4月3日 モーニングにアフタヌーンティー、家を決めたり、消臭剤を貰ったり。




 桜木さんのドリームランドには沢山の神様が居た、先程のお菓子の神様も、まだココでは会った事の無いアンナペレンナ神と仲良く話をしている。

 そして土蜘蛛族の長、マーリン導師、ソロモン神が家でお茶をしながら、ただ小さい桜木さんを眺めている。






 エミールが眠る頃、日本は標準的な起きる時間。

 リズちゃん達とおやすみを言い、ハンで入眠。

 コチラはティターニアのお誘いで、真夜中のアフタヌーンティーを楽しむ事に。


 3段のアフタヌーンティーセット、下からサンドイッチ、布に包まれたスコーン、そして小さなケーキ達。

 憧れのアフタヌーンティー、水色の食器可愛い。


「うまー」

「美味しいし可愛いし、マジでヤバいんですけど」

「大変美味しゅう御座います」

《デカフェですからね、タップリ飲んでも大丈夫ですよ》


 この配慮よ。

 そしてサンドイッチのパンはしっとり、スコーンバッサバサで美味い、そしてケーキ。

 良い甘さのケーキ、最高かよ。


「完璧やん」

「最高よね」

「だな」

《良かった、ふふ》


「日本式も食べてみたいな」

《あら素敵、“お重”だったかしら?》


「あぁ、そう言う事になるか。でもそれだと日本式って、お握り、おやき、和菓子?お腹パンパンになりそう」

「中段に、蒸しパンとかは?」

「下段は寿司か、ちらし寿司か」

「和菓子は落雁ですかね」


「何か違う、そうじゃ無い」

「お重なら問題無いだろ」


「あぁ」

《ふふふ、楽しそうね》


「でも、和式アフタヌーンティーセットって、お茶か」

「お重ですしね」

『酒飲み用を頼む』

《じゃあ、私も、ふふふ》


 余計?な事を言ったせいで仕事が増えた、もう今から働いてやろうか。


《今からもう働いてやろうかと企んではおるまいな?》

「読むなよ」

「先ずは、色々と決める所からお願いしますね」

「だな」

「じゃあ、家?」


 ティータイムを終え、エミールをどうするか相談していると、すっかり時間が崩れたのか、エミールが起きてしまった。

 そのままエミールを連れ、浮島ごと日本へ。


 先ずは家の事から、ショナは用事が有ると省庁へ、蜜仍君と賢人君が付き添いに加わった。

 出されたのは紙媒体の家の図面、図面大好き。


『僕、ココが良いです』


 8LDK、縁側だか広縁は有るし、洋室に小上がりは有るし、ロフトは有るし。

 確かに全部入りで良いが。


「部屋数が多過ぎない?」

「そうか?俺らも偶に来るんだし、こんなもんだろ」

「田舎あるあるね」


「でもなぁ」

「桜木様、ウチの方の本家もこの位ですよ?」


「じゃあ、エミールはこの部屋だとして、アレク達はどうすんの」

『2人1部屋で問題無い』

「それな、どうせ寝るだけだし」


「僕も、従者としてはココで充分ですし」

「ココがコンちゃんだとして、このデカい洋室はどうすんの」


「そらもう皆がココみたいにワラワラ集まる」

「で、コッチかコッチに偶に私達が泊まりに来るかな」


「ほれ、丁度良いだろ」

「ハナがココも使っても良いんだし」

「試しに見に行きましょうよ!」

「そうっすね、鍵はもう預かってるんで」


「先読みか」

《じゃの!》

『良い運気が流れているらしいぞ』


 蜜仍君と賢人君が見に行き、エミールと一緒に隠匿の魔法を使っての下見。


 デカい、庭もデカい。

 低い石垣に青竹の真新しい竹垣、編み編みでお洒落、しかも風通しも目隠しも良い感じ。


 何も植えられていないのは、大家が新居に持って行ったかららしい。


 中も画像通り、綺麗に仕上げられた漆喰の薄緑色の壁。

 濃い焦げ茶色の柱や床。


 畳も替えたばかり、フローリングの使用感は気を使わないで暮らせる安心感が有る。


 お風呂もトイレも新品、ただカーテンは現在の持ち主のモノだそう。

 使わない場合は思い出の品なので要返却だそう。


 キッチンは4つ口、食洗機も有る。

 買うべきはオーブン位。


 一通り見回り浮島へ。

 途端にエミールは眠気を催したので、ハンへと寝かせた。


 元の持ち主は子供が独立し、新築が好きなので新しい小さな戸建てに住み替えたんだそう。

 手放すか貸す為にリフォームしたんだと。


 竹垣は現在住んでいる家で採用したら、思いの外に良かったのでコチラにも採用したんだとか。

 大津垣の職人を呼び寄せ、一二三張りの縦張三枚だそう。


「ココまでやるかね」

「少し田舎なんすよね、なんで借り手も買い手も長く居なくて、最近リフォームしたらしいっすよ」


「売るの大変では」

「従者の研修所か保養地にするんで問題無いっすよ、なんせ人員が増えたんで」

「ですね」


「凄いな、先読みの精度」

「お」

「じゃあ決まりね!」




 省庁での用事を終え、迎えに来る筈のアレクか桜木さんを待っている。

 泉の移動は非常時用。


 今が1番不安かも知れない、もし浮島ごと何処かに転移してしまったら。

 誰も迎えに来ないまま、自分だけが置き去りにされたら。


「おう、どした、家が決まりましたぞ」


 桜木さんの好きそうな全盛りセットな家、エナさんが提案した家。

 本当に決まってしまった、凄い。


「決め手は?」

「竹垣、値段、川沿い、川の音がする」


「確かに、水の音が好きですもんね、候補に入れるべきでした」

「ただ、イスタンブールはこんな風には住まん予定ぞ」


「はい、了解です」


 そのまま省庁で契約書への記入を確認し、申請。


 遠野の川沿いの家、裏には緩く低い傾斜の山。

 縁側に広縁も有り、庭の有る1軒家。

 契約の名義は桜木花子、召喚者として住む家となった。


 そして省庁近くの家もそのまま決めてしまった、ワンルームマンション、僕の寮の近く。

 名義は楠花子、職業は公安の内調、紐付けを深く探ると桜木花子へ繋がるが、そこに辿り着ける者は極僅か。

 同じマンションに従者用の部屋を1つ借り上げる事で、桜木さんのプライバシーが保たれる事になった。


 そしてイスタンブールの家は鈴藤紫苑で、神々の配慮で貯金を持った移住者、現金の日雇い労働者と言う事に。


 浮島は他の浮島に接岸する事も有るので、このまま海上でと言う事になった。


 そうして一通り終え、浮島へ。




 もう、勢いで色々と決めてしまった。


「今回とイスタンブールでの家探しは、どういった扱いになるん」

「大目に見て、公務扱いにはしてませんよ」


「うい、イスタンブールで家を探すのはいつから?」

「雨宮さんからは既に家の候補地が届いてますよ、どうぞ」


「おぉ、ちゃんと順位付いてる、どれどれ」


 前に見たハンがランクイン、キラキラを目撃したハン、ハマムが近いハン。

 それと商業スペースの大きなハン、改修工事をし、移民に住まわせるか貸し出すか。


 向こうは早朝、皆で昼ご飯かな。


「デリカテッセンなら開いてますよ」

「行くか」


 チャラい紫苑の方、鈴藤紫苑へ変身し、エミールの事は賢人君に任せイスタンブールへ。


「住みたいのは良く分かった」

「美味しいものね」

「ですねー」

「だけじゃ無いもん」


 そうして家の周りを散策し、食後のハマムへ。


 満場一致で賛成を頂き、リズちゃん達を浮島に送り届け、今度は大使館へ。


「大丈夫?緊張する?」

「そこはもう大丈夫ですよぅ」


 マキさんは少し照れてる感じだが、真っ赤になる事は無し。


 そして先ずは大きな商業スペースの有るハンへ。

 モスク前の裏路地、かなりの人間が住めるので収容人数的には問題無いが、男女が同じ棟になるのは悩み所。


 次に先程行ったハマムに近いハン、改修工事が必要だが木の有る石畳のハン、近くには猫も居る。

 近隣には24時間営業の水タバコ屋が2軒も有るし、雰囲気が良い。


 最後に大きい道路を挟んだ川沿いのマンションが、マキさんが住む予定の候補地、かなり新しい5階建てのマンション。

 1階は駐車場と管理人の居るスペース、2階は昔ながらのロビーや待合スペース、3階の運河が見える位置から居住スペースになっている。


「ギャップが凄い」

「ですよねぇ」


「悩む」

「お茶にしましょ」


 マキさんの案内で、運河の見えるテラスの有るカフェへ。

 割かし静かで最高じゃんかよ。


「最高じゃんよ」

「そうなんですよ、近くの水タバコ屋は女性も入れますし。アッチは羊の頭の丸焼きが有って、向こうはお洒落なレストランも有るんですよ」


「ほうほう、最高じゃんよ」

「だけど?」


「ハンなんだよなぁ、どっちかで悩んでるんよ。一緒に住むか、バザールに近い方にするか」

「両方に住まれては?それか1室だけアレクさん達の家にしてしまうとか」


「あぁ、そうします」




 桜木さんは1度波に乗ると早い、そのまま改修工事の話しにまで至った。

 移民達と工務店の話し合い次第で部屋の構造を決める事に、大規模なハンには店舗と女性達の居住スペースに、中規模の方は男性達、以前に見た部屋には棚が設置される事に。


「じゃあ、もう行っちゃいましょうか」

「まさかココでも先読みが」


 本当に先読みされている、既に棚が設置され、修繕と清掃が済んでいた。


 そしてリビングには、桜木さんが好きそうな柄の絨毯が敷かれている。


「神様と国と私からです」

「ありがとうございます、大事にします」


 神様が絡むと遠慮はしない、雨宮さんもすっかり桜木さんを把握しているらしい。


「さ、どうぞ」

「フカフカ、もうココで寝てしまおうか」

「少しだけ待ってて下さい、直ぐに終えますから」


 各部屋の点検と寸法の計測を終え、大使館へ。

 不動産の契約書を書き、また明日お昼に会う約束をし、浮島へ。


 エミール君が起きるまでと耐えていたのだが、窓辺て眠ってしまった。




 桜木花子の件で、エミール君から早速相談を受ける事に。


 桜木花子が頑張ってギリギリまで起きててくれた事を、つい嬉しく思ってしまった、と。

 無理は良くない事なのに、自分は悪い人間になりかけているのでは、と。


 ウブと言うより、本当に可愛らしい幼い恋心。

 しかもこう、素直に相談も出来る。

 どこかの誰かさんとは違って、楽なのは良いんですが。


《ハッキリ言っても宜しいですかね》

『はい、お願いします』


 恋愛対象には暫くは成り得ない、そしてその間に他の誰かとくっついてしまう可能性を伝えた。

 落ち込まず非常に前向き、ただそれがまた桜木花子が遠ざける要因にもなる事は、伝える事はしなかった。

 そう伝えて歪まれても困りますし、良さが台無しになっては神々の怒りに触れるでしょうし。


《先ずは本来の勉学を最優先で、そうして他を見る事も充分に検討して下さい、そしてそれは桜木花子が望む可能性が有るとも》


『それは、はい、頑張ってはみます』


 難しいでしょう、良い匂いのする灯台だそうですし。

 ですがココはもう、桜木花子の理性に頼るしか無いんですよね。




 エミール君が先生への相談を終えると、リズさんや鈴木さんを各所に送り届け、本国へ帰還。

 入れ違いで桜木さんが目覚めた。


「エミール君は皆さんを送って、お帰りになりました。勉強と、桜木さんの為にと」

「疲れて寝てたんじゃ無いんだけどな、気を遣わせてしまったか」

《いえ、寧ろ良い成長の切っ掛けになったかと。コレから先、君が忙しくなる可能性に気付き、大事なおやすみなんだと理解したんですよ》


「でもなぁ、ピアスの通信機、良いかね」

「はい、どうぞ」


 魔道具の使用は自由なのだが、どうしても不安らしく、時折こうして従者や先生に聞く事が有る。

 他意は無い筈なのに、申し訳無く思ってしまう。


《大丈夫ですよ。そう気にしての行動と言うより、素、元々の性格ですから》

「全部、観たんですね」


《そう感じますが、どうなんでしょうね》

「あの、桜木さんには、どの様な伴侶が」


《性急かと、それよりご自分の事を考えるべきでは?》

「はい、ですが」


「今、良いかね、相談に行きたいんじゃが」




 エイル先生の居る泉へ、ショナとエナさんと共に向かう。


 ココにも桜、ピンク色のユグドラシル。

 ニコニコのエイル先生。


「戻しました」

『おめでとう、色々おめでとう』


「ありがとうございます」


 ハグ、目一杯のハグ。


『体はどう?』

「義手が無いのが残念です、気に入ってたのに」


『また切り落としちゃう?』

「流石にそれは、ちょっと悩む」

「ちょっと悩むんですか?」


「勿体無いじゃん、両方」

「そうですけど」

『鍛冶神達に預けちゃえば良いじゃない、将来の誰かの為に』


「あぁ、そうします」

『後で行きましょ、それより、金平糖ぅ』


「気になりますか」

『なるぅ、食べないから見せて』


「どうぞ」


『あは、面白い、お砂糖やお菓子ってお薬が起源だったものも有るのよ、チョコにマシュマロ、ソッチの“ウイロウ”』

『うん、金平糖はハッカが入ってて、喉飴として入って来た。も』

「スクナさん、そって何」


『知らないか、コレ』

「ケーキかクッキーか、美味い」

『うん、芳ばしくて良いわね』

「美味しいですね」

『サルミアッキもおくすり』


「アレはガッツリお薬だろうよ。あ、惚れられない薬って無いのかね」

『何よ、その夢の無いお薬は』


「灯台抑えたいんだもん」

『あぁ、紛らわすのに香水とかどうかしら』

『良いかも知れない』

『魔法以外なら大丈夫らしい』


『それか、魔道具か。ちょっとベリサマ呼んで来てよフギン、ムニン』



 何処に居たのかフギンとムニンが飛び去ると、暫くしてベリサマがやって来た。

 またしてもハグ、ハグまみれ。


『おめでとう』

「ありがとうございます」

『ねぇねぇ、魔道具で灯台パワー紛らわせられないかって話しなんだけど』


『ソッチは香水って案なのよね、上手く組み合わせないと逆に相乗効果出そう』

《ミーミルがその通りだと言ってますぞ》

《失敗すると流石にヤバいと言ってますぞ》

『あー、あ、貞操帯を改造して、それに合わせるのはどう?』


《良さげだそうですぞー》

《香水はもう少し考えろ、だそうですぞー》

「あぁ、消臭剤か」


《正解》

《だそうですぞー》

『成程ね、なら消臭剤入れでも良いわよね』

『アンクレットに……』


 ベリサマが地面から白い石を取り出すと、エイル先生が近くの棚でエキスの選抜を始めた。


 ココでやんのかい。


「何か手伝」

『あ、大丈夫よ。寧ろ、私達が向こうに行くべきかしら』

『そうね、行きましょ』




 桜木さんの案が発展し、今度は鍛冶神の郷、ニーダベリルへ。


 既に製造していたらしく、到着早々に大会の準備が始まっていた。


 桜木さんは女神達から熱烈な歓迎を受け、再び髪の毛を弄られている。

 男神達は小さなロケットペンダントや、透かし模様のペンダントトップ、髪留め、ベルトのバックル等を目の前に並べ出した。


 そしてアタッチメント部門、ピアスの部品やシンプルなアンクレット、そして貞操帯の機能が有るベルトが改良されて並んでいった。


 良く見ると空になった極小の魔石が埋め込まれている、桜木さんが好きそうなデザインばかり、透明な石と僅かに透過する黒い魔石がキラキラしている。


「悩むわぁ」

《ふふふ、タップリ悩んで頂戴ね》

《そうそう、その分》

《髪が弄れるものね、ふふふ》


 桜木さんはもうすっかり気にしていない様子、真剣に悩んでいる。

 賞品はイスタンブールのお酒。

 結局は皆さんで分けるのだが、選ばれる方は真剣そのもの。


 3位はケルト模様のバックル、2位は雫型の薔薇と蔦模様の小さなトップ、1位に選ばれたのはアラベスク模様の指輪。


 そして宴会へ。


『じゃ、全部どうぞ』

「全部?」

『アンクレットには2、3個付けるだろ』

『多く付けていた方が中の交換をマメにせんで済むぞ』

『折角セットにもして有るんだ、付けろ』


『中のが満タンになったら魔石が色付く』

『ほれ、保存容器と交換用だ』

『例の結界石の上に放置すれば拡散する』


「ありがとうございます」


 桜木さんがアンクレットに集中していると、イルマリネン神とロウヒ神が現れた。

 そしてロウヒ神とハグし、イルマリネン神は挨拶もそこそこにコチラに向かって来た。


『ガムランボール、猫には鈴を付けた方が安心だろうからね』


 小さな魔石の付いた丸い鈴を幾つか渡され、そのまま帰ってしまった。


「あの、桜木さん」

「なんそれ」


『あははははは!追跡用の鈴じゃねぇか!』

『だから逃げ帰ったんだな、面白い』

『面白い、アイツにも話しておいて正解だな』


「ショナ」

「僕は何も」

『まぁまぁ付けてみろ』

『お前は同じ色を持て』

『ほれ、糸が見えるだろう』


「鈴どころか縄じゃんか」


 鈴に触れると魔石に対応した色の糸が見える様になる、青い糸が僕の手から桜木さんの足に、緩やかに繋がっている。


『触れるぞ』

『手繰り寄せられる』

『引っ張ってみろ』

「おんん!マジ手綱」

「そうですね、有り難い限りです」


「おま」

「日頃の行いですよ」


「ですよね」

「乱用はしませんし、出来ませんから安心して下さい」

『だな、外せば終わりだしな』

『色が合わんと反応しないしな』

『何か遊びに使えんだろうか』


「悪ノリが始まったぞ」

「ですね、帰りましょう」




 ニーダベリルから逃げ出し、浮島へ。

 髪が弄られまくった後、消臭剤付きバレッタが付けられたのだが。


 こう、効果がパッと確認出来無いと実感が湧かないもので、かと言ってなぁ。


「先生、ベガスで確認したいんじゃが」

《良い時間帯ですし、懸命かと》


 ショナと大人エナさんと、先ずは虚栄心のお店へ。


「あら、何か違うわね」

「灯台を紛らわす魔道具なんだけど、試しに来た」


「あら、面白そうね」


 服は前に貰ったワンピース、軽くお化粧して貰い、一緒にお店へ。


 道すがら、もう1つの魔道具の説明をすると、大爆笑し始めた。

 店に到着するまで笑い続け、色欲に半笑いで説明。


《あら、エッチね》


 とうとうショナが顔を押さえた、この前の奥で見た事でも思い出したのか、耳まで真っ赤。

 ウブめ。


「ウブめ」

「ふふ、さ、行ってらっしゃい」

《前と同じメンツは居ないから、大丈夫よ》


 ココも先読みされていたのか。

 今回はジュースを受け取り、先ずは一服。


 下に降り1周し、椅子へ。




 ハナがフロアを1周し、席へ。

 確かに魔道具の効果は有るけれど、巨大な誘蛾灯に変化しただけなのよねぇ。


「不安そうねぇ、神々の魔道具なんでしょう?」

「まぁ、そうなんですが」

《私達には分かるのだけれど、そう人間には感知出来ないものね》


「その、どんな感じなんでしょうか」

《普通位の匂いね》

「ご馳走から、常備食位には落ち着いたんじゃないかしら」


《そうね、その位ね》

「まぁ、前と違って1人だし、優しい子も興味本位も容易く声を掛ける程度かしら」

「じゃあ、アレで外したら」


「意外と来ないかも知れないわね、ビビって」

《高嶺の花に気軽には行かないでしょう?》

「え?なら効果は」

『どうしたって誘蛾灯か灯台にしかならない。コレはもう0のハナの再現。良い意味でも悪い意味でも、気安く話し掛けられるだけ』


《ふふ、上手く行かないものね》

「そんな場合じゃ」

「楽しそうなんだからほっときなさいよ、過干渉は嫌われるわよ」

『そうだよ。プラセボ、本人は効いてると思ってるんだし』


「それも酷では」

『認めないのが悪い』

《あらあら》

「大丈夫よ、今日中には気付く筈だから」




 普通に何人かに声を掛けられ、桜木さんは何も疑問に思わず、早めの夕飯にとホテルのバイキングへ。


 桜木さんの灯台効果は、どうしたって変わらないらしい。

 バイキングの会場ではお年寄りに普通に話し掛けられるし、ロビーで少し待たせただけで子供は近寄って来るし、喫煙所では絡まれ。

 流石に異変を感じたのか、エナさんに詰め寄り、説明を聞いて落胆していた。


「マジか」

『顔を変えても下がる事は無いって』

「あら、じゃあ上がる可能性は有るのね」


『うん』

「せめて横ばいで頼む」


『頑張って、シュガーちゃん』

「あら、責任重大ね、じっくり時間を掛けないと」

「お願いします」


「すまん」

「良いのよ。先ずはそうね、少し向こうでも普通に過ごしてみましょうか」


 ホテルから出て日本へ、普通の服を買いに行く事に。


 楠さん用の普通のスーツ、普通の服、店員さんのオススメとマネキン買いをし、エナさんの服をじっくり選んだ。


 そのままクリーニング屋へスーツを預け、コインランドリーには買った服や洗濯物を突っ込んでから、喫茶店に休憩へ。


「意外と何も無いもんやな」

「そうね」


 だが、喫茶店から出て直ぐ、桜木さんが僕らと少し離れただけで、寸借詐欺に遭いかけ通報案件へと発展した。

 こんなにも最速で、楠花子の身分証を使う事になるとは。


 聴取等を一通り終えた後、コインランドリーへ。


 桜木さんが完全に黙ってしまった。


「桜木さん」

「こう、同じ様な灯台は居らんのか」

『居るけど、相性が悪いから会わせられない』


「そう」

「ふふふ、もう体質よ体質」


「だけどもよ」

反骨子はんこつこ、ココは抗ってもアンタが傷付くだけじゃないかしらね」

『うん、慣れて対処して欲しい』

「もう、外しません?」


「おう」


 意気消沈のまま、先ずは浮島へ。


 そして虚栄心さんは先生とお話しへ、桜木さんはエナさんとお話しへ。




 マジか、マジでか。


『慣れて』

「美醜の感覚を越えるかね」


『ハナには無いけど、ココは違う』

「にしても、灯台に慣れたりとかは」


『灯台って明滅してるでしょ、存在を示す為に』

「あぁ」


『フェロモンとか匂いも、強弱が有るから感じられる。だから逆に、ずっと同じ1人だけは難しい』

「だとしてもだ、受け入れきれん」


『何で』

「1人だけで良いと思ってて、コレなんだもの」


『逆なら、ショナがそうなら嫌だから?』


「まぁ」

『生まれも育ちも何もかも違う、立場も思いも』


「受け入れられたら、それはそれでちょっと、どうなのよと」

『思い方をハナが決めるのは横柄過ぎる』


「あぁ、はい、すいません」

『もう寝た方が良い、ゆっくり考えよう』


 言われた通りにはするが、でも。


『ダメですよ、助言を受け入れないなら一切協力しませんよ?』

「ソロモンさん、コレを見越して?」


『そう思って安心が出来るなら、そう思うべき、心を保つのもお仕事ですよ』

「ありがとう、温泉行ってくる」




 桜木さんはそのまま温泉へ、そしてそのまま寝室へ。

 マーリン導師に寝かし付けられ、眠った。

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