Day.8 さらさら
クラスで一番の美人といわれるヒトミさんの髪が開け放った窓から入ってきた風に揺れる。さらさら、つやつや。羨ましい。
風に髪を遊ばせていたヒトミさんの横顔を眺めていると、ヒトミさんの綺麗な顔が僕を見た。美しい髪をもつヒトミさんのかんばせは髪に負けず美しい。
「ねぇ、サトウ君。知ってる?」
「何を?」
ヒトミさんが自分の髪を一房摘んで見せる。艶やかな黒髪。とにかく黒髪に対する「綺麗」な喩えが全部言えそうな髪。
「髪はね、魔除けの効果があるんだ」
「えっ、髪って大体ホラー映画では恐怖のアイテムっぽいのに」
黒く長い髪の女というのが日本における幽霊の基本だ。おかっぱ頭の市松人形もいるけど、大抵は長いのがお約束な気がする。
「特に艶があれば艶がある方が良いらしいよ」
ヒトミさんの目は僕の目よりも上、僕の残念な髪を見ていた。
キューティクルが死んでいるのは僕の髪なんだから僕が一番知っている。
「ぜ、善処シマス」
「うん。そうした方が良いよ」
そう言ってヒトミさんは僕の髪を撫でた。
撫でられたところだけキューティクルが復活してさらさらになった。そんな気がした。
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