きらきら星になりたい④
「ウソ……だよね? なんで、なんで!?」
わからない。ミイがなぜ一人でここまできたのか、何を思っていたのか、そもそも何を願っていたのか、全部、全部僕には理解できない。このつらい現実を、あたまが受け入れようとしない。
どこか遠くに行こうとしているのは、あの
『地球にはね、死んだら星になるっていう言い伝えがあるのよ』
ミイの言葉があたまの中をかきみだす。わかりたくもなかった
雨は、いまだに生きとし生けるものの体温をうばって、いつまでも
見えない星をあおいで、僕は涙にぬれながらも
「……おやすみ」
まぶたを下ろしたミイは、本当に、しあわせそうに眠っているようにも見えた。
通り雨が過ぎ去った
結局、チエには何も言わずに出てきてしまった。何を、言えばいいのだろうか。僕が本当は宇宙人で、いつまでもいっしょにはいられないことか。それとも、ミイはもう、二度と帰ってこられないということか。どちらにしろ、彼女が一人になってしまうのは変わらない。
ふと、あいつが
コンパスのボタンを、くるりくるりと慎重にまわす。今度は
その枕元に、そっと、静かによりそう。
「ミ……イ……?」
うっすらと目を開けて、彼女は
「チエ、聞いて。一回しか言わないから、ちゃんと聞いてね」
彼女の目がだんだんと大きく開かれる。その表情が、僕の正体を知った時のミイの
「あのね、ありがとう……。いっしょにいて、わたし、楽しかった」
チエは何も言おうとしない。まだここが夢の中だと思っているのか、しきりにまばたきをくり返すばかりだ。
「ごめんね、最後まで、いっしょじゃなくてごめん」
これは、ミイだけじゃなく僕からの言葉だ。ひとりぼっちになってしまう彼女への、せめてものおわびの気持ちだ。
「——さようなら、チエ」
「ミイッ……!」
彼女が飛び起きてしまう前に、僕は
「そっか……。ネコは、寿命がきたらひっそりといなくなるっていうウワサは、本当だったんだねえ……」
チエのほほを、
「ごめんね、一人でいかせて……。わたしも、いつかはそっちにいくから、だから」
あふれる涙は、とどまることを知らない。その悲しみが、彼女の布団にいくつものシミをつけていく。
「もし、私も星になれたなら……その時は、となりでいっしょにかがやこうね。ミイ」
昨日、たしかに
それでも僕には、まだやるべきことがある。星のカケラを集めるためにも、こんなところで立ち止まっているわけにはいかないのだ。
僕は息をころして、ゆっくりと庭の草をふんだ。
「……ありがとうね、ブチ」
なんで、どうしてわかったのか、おどろきのあまり思わずふりかえってしまう。チエは自分の首を指さして、さっきまで僕がいた枕元にやさしく笑いかけていた。
そうか、首輪……いや、コンパス、か。どうやら、僕のツメがあまかったらしい。
僕はもうふりかえらずに、心の中でもう一度「さようなら」とだけつぶやいた。縁側には、いつもと変わらぬやさしい光がスポットライトのようにさしこんで、僕らの
そのころ、宇宙船ではとある通信が、ノイズまじりに届いていた。だが、それを聞いていたものはだれもいない。
『アツメロ……タリナイ、ネガウチカラ、モットアツメロ……』
その星の呼び声はしだいにとぎれ、やがて完全にかき消された。
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