4月6日 いい加減、予定を立てる。




 改めて桜木さんのドリームランドへ、今回の映画館は誰の趣向なのか恋愛特集が組まれていた。

 こうして観ると、この前とは受ける印象が全く違う、感情の余波なのか、良く分かる気がする。


『分かる人には分かりますし、分からない人に観せた所で、分からないモノには分からないんですよね』

「そうですね、内容は理解しても実感が伴うかどうかで、こうも変わるんですね」


『アナタも含め、人間側も忙しかったでしょう。アナタが繭化の状態で観ても、こうは感じなかったかと』

「そうですね、そして感じてしまっても、桜木さんの為にはならなかったかも知れない」


『はい、まして洗脳と捉えられては困りますからね』

「すみませんでした、ありがとうございます」


『ふふ、こそばゆいですね、もう退散します』


 感情の余波とは、あくまでも純粋な共感で、そしてソロモン神は、ただ本当に人間が好きな恋愛の神様だった。

 この作品群は、その好きが詰まった特集。




 ショナが映画館から上機嫌に出て来た、そしてスーちゃんにリズちゃん、マキさんも、お互いを認識してはいない様子。

 ソロモンの恋愛作品特集、プライバシーはちゃんと守られてるし、まぁ、良いか。




 ドリームランドでの日誌を書きながら、寝起き早々にミーシャさんから怒られている。


 桜木さんのお昼寝の時間が不規則で、しかも寝る時間帯が若干バラバラだと。

 頷くアレクに白雨さん、空いたテーブルにはエナさんが晒し首の様に顎を載せている。


「ご尤もです、はい、すみません」

「そう甘くするなら時間帯を変更させますよ」

『俺はどっちでも良い』

「俺も、つか独占し過ぎじゃね?」


「そうですよ、桜木様が何も言わないからって、ずーーーっと一緒じゃないですか」

「はい、申し訳無いです」

『謝罪の顔じゃない』

「嬉しそうに謝られるとムカつくんだけど」

『でも、コレ良いルーティンだから崩したく無い』


「むー!」

「今日から、改めて気を付けます」

『夜は眠く無いから問題無いが』

「それ俺も、サクラも元々体内時計が夜か昼型なんじゃないのか?」

『うん』


「え」

「薄々は気付いてましたが、本当なんですね」

『ならエミール用にすべきだろうか』

「でもまだ買う物とか有るだろうし、今日だって和菓子屋巡りの予定なんだろ?」

『うん、そうなる予定』


「うぅー」

「睨まれましても」

『もう、先に買ってしまおう』

「だな、ギリギリまで買い回るか」

『それでも、そんなに変わらないと思う』


『エナさん、俺もせめて移動だけでも欲しいんだが』

『どうする、アクトゥリアン』

【そうですねぇ、桜木様がどう思うかですので】

「大画面はちょっと、桜木さんが起きて来たらビックリするので」

「私は普通にビックリした、ココまで侵食してるなんて」


【侵食だなんてとんでもない、ちょっと回線に混ざってるだけですよぅ】

「変態、覗き魔」

『ハナが許可してくれそうな文言を考えよう』

「だよなぁ、でもなぁ。上手く行けば、一緒に回れる美味しい役回りなんだよな、白雨は」


『成程、確かに』

「タイミングなんだよなぁ」

『今は仕方無い、そう言う運勢だから』

「んんー」

「そろそろ、起きる時間かと」


「かも」

「心配されますからね、じゃ、おやすみなさい」

『おやすみ』

「はい、おやすみなさい」


 今日から平日、新年度の時間割。

 僕は桜木さんとほぼ同じ稼働時間、6時〜22時。

 アレクは10時から、白雨は12時から、基本的にはどちらも自由に時間を合わせる昼勤。

 ミーシャさんは15時〜7時の夜勤、1番会えない時間帯でもある。


「おはよう」

【おはようございまーす!】


「ぉお、アクトゥリアン、久しぶり」

【お久しぶりですぅ、今日からご公務ですよー】


「あぁ、どんな感じなの」

【そう変わらないので大丈夫ですよ、はい、今日の予定表です】


 僕の仕事を取られてしまった。


「じゃあ、僕は朝食の準備を」

「いや、朝食セット有るし大丈夫。ゆっくりしてくれ給えよ」


「はい」


 桜木さんも、偶に僕の仕事を取ってしまう。




 お茶を飲みながらボーッと画面を眺める、予定と言ってもざっくりで。

 先ずは虚栄心の調教タイム、それが終わったら和菓子屋巡り、そしてお昼寝の時間が強制的に入る事に。


「ショナ、このお昼寝はショナもか?」

「しないとなると、どうなりますかね」


「先ず鍵を出します」

「ですよね」


「却って体調悪くなる?眠れないとか」

「ちょっと試してみないと、何とも」


「じゃあ、強制はしないが寝れ」

「はい」


 お昼寝の後はエミールタイム、コレ公務って。


「コレ公務って」

「あくまで予定ですので、エミール君次第ですが。交流が有る方が良いと」


「ほう」


 イギリスの7時がコチラの15時なので、まぁ、食事も一緒に摂れるから良いんだろうが。


 それが終わると自由時間、勉強時間が無い分、引け目を感じるワケだが。

 勉強はしたく無い。


「何かご質問は?」

「楽過ぎでは」


「御老公しないんですか?」

「あぁ、お婆ちゃんになろうかな」




 桜木さんの発想は、良く不時着を起こす。

 雨宮さんの事も、着地点が絶妙にズレて拗れてしまいそうだったのだし。


 虚栄心さんに少し遅れると伝え、ニーダベリルへ。

 お年寄りになれるブレスレットを貰い、お返しにお漬物セットを渡していた。

 意外と好評で、またコレでとリクエストを受けていた。


 そしてお婆さんへ。

 可愛らしいお婆さんなのだが、服装が。


「桜木さん」

「服装よなぁ、何を着れば良いのやら」


 変身を解除し、虚栄心さんのお店へ。

 桜木さんはまた着替えさせられ、昨日のレストランへ朝食に。


 食後にタブレットで高齢者向けのファッション誌を一緒に眺めているが、納得いかない様子。

 なので取り敢えずはと、ショッピングモールへ一緒に選びに行く事に。


 どうしても洋装は納得いかないらしく、後で日本へ選びに行く事に。

 そのウインドウショッピングの流れで、桜木さんが水着を選ばされている。


「地味なのよ、ウエスト出来たんだからもう少し良いの着なさいよ」

「恥ずかちい」


「バカ、ブス、水着ブス」

「言うぅ」


「女同士で出掛けるのを考えてみなさいよ、水着がブス過ぎなの、マキちゃんに恥をかかせる気?」

「あぁ、なるほど」


 桜木さんに可愛い服を買わせる天才だと思った、従者用の連絡版に書いておこう。


 そして普通に可愛い水着を買っていた、しかも2着、普通は持っている数だとゴリ押し、買わせていた。

 コレも共有メモへ。


「この子のクローゼットとか不安なんだけど」

「使って無いが」


「バカ、行くわよ」


 店に戻りマネキンを抱えて日本の家へ。


 明日の服を用意され、その次も、その次もコーディネートされた服が掛けられていく。


「助かる」

「もう全部出しなさい」


 そうして、ダサいと言って良く着ている服を捨てられそうになり、本気で抵抗している。


「まったりする時に着るんじゃぁ」

「ならもっと可愛いのでまったりしなさいよ」


「見せないのに?」

「エミール君にダサい格好見せ続けるワケ?女にゲンナリさせたく無いなら、従者だけか、完全に独りの時だけになさい。そもそも、それが何処かで漏れて、国の品位を問われたら柏木さんが可哀想でしょう?」


「うぅ、はぃ」


 桜木さんに圧勝、完勝した。

 ストレージに細分化収納させ、精霊に良く良く言い聞かせ、服を仕舞わせた。


 寝室にマネキンを置かせると、そのまま部屋のコーディネートへ。


「アンタねぇ、まさか他もこんな殺風景じゃ無いでしょうね」

「ぅう」

「ワンルームマンションがそうですね、何も無いです」


「もー!」


 クッションとテーブルとカーペットだけ。

 次はイスタンブールへ。


「ココには置くつもりだったもん」

「いつよ」


「今しますぅ」


 コレは本当に率先してやっている、欄間に蝋燭や小物を飾らせ、桜木さんの部屋になった。

 蓮の蝋燭にガラスの小物、ドリアード用の平たい花瓶、そして写真立てにスノードーム。


 多分、ココが桜木さんの本拠地。


「良いんですか?」

「おう、コレで転移したらまた全力で帰って来るだけだし」

「そんな不安なら良いのよ?」


「だって、不安でしょう」


 その不安は皆の不安、勿論僕も思っていた事。

 桜木さんの意思で、何処かに転移するのでは無いかと、その気持ちが何処からか漏れ出ていたらしい。


「いえ、大丈夫ですよ。もうそんなには心配して無いですから」

「そうよ、そこは無理する所じゃ無いわ、しまっときなさい」


「おう」

「でもやっぱり寂しいわね。ココの、新しく作りましょうよ」

「良いですね、いつにしますか?」


「今日よ、日本の手芸屋に連れてって頂戴よ」

「開いてる?」

「もう少しで開くかと」


 日本へ戻り休憩、桜木さんはソファーでお昼寝。


「はぁ、ご苦労様。昨日は大変だったみたいね」

「いえ、とても有意義でした」


「知らなかったのよ、そんな流れの要素だったなんて」

「大丈夫ですよ、問題有りませんから」


「でもよ、今は大丈夫なの?」

「はい、色々と気付かせて頂きましたので」


「そう、良かったら少し、聞かせてくれるかしら」

「はい」




 いくらハナの従者だからって、病気の月経痛を味合わせるなんてとんでもないと思っていたけれど。

 流石神様達の考えた流れ、ハナが何故世界に尽くしたのか分かったって。


「やっぱり、私には無理だわ、神様なんて」

『そんな事は無い、良く歯車として機能してくれてる。潤滑油にも、並じゃ行えないから』


「そう?ありがとうございます、エナさん。でもねぇ、楔用の従者が好きかどうか分からないなんて、どうなの?」

「好きは好きです、先ず、人間として」


 真っ赤、可愛いわねぇ。

 撮っといてあげましょうね。


「ふふ」

「あっ」

『ハナが喜ぶ』


「もー」

「先ずは人間として好き、って言った瞬間、と」


「ちょ」

「このコメントはまだ見せないから大丈夫よ、ハナに刷り込ませる為に使うんですもの」


「その、好かれるとかが考えられないので、そうされても」

「そうよねぇ、選び放題、選り取りミドリちゃんなんだし」

『ローズマリーは結局しなかったから、参加枠は増え続けてる』


 エナさんがふと庭先に視線をやり、窓を開けた。

 ロキ神、不穏だわ。


『お、お昼寝してる』

「不穏ねぇ、どうしたのかしらロキ神」


『サクラちゃん狙ってるヤツらが確定したから、その話に来たんだけど』

『参加枠、吸血鬼達』

「は、何よそれ」

「僕もまだ知らないんですが」


『ハナが寝たから、今から通知する』


「はい、確かに」

「あら、私にも」


 何よコレ、協賛国になるからって凄く下手に出てるけれど。

 綺麗に上品に、ハナを味見したいって。


「コレって」

「ハナを味見したいって、ハナなら断らないってバレてるわね」

『ウーちゃんは悪く無いんだけど、その繋がりで情報が流れた』

『ごめんなさい』

『気にしない気にしない、いつか起きる想定だったし』


「封殺出来ませんかね?」

『無理、向こうが来ると思う』

『うん、そんな雰囲気かもって』

『サクラちゃん、体大丈夫なの?』


『スクナ』

『魔素は全然足り無い』

「中域でも無いんですか?」


『うん、その手前』

「遠慮するタイミングじゃ無いのに、けど、バラすのもねぇ」

「直ぐに向かっちゃいそうですし」

『人間は、知らせるのを反対してる』


「その言い方だと、ソッチは反対して無いのね」

『うん、知らせた方が仙薬飲むと思う』

『そうなんだよねぇ、理由さえ有れば容量満たそうとすると思うんだけど』

「まだ、人間は高値が怖いんでしょうか」


『ううん、もう、吸血鬼に取られるのが心配』

『番が居ないと影響力が凄いらしいからねぇ』

「下品かも知れないけれど、番ってるかどう分かるのかしら」

『匂い、フェロモンとか、そう言うの』


「あぁ、コレは困るわね、そこらのとヤラせるワケにはいかないし」

『だから、人間が魔道具を請うのを待ってる』

『サクラちゃんか吸血鬼、若しくは両方を抑制する魔道具』


『そこで揉めてる、既に国連で』

『だから、万が一にも気を付けて欲しいんだ。魔女と呼ばれた神々は今回は向こうの味方だから、魔女の居る世界樹には暫く行かないで欲しいんだよね』

「殆ど行けないじゃないの」


『サクラちゃんの浮島か、俺の浮島なら絶対に大丈夫』

「後者が凄く不安なのだけれど」


『大丈夫、今回は召し上げ用じゃ無いから、サクラちゃんを守る為の浮島』

 《じゃよ!こう、コチラが内部分裂するとはのぅ》

『ミーミルとかは想定してた、だから番の話に協力してくれてたけど』

「向こうの動きの方が早かったのね。はぁ、無理よ、頑丈で強固な呪いなんだもの」


「その、吸血鬼の方々には」

『無理、ハナの意図する方向と違う。沿えるのは極僅か、そうなると今の段階だと内戦になる』

「魔道具以外になんとか出来無いのかしらね」


『最悪は繭化』

「最悪過ぎよ」

『だよねぇ』


 一難去ってまた一難、ぶっちゃけ詰んでるんですけど。




 ちょっと寝て起きたら、ロキが居るし。

 どしたの。


「どしたの」

『浮島の事を皆にも伝えに』


「もう出来たの?」

『うん、見に来る?』


「今度ね」

『じゃあ、来る時は言ってね?一緒じゃ無いと出入り出来無いから』


「おう」


 直ぐに帰ったし。

 なんだったんだ。


「さ、準備して、もう行くわよ?」

「おう」


 なんかまたソワソワするが、なんだ。


 まぁ、そのウチ教えてくれるだろう。


 前にも行った手芸屋へ、押し花制作セットを購入し、アクリルフレームも。

 見本可愛い、なるほど、季節感たっぷりやんな。


 その他にもブリザーブドフラワーやスノードームセット等々を購入、そのまま浮島へ。


 結構散っちゃってる、勿体無い。


「じゃ、桜を集めましょう」




 桜木さんが妖精達と花びらを拾い集めている、靴にも慣れたのか立ったり座ったり。

 ヒョコヒョコしている。


『お前、顔に出てる』

「あ、失礼しました。あの、マーリンさんは」


『知らせるのは大反対、でも、もう気付いてる気もする』

「やっぱり、浮島の方が良いんでしょうか」


『最悪は』

「ですよね。本土は中立地帯と言うか、緩衝地帯で出入り自由ですし」


『最悪の場合、寝る時ココにした方が良いかも知れない、君とハナだけ』

「ミーシャさんに殺されそうなんですが」


『言い聞かせておく』

「すみません、宜しくお願い致します」


『与えて、奪う事になるんだろうか』

「どうでしょう、ココはお好きですし」


「お、マーリン、花びらですぞ」

『砂糖漬けか』


「あ、天才か。塩漬けも作ろう」

『手伝ってやろう』


 花びらが舞い上がると、ストレージに吸い込まれた。

 試しに桜木さんが取り出すと、種類分けまでされている。


「拾った意味よ。便利だなぁ」

『戻すか』


「それは勿体無いからしない、ありがとう」

『まだ半分だ、ほら』


「あぁ、待って待って」


 今度は1種類づつ舞い上げ、桜木さんは持っていた籠で受け止める。

 綺麗で楽しそうな遊び。


「羨ましいわよねぇ」

「そうですね、大してお役に立てませんから」


「そこ?」

「笑って欲しいですけど、線引きが有るので」




 マーリンにしこたま翻弄され、桜の花びらの回収が終わった。

 後は葉桜の下で押し花作り、乾燥剤の入ったケースに入れて終わり。


 《ドライ》


 ソラちゃんの魔法で数秒で出来上がった、ズルっことも思ったが、調べるに普通の事らしい。


 茎ごと入れた八重桜も、花びらも乾燥している。


「ダメだコレ、無限に製造しちゃうわ」

「先ずは写真立てよ」


 アクリルスタンドに押し花を並べ、配置。

 横置き用に、全種類入れたった。


「写真は?」

「今撮りましょ」


 アクリルスタンドでは大して顔が隠せないので、もう虚栄心で顔を隠す。

 コレで許してくれた、悩んでる間に虚栄心も作っていたのでプリントして貰った写真を入れる。


 こそばゆい。


「こそばゆい」

「そう言われるとこそばゆいじゃない」


「こそばゆふぅ」

「お買い物が有るんでしょ、送って頂戴」


「うい」




 桜木さんと和菓子屋巡り、先ずはきんつばが美味しいと言われているお店を巡り、合間に芋ようかんと栗羊羮も買っていく。


 お茶も買い足し合間に休憩を挟み、お昼ご飯の時間に。

 エビフライとオムライスのセット、そろそろ桜木さんのお好みプレートが出来上がる頃。


「お昼寝出来そうですか?」

「余裕だから困る、いい加減容量増やすか」


 察してなのか本当に困っているのか、家に帰り仙薬ときんつばで容量を上げていると、蜜仍君が帰って来た。


「ただいま帰りましたー」

「お帰り、早いね」


「式だけだったので、何で仙薬飲んでるんですか?」

「お昼寝し過ぎたら困るから、増やそうかと」


「本当にそれだけですか?」

「低値障害出て無いから大丈夫、手を洗ってらっしゃいよ」


「はーい」


 心配していた程の低値では無かったらしく、1時間程で中域まで上がった。


 後はお昼寝、蜜仍君からも進められたので、一緒に縁側に布団を敷いて寝る事に。




 暖かくて明るいと、秒で落ちた。

 そして軽く食べたお陰か、オヤツの時間に起きた。


 エミールとオヤツ、今日はエミール式のフルブレックファスト。

 半熟の目玉焼きとベーコンが入ったホットサンド、ホットドッグにマッシュルームのソテー、トマト、ハッシュポテト。

 フルーツとオートミール等の入ったヨーグルト、グリンピースのスープ。


 1つ1つが小さいとは言え、見事に完食。

 ワシも。


「美味い」

『お魚バージョンも有るんですよ』


 違いとしてはツナのホットサンド、フィッシュフライのホットドッグ、白いんげん豆のトマトスープなんだそう。

 ベイクドビーンズの味が嫌いなんだそうで、甘酸っぱいのがダメらしい。


「それなのにお稲荷さんは良いのね」

『塩味が無いのにケチャップとメープルですよ?』


「あぁ、何かちょっと分かったかも、ケチャップ酢豚か」

「あぁ、そうかも知れませんね」

「ベイクドビーンズ缶、有りますよ、食べてみますか?」


 パトリックからの提供。

 うん、想像より甘い、酸味はそんなに無いが。


「毎朝はしんどいわな」

「代わりに豆のスープなんです」

『金曜には必ずお魚バージョンなんですよ』


「金曜はカレーじゃろ」

「海軍カレーですね、ウチも月2でそうですよ」

「桜木様のカレーって無いんですか?」


「無いなぁ、余るって概念が無いから」

「食べたいなぁー」

『僕もー』

「ココのスーパー見てみます?紫苑さんで」


「なるほど」


 エビ、ルーは中辛を全種類、福神漬け、砂糖、塩を購入。


 ちょっと離れた無人販売所へ、梅酢が有ったので購入、それと卵、キノコ、ほうれん草、タマネギを買い、皆で浮島へ。


 ルーとエビをぶち込み、タマネギを切ってはそのまま入れたり、フライパンで炒め、炒めては鍋に入れてみたり、茹でたほうれん草を入れ、ちょっと煮込んで終わり。


 味見、うん、普通に美味い。


「良い匂い、お夕飯はカレーですね!」

「金曜までダメ」


「えー」

「嘘です、今日のお夕飯にします。チーズや卵も入れます」

『やった』


 そのまま白雨とアレク、ミーシャを呼んで砂糖漬け作りをお願いし、花子に戻り温泉に。


 そして砂糖漬けへ、初めてだ。

 酒で濡らして砂糖をまぶし、乾燥させるだけ。


 だけなのだが、こまい。

 ハケで塗ってはグラニュー糖にまぶし、キッチンペーパーの上に。


 機械万歳。


「おぉ、手間の掛かる事を」

「なのに食べるのは一瞬なのですよな」


 田道間守様も加わって、完璧な量産体制に。

 日本酒、シロップ、リキュールを付けグラニュー糖へ。




 桜木さんは神様が加わってなお、黙々と作業を続けている。

 そして置き場所が無くなると、マーリンさんが魔法で乾かし、試食会に。


 日本酒が1番癖が無いので、以降は日本酒でとなった。


 早く飽きて、自分の事や趣味をして欲しいのだが。


「桜木さん、蜜仍君のゲームを見るのでは?」

「あ、宿題は?」

「もう終えましたよ」

「後は私にお任せを」


「いや、今日は解散で。ありがとうございました」

「ではコレを、少し貰って良いだろうか」


「勿論です、どうぞ」


 お菓子の神様に少しばかり砂糖漬けを渡し、一軒家へ。

 ミーシャさんと桜木さんが押し問答し、ローテーブルでミーシャさんの砂糖漬けの作業が許可された。


 そして大画面で蜜仍君がゲーム、種類が悪かったのか秒で酔っていた。

 自力では治せないのか、久しぶりの病弱を味わっているのか、ソファーに横になり目を冷やす。


「桜木様、大丈夫ですか?」

「アカン、寝ちゃうかも」

「そっちですか」


「嘘や、スクナさん、お願い出来る?」

『うん』


 集中出来無いせいなのか、スクナヒコ様に治して頂き、他のゲームを眺める。


 やはり0世界に関わるゲームが気になるのか、転生者様の案から出たゲームを見入っている。


「違和感出るわぁ」

「えー、そっちなんですか?」


「やっぱり絵が違うとか、声が違うとか。違うのは当然なんだけど、違うなぁって、懐かしいけど違う感じ」

「じゃあ、絵本はどうです?」


「忠実に再現されてるから平気、増えた絵も延長線上だから」

「人にも、思います?懐かしいけど違うって」


「蜜仍君、何の心配だ?」

「第2や第3の事です、どこか似てるなとか、思い出して寂しく無いかなって」


「寂しいは無いが」

「が?」


「ココに居たら、どうしてたかとは思うけど」

「やっぱり思うんですね、寂しいからじゃ無いんですか?」


「変な事を聞くが、蜜仍君の寂しいってどんな感じ?」

「会いたいなとか、話したいなとか、それが出来なくて嫌とか」


「会って話せるのは戻れて無いって事なので、出来無いが嫌では無い。マティアスなんかは、いつか転生して来るかもだし、ならより良くしておくだけで」

「でも、会えたら嬉しく無いですか?」


「分からん」


 本当に分からなそう、ただ、嘘かも知れないとも思うべきで。

 神々や精霊に聞いても、過度な介入だと教えて貰えないか、濁される事も有る。


 嘘を見抜く魔道具を、何とか手に入れる事は出来無いだろうか。




 ロウヒに会えたら嬉しいけど、マティアスは嬉しいかどうか。

 せいちゃんも井縫さんも、コッチががっかりする様な未来を過ごしてたら嫌だし、凄く良い未来を過ごしていても、当然の様に自分は残るべきじゃ無かったんだと思い知らされるワケで。


「難しい事を聞きました、ごめんなさい」

「いや、どちらかと言えば余白の状態なのよ、何も想像して無いから、嫌な未来になってたら落ち込むし。凄く良い感じだったら、自分が居なくても良かったんだなってなりそうだから」

『ハナは世界の観点で見る必要は無いんだよ、個人で良い』


「個人と言われましても、個人として接して無いし」

「全部なんですか?」


「ほぼ全部そうだが」

「葵ちゃんもですか?」


「そりゃそうよ、個人なら余裕っすよ」

「ココではどうなんですか?」


「虚栄心はもう個人よな、それと、蝋燭屋さんか。新作どす」

『わぁ、素敵ですね』

「人魚さんに会ったんですねー」


「せっかく白雨が追い払ったのにね」

『やり方が甘かったのかも知れない』

『アンに追い払わせたから大丈夫、泣いてた、アンが』


「可哀想に」

「俺も手伝わされたんだけど?」


「アレクは仕方無い」

「えー」

『元魔王なんだ、仕方無いだろう』


「どうしたら償える?」

「今、最大の苦痛は?」


「言わない」

「ワシ関連?」


「言わない」

「盟約魔法発動」

 《はい》


「もー」

「最大の苦痛はワシ関連?」

【言わないに効かないのが弱点】


「自白剤は違法かショナ」

「一応、はい」


「証拠が無ければ?」

「黙秘しますね」


「償いたく無いの?」

「償いはしたい」


 紋は浮かばない。

 どう吐かせようか。


「天使さん、ホールド」

【了解した】

「ちょっ、なに」


「コレが何か分かるかアレクよ、金平糖だ、しかも普通のかどうか、分かるか?」

「分かんな」

「あ」

「どっちのなんですか?」


「さぁ、口溶けが良いのよな、口に入ったら摂取回避は不可。さぁ、もう効くかどうか」

「流石です桜木様、おのが自らを拷問器具にするなんて」

「捨て身過ぎでは」

『流石、元魔王』


「そうだぞ、怖いんだぞ」

【もう、効いて来ただろう】


「お、白状しないと絶交ぞ?」

【それは恐ろしいな】




 桜木さんがとんでもない技を編み出した、捨て身の惚れ薬作戦。

 本当に惚れ薬の金平糖だったのか、アレクがポロポロと泣き出してしまった。


 恐ろしい、ミーシャさんですら恐れ慄いている、ただでさえ僕も絶交は恐ろしいのに。


「もう、何で泣くの、ただの金平糖なのに」

 《いえ、面白そうなので惚れ薬の方にしました》


「ソラちゃん」

 《冗談です、普通の金平糖です》


「ビックリしたわ、もー、何で泣くの」

「言ったら、絶対に、実行されるから」


「泣いても言わせるからな、何が嫌」

「サクラが傷付く事」


 もう、この場の誰もが嫌がる事。

 そしてコレを聞いたら、桜木さんは当然の様に実行しそうな事。


「傷付くにも種類が有るが」

「全部」


「よし、天使さん解放したげて」

【はい。砂糖漬けが食べたいです】


「どうぞ」

【あー】


「はい、どうぞ」

【うん】


 桜の砂糖漬けを1枚食べさせて貰うと、天使さんは満足したのか窓をすり抜け庭先へと帰って行った。


「今は何もせんよ、アレクだけ傷付く方法を」


「桜木さん、もう思い付いてますよね」

「黙秘」


「先生に相談なさって下さい」

「えー、うん、はい」

『ハナさん』


「大丈夫、ワシが傷付く方法では無い筈だから。ごめんな、修羅場っぽいのに巻き込んで」

『元でも魔王の事は召喚者の僕にも連帯責任は有ります、何かする時は絶対に、僕にも相談して下さいね?』


「えー、未成年に聞かせられない内容の場合はどうなるの」

『しないで下さい』


「それは、他の事でも約束出来無いんだが」

『して下さい』


「しないとどうなる?」

『嫌いになります』


「仕方無い、享受します」


 エミール君は泣くのを何とか堪えている。

 正論と我儘のぶつかり合い、でもスタンスが違う、エミール君は桜木さんには嫌われたく無い、桜木さんは嫌われても良い。


 桜木さんは、嫌われたく無い人は居ないんだろうか。


『大人げ無いよ、エイル先生に怒られる』

「それは困るが、ごめんな、すべき事はしないとだから」

『だからって、ハナさんに、そこまで身を砕かせたく無いんです』


「そう言われましても、嫌な事がワシ関連しか無いアレクが悪いワケで、だから他と交流させたいワケだが」

『それはそう、ハナもアレクももっと支柱を増やして欲しい』

「めんどい」


「だよね、だるい、もう居る皆だけで充分」

『だが、俺らがココから居なくなっても、他に繋がりを作ると思えないんだが』

「それな」

『うん、それもそう』

『アレクも悪いですけど、ハナさんもですからね?』


「えー、困った」

「ご相談に行かれては」


「そうしときます」




 庭先から先生の家の庭先へ、そのまま一服させて貰う事に。


 《揉めたそうで》

「すんませんね、群れ慣れて無いもんで」


 《ですよね、その割には良くやってる方だとは思いますよ》

「全然、独りで過ごせる筈なのに、心配されてる」


 《そうでしょうね、多趣味ですし》

「嫌われたくは無いけど、人間にした責任が有るんだし」

 《今、言い聞かせておるぞぃ》


 《子供扱いせず、1人の人間として誤魔化しや嘘をつかないで、良かったと思いますよ》

「批判的目線でお願い出来ません?」


 《罪悪感は御本人へどうぞ》

「ぐぬぬ」

 《大丈夫じゃよ、理解したいが理解したく無い、微妙な思春期じゃのぅ》


「離れた方が良い?」

 《こんな程度でですか?耐久値低過ぎでは》


「ですよね、揉め慣れて無いので」

 《ですよね、0では反抗出来なかったんですし。良い子ちゃんってヤツですね》


「嫌われまいと頑張って、それはある意味八方美人で、無理の有る事だった」

 《と、今なら分かるんでしょうが》

 《まだエミールには早いんじゃよなぁ》


「悪かった点をお願いしても?」

 《特には。償いがしたいならさせるべきです、人間の為にも、元魔王の為にも。遺恨を残しては、また大罪化か魔王化するかも知れませんからね》


「そうなんだけどなぁ、あ、金平糖食べます?」

 《コレ、どっちなんでしょうかね》


「この容器が普通の、コッチが惚れ薬入り」

 《容器以外の区別は付かなそうですね》

 《我らは分かるぞぃ、くふふふ》


「眼鏡どうぞ」

 《なるほど。拝まれてもお茶しか出ませんよ》


「大丈夫です、自前が有るので」

 《可及的速やかに、眼鏡を配布させるべきですね》

 《じゃがな、流石に目が良くなくては濃度の低いモノは判別が難しいぞぃ?》


「その濃度は違法としてくれ」

 《うむ》


「エミールは落ち着いた?」

 《まだじゃぁ》


「すまん」

 《それで、アレクに何をしようと思い付いたんでしょうか》


「最初は自傷行為、流石にアカンので、絶交かヤキモチを妬かせるかと。一時的な片思いの嫉妬なら問題無いかと」

 《具体的には》


「エナさんか誰かとイチャイチャするとか?」

 《繁殖能力が有るのでは》


「あ、じゃあ、白雨もか。でもそんな、致すワケでも無いので大丈夫では?」

 《良い意味でも悪い意味でも、調子に乗らない自信有ります?》


「あー、無いですかも」

 《我は?》


「あ、虚栄心」

 《我はー?》

 《良いかも知れませんね、無性ですから》


「へ」

 《なんじゃ、まだ知らんかったか》

 《すみません、忘れて頂けますか》


「いや、聞いちゃったって謝るから大丈夫、それから記憶を消すか聞くが。マジか」

 《で、我は?》


「色欲さんはダメ?」

 《最悪は相乗効果で他が魅了されるか悪化するかなので、もう少し議論させて下さい》

 《わーれーはー?》


 《ドリアード、アナタが調子に乗るでしょう》

「じゃの!」

 《うぅ》


「他に候補居ます?」


 《怠惰、でしょうか》


「あー、難しいラインだわ」

 《幼くなって頂いても、でしょうか》


「それは誰でもトキメイちゃうかも」

 《その変形した男性恐怖症、治す気有ります?》


「困って無いからそんなに無い」

 《明日こそは、おみくじをお願いしますね》


「あぁ、はい、予定表に組み込んで貰えます?」

 《はい》


 《お、立ち直ったようじゃな》

「毎度お世話になります、安全な砂糖漬けです」

 《頂きます》


「では」

 《はい》




 桜木さんと少しばかりの入れ違いで再びロキ神が現れ、パトリックさんと共にエミール君に言い聞かせ、何とか立ち直って貰えた。


 そして桜木さんの現状の説明となり、エミール君の知る所に。

 ただ、桜木さんにはまだバレ無い様にとの案に、エミール君は賛同し、再び落ち込んでしまった。


 ロキ神は、ココからは人間の領域だと言って庭先から何処かへ。


 今回は好きだからこそダメージが大きいワケで、アレクや白雨、僕もフォローに回ったのだが、話はおかしな方向へ。


『いつからなんですか?』

「俺は最初からだし」

『離れたらそうなった』

「僕は何回目かのドリームランドで自覚しましたけど、ショナさんは?」


「え、あ、あの、帰って来ちゃってますけど」

「あ、ドリアード早過ぎだろ」

 《アレでも心配はしておるんじゃよ?》

『だから入らないんだ。ハナ、おいで』


「良い?まだ時間要るならどうにかするけど」

『大丈夫です、我儘言ってごめんなさい』


「無理を言ってすまんね、もうこんなんだと諦めてくれんかね」

『慣れる様にするので大丈夫です、頑張ります』


「頑張らんでくれ、君が幻滅する様な事をするかもだし」

『絶対にしません、絶対に何か理由が有る筈なんですから。幻滅するのは僕の理解が足り無いだけなので、ハナさんが何をしても絶対に幻滅しません』


「逆にプレッシャー」

『はい、是非プレッシャーに感じて、極端な事は控えて下さいね』


「ロキか」

『んん』


「分かり易いなぁ、問い詰めないから大丈夫。どうせワシのフォローか何かでしょう」


『ぅう、はい』

「可愛いなぁ」


 困りながらも照れるエミール君と、庭先から誂う桜木さん。

 この前大人になったエミール君との身長差はこの位だろうか、僕にしてみたらお似合いなのに、桜木さんは絶対に受け入れない。


 いっそ、誰かとくっついてしまってくれたら。


「桜木様、お夕飯どうします?」

「もうそんなん?」


「お野菜少し足り無いので、サラダを作ろうかと」

「それか、人参ケーキか」


 こうして蜜仍君がエミール君との間に割って入るのは、好きだから。

 好きだとは知っていたけれど、そう好きだとは思わなかった。


『なら両方ですね』


 エミール君も負けてはいない、良い意味でライバルなんだろうか。


 そして桜木さんは両方の気持ちを無視している、アレクのも白雨さんのも。

 子供だからと言う理由だけでは無く、刷り込みだと、召喚者だからだと思っているから。


 コレは、僕にも当て嵌まる難しい境界線。


 境界線、作品群にも有った気が。




 エミールの要望人参ケーキはミーシャにお願いし、ショナにはツナサラダをオーダー、完璧やろ。


 白雨とアレクは砂糖漬けに移行、コチラは蜜仍君とエミール君の行事予定表を見比べるも、違いはそこまで無い。

 カリキュラムにも殆ど乖離は無い、エミールの休みが長いのは家庭で過ごす時間分らしい。


 良きライバルとして育って頂きたいモノだが、仲良く出来るんかしら。


「程好く仲良くして欲しいんだが」

「はい!」

『頑張ります』


「頑張らないとダメそうですか?」

『勉強を、先ずは追い付かないとですし』


「僕、そんなに勉強得意じゃ無いですよ?特に数学」

『それは自信有るので大丈夫かも』

「勉強内容は先行して問題無いんだべ、頑張れ」


『「はーい!」』


 2人がお勉強を始めたので、マスクを付け砂糖漬けの作業へ。

 ハケで酒を塗り、ピンセットでグラニュー糖をまぶしていく。


「何か、他の事したら?」

「趣味にケチを付けるか、喋るならマスクせい」


「へい」

『地味な趣味』

「マスクか、孤島に戻るか?」


『撤回する、する』

「爪を磨くとかさぁ」


「あぁ、明日辺りにプロに任せようかと」

「へー、やるんだ、ならちゃんとしたのすれば良いのに」

『紫苑にならずにいられないから無理だろう』


「おおん?!煽っても無理ぞ」

「でも、実際そうじゃん、さっきなったんだし」

『買い物位は任せれば良いのに』


「スーパー巡りも趣味なんだが」

「そういうのばっかじゃん、偏り過ぎ」

『『それはそう』』


「エナさんまで」

『だって、用事以外にこなして無いのが悪い』


「仮にも公務日なんだもの」

『そんなに心配されたい?』


「いいえ」

「じゃあ夕飯まで何かしろよ」

『箱庭はダメ、夕飯後だから』


 ソファーでネットサーフィンへ。

 食用花の検索、やっぱり薔薇よな。


 でも匂いがな、臭いと感じるのは作業が苦痛だし。

 苗木屋さんに有るか。


 有るな、でも花子じゃなぁ。


 和室に躙り寄り、アレク達とご相談。


「なぁアレク、苗木屋にまた花子で行くのは不味いよな」

「だろうけど、紫苑で行って大丈夫か?」


「あぁ、元夫とかショナみたいなのが好みっぽいし、大丈夫じゃね」

「何それ」


「帰り際に食事に誘われてた」

「ウケる、誂ってやろうかな」


「ちょっとだけな、ワシの分もとっとけ」

「桜木様、もう焼き上がり待ちです」


「おぉ、お疲れ様」

「何を見てますか」


「食用の花」




 サラダも洗い物も終わったので、少し桜木さんの様子を見に行くと、ミーシャさんとピッタリくっついてタブレットを見ていた。


 初めて井縫氏に激しく同情した、そしてイチャイチャして、と嫌味だけで良く済ませてくれたと感謝してしまったが。

 実は本当に、桜木さんが寝てる間にとか。


 そう考えていると、アレクが後ろから桜木さんに悪戯しようとして、ソラさんに密かに御されていた。

 うん、無用な心配かも知れない。


「桜木さん、他に何かいりますか?」

「いや、ご休憩をどうぞ」


 ミーシャさんの様に寄り添ったら、どんな反応をされるんだろうか。


 それを感じとったのか、エナさんまでくっついて。


「もうエナさんは、イチャイチャされない方が」

『ダメ?』

「らしいよ、触るとワシが妊娠するとでも思っとるんだろ」

「それは困ります、離れて下さい」


『それは流石に無いのに』

「私では無くショナを説得して下さい」

「そうなっちゃいますか、寒いなら何かお渡ししますが」


『人の温もり』

「ショナさんや、提供して差し上げて」

「ですね」


『仕方無い』

「別に僕でも良いんですね」


『アレクでも白雨でもハナが喜ぶ』

「有り難や」




 明日の予定に紫苑としての予定が加わった、苗木屋に紫苑で行く。

 食用の花を買いに、ゲームはまた今度。

 エミールや蜜仍君の居ない時に。


 お夕飯、カレーにチーズや卵をトッピングし、皆で食べた。

 毎週金曜の夜は誰かしらの作ったカレーを食べる事に、勿論お店のもアリ、次はエミールの番。


 食後の休憩中、ローズマリーちゃんやルーネ、リュカとやり取りし、お布団へ。

 エミールは浮島へ。


 隣の和室には蜜仍君とショナとエナさん、縁側にはミーシャと白雨。


 警護が厳重だ。

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