明星をその手に④
「……は? ちょっと、今の、何?」
ソラによってたかって冷たい言葉を
「いつも
「まさか、みんなうんざりしてることに気がついてないの?」
こんどはこっそり
「あの、さ……もう、やめない? こういうの」
さあ、次はどこから攻めいってやろうと息まいていたちょうどその時だった。ふいに
そのツルの一声に、まるで
本当に、ちょっとしたきっかけ。しかしその波はもはや教室全体をおおいつくし、さすがのいじめっ子たちも、これにはなすすべがないようだった。
「チッ、なんだよどいつもこいつも……。なんか気分わるいわ」
「本当、マジでない。冷めた。もういいや、帰ろ帰ろ」
ソラをかこんでいたやつらが、
うかれた僕は、持ってきた忘れ物をそっとソラの足元に
「あれ、これ……。今日が
「え、あ、ああ、まあ……」
ソラはかなり
「……まあいいや。ちょっとそれ、かして」
そう言って、そのしわくちゃの紙をひったくり、ソラは何かを書き始める。
「ねえ、いつもその宇宙の本読んでるけど、面白い?」
「あ、うん」
「好きなんだ、そういうの」
「……まあ、うん。宇宙飛行士になるのが、夢だったから」
「ふーん。でも、今書いてるその進路、どちらかというと開発するがわじゃない?」
「いいんだ。宇宙飛行士はあきらめたけど、べつに宇宙自体をあきらめたわけじゃない。はるか遠くの宇宙人と、それこそ電話するみたいにいつでもどこでも
たぶん、これは僕へのメッセージだ。ソラなりにみちびき出した、みんなを幸せにする夢のかたち。その道のりはけわしく、果てしないものになるかもしれないけれど、ソラならきっといつか叶えられる。その
「宇宙人、か……。本当にいるのかな?」
ソラは今までにない、とびきりの笑顔を見せた。
「
「ありがとう」と、そう彼の口がわずかに動いたような気がした。
心がなんだかポカポカして、幸せで、これが人をたすけるってことなんだなと、しみじみとそう思った。
宇宙船に帰った僕は、まず今の
まず透明化、よし。転送装置は——ダメだ。ピクリとも動かない。明かりはなんとか大丈夫そうだ。操縦席のほうは——動くのはせいぜいカメラくらいだろうか。宇宙上ではなくてはならないものだが、ここ、地上ではなんの役にも立ちそうにない。通信なんかも試してはいるが、やっぱり半分以下の動力じゃ何もできそうにない。ガラクタからただ見えないガラクタに
「はあーあ」
走りつかれたこともあって、大きなため息がついもれる。山の中はおどろくほど静かで、草木がゆれる音と自分の息が合わさり、まるで一つの曲をかなでているようだった。
そこに、ジッ……ジジッという新たなビートがきざまれる。
その出どころを耳をすませて探ると、どうやら通信をためす時に
ツマミを再度こまかくいじり、
『ア……ロ! ネ……ガ……ア……』
しかしやはりエネルギーが足りないのか、どうがんばってもその音声を聞き取ることは
手がかりを見つけたと
「今度のカケラはどこかな……ここから遠くないといいけど」
こくりこくりと夢を見ながら、僕は夜がふけるのを待った。そして来たる朝、日の出とともに、僕は再び、星のカケラを探しまわることになるのだった。
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