片手に収まる恋心
白露
第1話
彩梨ちゃんと私は仲良しだ。彩梨ちゃんはどこへ行くのも私と一緒だし、私は彩梨ちゃんのお母さんよりも彩梨ちゃんのことをよく理解している。
「もしもし~、鳥京君の事なんだけど!もうかっこよすぎる」
「またその話ー?聞きあきたよ、てかアイツまた赤点だったらしいじゃん。どこがいいんだか」
それに鳥京君って良くない噂あるけど、大丈夫かな。
「んー、なんかミステリアス?っていうか……ギャップ萌え?眼鏡かけてんのにね!」
「はー、盲目だね」
まあ、彩梨ちゃんが泣かないならいいけど……。
彩梨ちゃんが好きな人、鳥京晃はとんでもないやなつだ。女の子を取っ替え引っ替えしているし、最近では薬にまで手を出している。そんなの、SNSの鍵アカを見ればすぐ分かるのになあ。気付いて欲しくて私なりに頑張ってるんだけどな。彩梨ちゃんは私の気持ちを知らない。知ることなんて無い。
「小田じゃん!こんなところでなにしてんの?あー、もしかして……コレの話聞いてた?」
私と本屋に行った帰りに鳥京君を見つけた彩梨ちゃんは後をつけたのだ。
「あ、いや……見てないし聞いてないよ!」
「絶対嘘じゃん」
確かに嘘である。コイツの持っている小さいポリ袋に入っている白い粉がヤバいものなのもばっちり理解している。
「ちょっ、離してよ!」
彩梨ちゃんは鳥京に粉を渡していた男に掴まれ、私も鳥京に持たれている。
彩梨ちゃんがあぶない。
「うわぁ!なんだ勝手に」
鳥京の手の中で警察を呼ぶ。そして最後の力を振り絞って、パトカーの音を出した。それに驚いた鳥京は私を壁にぶつけた。そして2人は慌てて逃げていく。
「こ、怖かったあ……あ、割れてる!まぁ、そろそろ新しい機種のが欲しかったからいいか」
画面が割れて、電源がつかなくなった私を覗き、彩梨ちゃんが溜め息をついた。遠くからは本物のパトカーの音が聞こえる。これでもう安心だ。
そっと持ち上げられる。指を切ったら、ダメだか、ら、捨てて、いい…よ。彩梨ちゃ、ん……だい、す……。
「電源もつかないや。今までありがとね」
片手に収まる恋心 白露 @Haku0907
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます