第22話《隠された真実》

回想シーン


数十年前の日のこと…


アンディは、邸の裏にある山で狩りをしていた。


山には、アンディとメイソンとサミュエルの姿があった。

そして、少し離れた所にジェイコブとウィリアムと

メイソンの息子、ケニーの姿があった。


アンディの銃の腕前はかなりのモノで

狙った獲物は逃さない、といったところだ。


一族は、狩りを楽しんでいた。


アンディとメイソンとサミュエル

3人が同時に一匹の獲物を仕留める。

大きな鹿が、その場に倒れ込む。


そしてすぐ近くで

小さく草が揺れているのをアンディが発見し、銃で獲物を定める。


メイソンとサミュエルが

アンディの狙っている矛先へと、視線を向ける。


アンディは狙いを定め、引き金を引く。


バーン!


一発の銃声が山中に鳴り響く。


銃声によって

木々に止まっていた鳥達が、一斉に空高く羽ばたいて行く。


そして草から倒れ込んだのは…動物ではなく、幼い子供であった。


アンディ・メイソン・サミュエル達は、自分の目を疑った。


そこに倒れ込んでいたのは…メイソンの息子ケニーだった。


アンディは、銃を地面に落した。



メイソンは、一目散に息子のケニーの所へ走って行く。

サミュエルは、ショックのあまりその場に座り込む。

やがてメイソンはケニーの所へ辿り着き、息子を抱き抱える。


ケニーは、ぐったりした様子で

父親であるメイソンの頬に触れようと手を伸ばすが…

あと僅かという所で手が届かず。


ケニーの小さな手が、地面に落ちる。


メイソンは、泣き叫びながらも何度も何度も

息子のケニーの名前を叫び続け、ケニーを強く抱き締めている。



サミュエルは、あの日突如起こった悲劇的な

ケニーの死について、シルエットに説明をしようとしている。



メイソンは、最愛の息子ケニーの死についてリックに語り始めた。



サミュエルがリックと向き合い、事の発端を説明している。


「あれは…事故だったのです」


シルエットは、とても残念そうな表情で答えた。


「…そうでしょうね。

        アンディさんが、お孫さんを殺す必要性が無い」


そして、沈黙が流れる。


そんな沈黙の中で、シルエットは考えていた。


「もしも、仮にメイソンが犯人だったとしよう。

 我が子を事故で亡くした事が動機だとしても…

 メイソンが犯人だという、決定的な証拠が無い。

 それにメイソンは足が不自由で、自由に行動する事は不可能だ」


シルエットは、瞳を強く閉じながら

出口の無い迷路から抜け出す術を考えている。


その時、シルエットはふと思った。


「メイソンさんは…彼は今、何処に?」

そう、シルエットが言うとルークが答えた。


「実は…今朝から、お姿がお見えになっておりません」


「そうですか。ん?リック…リックを、見ませんでしたか?」


シルエットはリックの姿が見えない事に気付き

サミュエルとルークに聞いた。


「いえ…リック様のお姿も、お見えになっておりません」


サミュエルは、顔を横に振る。


「リック…」

シルエットはリックを探しに、その場から飛び出す。



一方、リックとメイソンは…


「父は、ケニーを殺した」

メイソンは強い口調で、自分の父親であるアンディーを非難した。


「でも、それは事故だったんだろう?

          孫を殺したいと思う祖父なんて居る訳ない」


リックがそう言うと、メイソンは大きな声で笑った。


「わっははは。リック君。君は分かっていないな?

              本当の理由は、そんな事じゃない」


「何?」


メイソンは、リックに質問をした。


「3つの悪魔って、知っているか?」


「あぁ。この邸の庭にある石造だろ?それが、どうした?」


「アレを見て…君は、何か感じたか?」


リックは、邸にある3つの石造を想像した。


「う~ん…気味が悪い。っと、いうよりも趣味が悪いな」


リックは冗談を交えながら、メイソンに話した。


「ふぅ~。とても人間らしいと思わないか?

 この不条理な世界、都合の悪い物事に対し、

 見向きもしない・言う事もしない・聞く事すらしない

 人間の理不尽な要素を、表しているではないか?」


「…」


「だから私が正す。

      都合の悪い事に無関心な一族の者達を

                     私の、この手で…」


リックは、呆れた様子で答えた。


「歪んでるな…アンタ」


「残念だよ…リック君」


メイソンは、リックにナイフを三度投げつけるが

リックはナイフを避け、メイソンに立ち向かう。


殺人鬼となった、メイソンとリックの戦いが始まった。



その頃シルエットは、

邸内を駆け回り、リックを探している。

シルエットは、リックの言葉を思い返していた。



回想シーン


リックがポケットから小さな袋を取り出す。


「これはジェイコブの遺体の右手の薬指から採取したモノだ」

リックはシルエットに小さな袋を見せる。

「何だ?」っといった様子のシルエットに対し、

リックは説明をする。


「見た感じ…糸クズだと思う」

シルエットは小さな袋の中身を見ながら

「糸クズ?ただのゴミじゃないのか?」そう言うと、

リックが続けて答える。


「そうかもしれない。でも何か引っかかるんだよなぁ」

リックがシルエットに言うと

「そうか。それじゃ調べさせよう」

シルエットはリックから小さな袋を受け取る。

「あっ、そうだ!」

するとリックが、もう一つ小さな袋を取り出しシルエットに渡す。


「…布の切れ端?」

シルエットがリックの顔を見ながら聞くと

「正解!」っと、リックが答えた。

だが、シルエットは1つ気になった事があった。


「これは…血が付いているのか?」

不思議そうな表情をするシルエット。


「その二つのモノが一致すれば…犯人はアイツだ」


そうリックが言うと、シルエットは驚いた様子で

「もう犯人が分かったのか?」っと、リックに質問をするが


「いや…まだ確信している訳じゃない。

           ただ…一つだけ引っ掛かる事があるんだ」

「引っ掛かる?」


「あぁ。普通なら有り得ない。

        でも、もしもそれが違っていたら有り得る事だ」

「…」



シルエットは、無言のままで何やら考え込んでいる様子。

すると、リックはニヤリと笑いながら言った。


「どっちが先に犯人を捕まえられるか、ゲームスタートだ!」


そう言い残し、リックは何処かへ行った。

シルエットはリックに渡された、二つの小さな袋を見ている。



シルエットは、あの時のリックの言葉の意味を理解した。


「そういう事か…」


シルエットは、一族の隠された真実に辿り着いた。


「なるほど。リック、君が言いたかったのは…」


シルエットは思わず息を飲み

そして、今までに起こった異常な殺人事件

自身の推理と、様々な感情が入り混じる中で

一つのキーワードを手にした。


「そうだったのか…《先入観》だったのか…」


シルエットは一瞬、肩が堕落し同時に挫折感を感じた。


だが…


「真実とは…時に、とても儚いモノだ」


すると、

シルエットが窓の外の方へと視線を向け

シルエットの視線の先に見えるのは

以前ルーク達が暮らしていた建物だった。


その建物から大きな煙が上がっている事に

シルエットは気付いた。


「リック」


すると、シルエットの携帯電話が鳴る。


「なんだ?」


FBIからの電話「例の件ですが、鑑定の結果、一致しました」


「わかった」


シルエットは、携帯電話をポケットにしまい

煙が出ている建物の場所へと、全力疾走で向かった。


「ゲームは、まだ終わっていない」


シルエットは、その言葉を強く自身の体の中で叫んだ。


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