第四話
もう一度だけあの星空を①
「おかあさん、今日の空はどんな空?」
「ん? 今日はねー、夜空の星がよく見えるよ。月も満月」
少女は
「それにね、今日は何年かに一度の
「それくらい私にもわかるよ! 流れ星のことでしょ?」
少女はそう言って
「えらいね、知ってたんだ」
「あたりまえでしょ」
その時、空をひとすじの光がよぎる。それを合図にするかのように、つぎつぎと流れ星が夜空をうめつくすほどのかがやきを
きれいだ、と思うと同時に、この景色を見ることすらゆるされない少女のことを思うと、また
「ねえ、おかあさん……。流れ星って、きれい?」
少女は、その星に照らされた顔をさらにかがやかせてそう母にたずねた。
「……うん。とっても、ね」
少女の母は心の中で
そう星に
雨上がりの朝、さわやかな風が
「ひ、ひったくり!」
とつぜん、人ごみの
僕は目をまわすヒマもなく立ち上がり、あわてて空に
人があつまって身動きがとれなくなる前に、ここからはなれたほうがいい。そう思った僕は、しのび足でゆっくりと男に
足もと、いや、むねでキラリキラリと
タッタッタッタッ……という
「ハアッ……ハッ……わ、私の、バッグ……」
そっとふりかえると、
まさか、こんな
僕は
「ああ、よかった。中身は
バッグをなんとか
「最近いろいろ
「本当にね。この間なんかさ、おとなりのおばあちゃんがオレオレ
「まあ、こわい!」
まわりにいるだれかのウワサ話がふと耳にはいる。しかし残念ながら、バッグの
歩くたびにつたわる
そのしなやかな手にみちびかれて、真っ白な部屋のすみにある花びんに僕は
「アイちゃんのおかあさん、来ていらしたんですか」
「あら、先生。どうも」
女性は、先生と呼ばれた白ずくめの男となにやら話しこんでいるみたいだ。僕はすみっこの花びんから、そっと聞き耳をたてた。
「どうですか、先日のお話、
「ええ、もちろん。できるなら今すぐにでも
「……
「本当にもうしわけありません。もう少し、もう少しだけ、待っていただけないでしょうか?」
「しかし、
「ありがとう、ございます。
「……わかりました。話は通しておきます」
白い男が立ち去った後も、彼女はだれもいない空間に向かってあたまを下げたままで、なんども
「寝てるし、果物はまた明日かな」
女性はよろけながらもなんとかバッグをかつぎなおして、少女のあたまをそっとなでた。
「また来るね、アイちゃん」
少女は心なしか、やすらいだ顔をしている。それを見て
さらりと彼女を
——結果的に言ってしまえば、その考えはあまかった。僕が走り出そうとした
「……だれか、いるの?」
ここから早く逃げるべきだと、すぐにカケラの持ち主を追いかけるべきだとわかっているのに、その一言で僕の足は完全に床から
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