第7話 ブリーフィング2

 パパの死が報道されてから、さらに当局からの締め付けは強くなった気がする。


元々この国には「国家反逆者通報制度」というものがあり、少しでも不審だと思った人間はその対象を当局に通報できる。そして、白であれば疑われないように厳重注意処分が下され、黒の場合は逮捕、国家転覆を図ろうなどとすれば即死刑になる。


 最近は、通報の頻度が増し、よもや魔女狩りのような様相を呈していた。そのせいで、普段一般人として生活している私たちレジスタンスはさらに動きにくくなってしまった。


 しかし、バネが分かりやすい例だが、押さえつければするほどその反力は大きくなるものだ。その証拠に、


「ど、同人誌即売会やるんですかあ⁉」


 小さなビルの一室、そこにリリナちゃんの甲高い声が響き渡った。


「リリナちゃん、耳元で叫ばないで……」


 私は耳を手で塞ぎながら力なくリリナちゃんに抗議したが、彼女は興奮して鼻息をフスーッっと荒くしている。


「だってだってえ! 同人誌即売会ですよ⁉ 大っぴらにやったら即逮捕の重大事件ですよお⁉」

「落ち着けリリナ」


 ホワイトボードの横に立っているキャプテンがため息をつきながら言った。


「今回は某場所の地下で極秘裏に行われる。当局から作家を守るのが今回の仕事だ」

「ですがキャプテン、最近は政府当局の締め付けがひどくなっています。そんな中でやるのはあまりにもリスクがあるのでは?」


 アイシャ会長が当然の質問をキャプテンに投げた。


「もちろんその通りだ。だが、そんな圧制に屈してはならないという意思表示をすべきだというのが反体制派幹部の言い分だ」

「そのための私たちって訳ですか……」


 私の呟きに、キャプテンは「そうだ」と短く答えた。


「万が一に備えて作家たちの身柄を当局に奪わせないようにする。当然向こうは嗅ぎ付ければ実力行使に出るだろうから、こちらも実力を行使して彼等を守ることになる」

「殺しちゃだめなんですかあ?」

「できればな。相手に明確な殺意があれば相応の対処はするが、殺してしまえば後々面倒になる。気絶くらいで済ませてやれ」

「そうなるとライフルは使えませんねえ」


 リリナちゃんは少し不満なご様子。あまり人殺しには慣れてほしくないんだけどな。


「今回は私とサーリャと一緒に直接警護することになりそうだな」

「私白兵戦は苦手ですから、援護してくださいねえ、会長」


 白兵戦は苦手というほどではないが、得意というほどでもない。私たちの中で近接戦闘に長けているのは間違いなくアイシャ会長だ。私たちは敵との戦い方をアイシャ会長からたくさん教わった。


「それでは、詳細を詰めていく、しっかり話を聞いてくれ」

『了解』


 こうして、私たちの新たな任務が始まった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る