撃対象になった時、そのアバターに攻撃する」
『秘義――
刃は音速を超え、吸い込まれるように一点を狙う。
想定通りの行動にアオバは笑みを浮かべる。
《サムライ・リザードマン》の剣技は到底見破れるようなものではない。だが、技への自信と執着が狙いを絞らせる。来ると分かっていれば対処は簡単だ。
「《
「な!?」
ただ
『サンクチュアリ・ガーデン!』
「
「そうさ! そして、《サムライ・リザードマン》の攻撃を凌げば、次は――――――」
《ねもね》は更に一歩懐へ入り込み、《サムライ・リザードマン》の腹部にステッキを押し付ける。
「《
「やれ、《ねもね》!」
ステッキの蕾に溜め込まれた光が花開いて一直線に放たれる。
『アネモスインパクト!!』
サバサキ:
超至近距離の攻撃を受けた《サムライ・リザードマン》は刀を落とし、背中を地面につける間に塵となって消えていく。内に宿るカーネルが音を立てて砕け散った。
ゲーム終了を知らせるブザーと共に『WINNER』という文字が仮想空間を彩る。
アオバは掌に滲む汗を強く握しめた。
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