Day.5 線香花火
蕾、牡丹、松葉、柳、散菊。
線香花火の移ろい行く火玉の様子は名付けられていて、また人生にも例えられるという。
「それじゃあ、線香花火の火を落ちないでーと願うのは長寿を願う気持ちと同じなんだね」
「そうかもしれないね」
牡丹の頃の僕らは、同じように牡丹の少しずつ咲いていく火花を見つめる。
「ねぇ、サトウ君」
松葉の激しくなった火花に照らされるヒトミさんは、どこか不思議な雰囲気を纏っていた。そこにいるのに僕との間に透明な膜があるかのような、ここに居るのにいないような雰囲気を。
「線香花火はね、迎え火でもあるんだ」
「迎え火? お盆の?」
ヒトミさんは頷く。お墓に提灯を持っていく以外にも迎え火ってあったのか。
垂れ下がる柳のようになった線香花火は、そろそろ終わりを告げようとしていた。
「だから呼んでいないつもりでも、呼んでしまったかもしれないね」
ポトリ。
散菊。
残るのは闇と、沢山の人の気配。
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