惑星間をつなぐもの②
『ワレワレハ、ネガイノチカラデ、イキテイル』
カケラたちはかわるがわる僕だけに
「それって、どういう意味?」
『ネガウチカラヲ、ワレワレガトリコム。ソノカワリニ、エネルギーヲ、アタエル。ソウヤッテ、イママデ、タアスセイジントトモニ、イキテキタ』
「僕たちの、願う力?」
『デモ……。タアスセイジンハ、ワスレテシマッタ。エネルギーダラケノセイカツニ、ナレキッテ、イツシカ、ネガウコトヲヤメテシマッタ』
「おい、カケラのやつはなんて言ってるんだ?」
僕は今しがた聞いたことをそっくりそのままソラに伝えてみる。僕が話せば話すほどソラの顔はうつむいていき、それとは反対に目のかがやきはどんどんと増していった。
「なるほど! 無限のエネルギーのカラクリが見えてきたな」
「ソラ、一人で
そう言うと、ソラは一つせきばらいをしてカケラの言葉を
「つまり、カケラはタアス星人の
「そっか……たしかに僕たちには
また、カケラが口々に「ソウダ、ソウダ」と
「ってことは……僕が今もってるカケラは? 消えたりしない?」
「たぶんね。その願う力ってやつが地球人のものでもいいならだけど」
『ネガイ、オイシカッタ』
「いいって」
これで僕の不安は一つなくなった。でも、
「なあ」
「何?」
「前に話してた
ソラはそう言って、ポケットから何かを取り出した。ちょっとシワはよっているが、小さくて四角い紙のようなものだ。
「小さいものなら、たぶん
「いや、それでじゅうぶんだよ」
その小さな紙を、ソラは僕にそっと手わたす。よく見ると、地球の文字が書かれているみたいだった。
『ソノカミ、ネガイノチカラ、カンジル! オクッタラ、ナカマ、ヨロコブ!』
「え! この紙から力が? 本当に!?」
「やっぱり! 今日が七夕でよかった……」
ソラはポツリとそうつぶやいて、
「俺はこの小さな紙をとりあえず
聞きたいことはいろいろとあるが、今はやるべきことをやるほうが先だ。僕は力強くうなずいてみせた。
「よし……。あ、あと
「何? どうしたの?」
「コンパス……
ソラはもうしわけなさそうに右手を出した。
「いいよ。僕は、ソラをしんじてる」
コンパスを受け取ったソラはたしかめるようにそっとにぎって「ありがとう」とほほえんだ。
外はすっかり夜、僕はソラが立ち去った後、母星に通信をとりすべてを話した。母さんはおどろきっぱなしだった。星のカケラが願いの力で生きていること。僕に地球人の友だちができたこと。その友だちがくれた
「それで、今送ったのがその、願いの力がこもった短冊なんだけど……。どう?」
『……きた。ちょっと待って、さっそく
後ろが何やらさわがしい。母さん以外の研究者もこの
『すごい、消えかけていたカケラが色を取りもどしていくぞ! なんだこれは』
『ということはまさか……。さっきの話がすべて本当だというのか?』
どうやら、うまくいったみたいだ。とりあえず話がしんじてもらえたことに僕はホッとした。
『ねえ、たしか地球のお友だちがこれと同じものをあつめて持ってきてくれるのよね?』
「うん。ソラはそう言ってた」
『……すごい。本当にすごいわ、ユウ。ありがとね』
『よし、船だ! すぐに
母さんの後ろで、
『あとは父さんと母さんにまかせて! だいじょうぶ、なにも心配はいらないから』
「……うん。たのんだよ、母さん。父さんにも、そう伝えて」
『ちゃんと聞こえているぞ、ユウ。お前の情報はムダにしない。かならず、星もお前も
「父さん! ……わかった。頑張ってね!」
ひさしぶりに聞いた両親の声は、とても安心した。僕は一気に
そういえば……父さんが最後に言っていた「星もお前も」ってどういう意味だったんだろう? なぜかその言葉が僕のあたまに引っかかったけれど、つかれて眠るうちに、そのささいな疑問はどこかへと
「おーい……」
遠くから、だれかが呼んでいる。
「おーい!」
夕日に照らされうかび上がるシルエット。かけより手をふるその姿は、まぎれもなく僕の友だちのものだった。ソラだ! ソラが、帰ってきてくれた!
「ごめん! あつめるのに時間かかっちゃって……。でもクラスのやつらも協力してくれてさ、ほら、これ」
そうつきだした両手には、はちきれんばかりに中身のつまった大きな
「あ……ありがとう……。本当に、ありがとう! でも、こんなにたくさん、一体どうやって?」
「それは、また後で話すよ。それよりも!」
ソラは袋をドサッと地面に置いて大きく息をすった。
「……実はさ、カケラのほうも俺、見つけちゃったんだ」
受け取った袋を大切に抱える僕のむねをめがけて、ソラは人さし指をトンとつく。
「お前だ。お前の心の中に、最後のカケラはある」
「……え?」
「俺がコンパスをいくら持ちあるいても、こいつは光りもしなかったんだ。逆に、お前が持っている時はいつも
そういわれてみれば、そうかもしれない。いわれるまでまったく気がつかなかったが、
「なあ、これは言うべきか迷ったんだけど、お前の願いって……」
「そうだ、どうしよう……」
あの日、地球に不時着したあの瞬間、僕は「帰りたい」と願った。でも、帰るには星のカケラが必要で……。その最後のカケラを手に入れるには僕が願いを叶えるかあきらめる必要があって……。
僕は、もしかしたら、どうあがいても母星には帰れないんじゃないだろうか?
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