第9話 警官VS三人

 数十名の武装した警察官が建物内に入ってきた。会場の雰囲気が一気に緊迫していく。


「ここに無許可で出版物の即売会をしているという通報があった! 出版法違反の容疑でここにいる人間を全員拘束する!」

「キャプテン!」

『参加者は全員逃がせ。誰一人として拘束させるな』


 私がキャプテンに指示を仰ぐと、キャプテンから出された指示は言うなれば、徹底的に抵抗しろ、という事だった。


「結構人数いますしい、あの人たち武装してますよお? 抵抗したら間違いなく撃ってきますけどお、こっちはどうしますう?」

『相手が武装しているなら容赦はするな。サーリャとアイシャで牽制。リリナは後方で援護しつつ参加者を誘導しろ』

「また私が一番前じゃん!」

「私も行くから安心しろ」


 私とアイシャ会長はそう言いながら二人で警官の群れに突っ込んだ。


「動くな! 動いたら撃つぞ!」

「〈想像イメージ 狩猟豹チーター〉!」

「なっ⁉」


 私は一気に警官の前に肉薄すると、すぐさま能力を発動させるべく腰だめに掌を構えた。警官は突然目の前に現れた私に驚いて仰け反っている。


「〈想像イメージ 大熊ベア〉!」


 私の手から上腕部にかけて一気に力が漲っていく。そして警官の持っている銃を掌で思いっきり叩き落とした。


「ぎゃああああ!」

「ご、ごめんなさーい」


 警官の腕が曲がってはいけない方向に曲がっているが、そこはご容赦願いたい。いかんせん熊さんの力なので加減が効かないのだ。


 アイシャ会長は一瞬で姿を消し、背後に回り込んで手刀を延髄に叩き込んだ。次々と警官が意識を失くして倒れていく。そう、映画とかドラマで出てくる、首をトンと叩いて気絶させるあれだ。あれが意外と難しいのだ。ちゃんとピンポイントで当てないと効果が全くない。


「撃て! 発砲を許可する!」


 突然の私たちの行動に驚いた警官は部下たちに発砲の指示をだした。全員安全装置を解除してトリガーに指を掛ける。


「させませんよお」


 しかし、瞬く間に警官の手から銃が弾き飛ばされていく。リリナちゃんが両手に持った拳銃で彼等の持っている銃のみを当てているのだ。これもまた神業である。


「さあさあ、参加者の皆さんはこっちに逃げてくださいねえ」


 リリナちゃんが銃を撃ちながら参加者を誘導していく。他のレジスタンスメンバーも声を張り上げて出口に参加者を導いていく。私たちを無視して参加者に向かおうとしている警官にも私は飛びかかって熊さんパワーで頭を叩いて気絶させる。


 というか、ここで正直思った事がある。


「これだけの人数、三人で相手にしろっての難しいよお‼」

『それだからこそのお前たちだろう。多少怪我人は出てもいいから任務を遂行しろ』

「この鬼!」


 私は飛び交う銃弾の中を潜り抜けながら、必死に警官たちを無力化させていく。


 そして、


「撤退! 撤退しろ!」


 警官の一人が笛を吹きながら全員に撤退を指示した。彼等は踵を返して入り口の方に逃げていく。


「終わったか」

「はあああああ!」


 アイシャ会長の声を聞いた私は、そのまま盛大にため息をついてその場にへたり込んだ。

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