穂乃果と沙夜


「驚かせちゃってごめんね。初めまして、日山穂乃果ひやまほのかです。」

「こんなに早く来てくれるなんて思ってもいませんでした。」

「そうなの?」

「はい!つい、昨日か一昨日依頼したばっかりなのに、もう来てくれるなんて…。」

「沙夜ちゃんはトモダチレンタルをするのは初めて?」

「初めてです。私、友達が少ない、っていうかいつも此処で一人なので。

誰かが話し相手になってくれないかなって思ったんです。」


自分勝手ですよね、すみません。って沙夜ちゃんは私に謝った。

私はなんて言えば良いかわからなくて、そんな事無いよ、としか言えなかった。

1人になるのが嫌で、周りに手当たり次第に声をかけてる自分に、

沙夜ちゃんが私をレンタルした理由と似てるなって思ったし、

その考え方を自分勝手だって思える沙夜ちゃんに劣等感を感じてたのかも。

沙夜ちゃんは2つも年下なのにって。


「じゃあ、沙夜ちゃんに色々質問しちゃおうかな〜?」

「あ、良いですよ〜。なんでも聞いちゃってください!」

「じゃあお言葉に甘えて!誕生日はいつ?」

「11月25日です。歩乃果さんは?」

「私はね、5月19日!沙夜ちゃん秋生まれなんだね、冬生まれかと思った!」

「よく言われます。歩乃果さんは明るくて春生まれって感じがしますね!」

「そんなの初めて言われたな、あ!じゃあ好きな色は?」

「色、ですか?そうですね、ピンク色かな、桜みたいなピンク色!」

「桜?」

「はい!ここの窓から見えるこの木、桜なんですよ!もう今年は散っちゃったけど、春になって花が咲くとすっごく綺麗なんです。」

窓の外を指差してキラキラと笑いながら話す沙夜ちゃんを見て、

桜が本当に綺麗なんだということがすごく良く伝わった。

「じゃあ、来年の春は、2人でお花見だね。」

私が何気なくいうと、

「来年…そうですね、毎年綺麗に咲くので楽しみです!」

と、沙夜ちゃんは一瞬顔を曇らせた後、また笑顔に戻ってそう言った。


ふと、


この子はこのベッドの上で、何回春を越したのだろうと、考えた。



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