第21話《Link》

その頃


邸内では、シルエットが1枚の写真を手にしていた。


アンディを中心に一族が皆、揃っている記念写真の様だ。


すると、そこへ執事のルークがやって来て

シルエットが持っている、1枚の写真を見る。


「おぉ、これはお懐かしい」

シルエットがルークに質問をした。


「これは?何かのパーティーですか?」

「えぇ。これはアンディ様のバースディパーティです」

シルエットは、ルークの答えに納得した様子。


「なるほど。だから皆さん、集まっている訳ですね?

 皆さん、とても良い笑顔をしている…」


シルエットは、何かに気付いていた。


その写真の中に

一族とは思えない人物が、1人映っていたのだった。


不思議に思ったシルエットは、ルークに質問をした。


「中心の人物は、アンディさんですか?」

「はい。さようでございます」


シルエットは、写真の人物を1人1人指さし

その人物が誰なのかを確認している。


そしてシルエットは、続けてルークに質問をする。


「それじゃこれは…メイソンさん?

 その隣にいる女性はイザベラさんですか?」


ルークは、素直にシルエットの質問に「はい」と、そう答えた。


「これはサミュエルさん。ジェイコブさんにヴィクトリアさん。

 ウィリアムさんにサラさんですか?」


「その通りでございます」


更にシルエットは、ルークに質問と人物の確認をしている。


「ネイサンさん。これはルークさんですよね?」

「お恥ずかしいですが、私めにございます」

ルークは少し照れながら、シルエットの質問に答え続けた。


「それじゃ、ルークさんの隣にいらっしゃるのは

 奥さんのマリーさんですよね?」


ルークは何かを察し

少し表情が変わったのを、シルエットは見逃さなかった。


「それでは、ルークさんとマリーさんの間にいるのは…」

ルークの額には、汗が少し滲み出ている。


「この子供は…」

シルエットは、人物の確認を続けた。


「娘さんのアンジェリーナさん。ですよね?」

「そっ…そうです…」


ルークは、とても動揺している様子だった。


何故ならば、どうしてシルエットが写真の人物を

1人1人を指さし、人物の確認をしているのか

その理由に気付いたからである。


ルークは、シルエットが次に質問してくる内容を分かっていた。


「では…」


「…」


さっきまで穏やかな表情をしていたルークが突然、下を向いた。

シルエットは写真に指した指を、ゆっくりとずらしてゆく。

シルエットの指先の向う人物は既に決まっている。

それは、ルークも既に察していた。

ゆっくりと写真の上を指でなぞり

やがて、シルエットの指先が止まった。


ルークは下を向きながらも、シルエットの指先を見つめていた。


そしてシルエットは、ルークに尋ねた。


「この人は?」


「…」


ルークは、

シルエットが指した指先の人物を見つめ、止まっている。


「この…子供は?」


シルエットの質問に、ルークは答えられずにいた。

シルエットは、何か可笑しいと確信した。


「この子供は、一体誰の子ですか?」


「それは…」


ルークは、言葉を出せずにいる。

シルエットは更に、ルークに問いただす。


「ルークさん?答えて頂けませんか?」


「…」


ルークは、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。


シルエットの指先に映っているのは、幼い子供だった。


その子供の両隣には…

とても幸せそうな表情で微笑んでいる人物がいる。


1人の人物は女性、イザベラ。

そして、もう1人の人物は男性、メイソンだった。


シルエットは、もう一度ルークに質問をした。


「2人の間にいるということは…

       この子供は、この2人の子供ではないのですか?」


「…」


「ルークさん?」


シルエットがルークに問いただしていると

そこへ、1人の男が現れた。


男の声「私が説明します」


現れたのは、サミュエルだった。


「サミュエルさん?」


「その子について、私が説明します」


「サミュエル様…」


サミュエルがシルエットの向いに座り

写真に写っているメイソンとイザベラの間にいる

幼い子供について語り始めた。


「その幼い子供は…メイソンとイザベラの子供のケニーです」


「やはり…そうでしたか」


シルエットの予想通りの答えが、サミュエルの口から出た。


シルエットは、ついに

一族の謎、そして真実へと近づき始めていた。



一方、

リックは煙草を吸いながら、メイソンと話をしている。


「一族だけであれば…君の言うミスはなかったのだがな?

 2人も見慣れない者に、邸の中をうろうろされては

 なかなか私の都合の良いようにはいかなかった。

 だから、急ぐ機会が増えてね」


メイソンは、苛立っている様子でリックに話をしている。

そんなメイソンに、リックが言った。


「いつもの通りにはいかなかった。だからミスをした。

   それは、俺とシルエットのせいだって言いたいんだろう?」


「その通りだ!君は非常に頭が良いな!」


「素直に喜べないのは、何故かな?」


「そうだな…それは君達2人が

   邸内をウロチョロするネズミにすぎないからじゃないか?」


リックは、メイソンの言葉に苛立ちをみせる。


「ネズミ…か。

その言葉を俺は予測していたから、素直に喜べなかったんだな」


リックは眉間に皺を寄せると、メイソンは更にリックを侮辱する。


「ネズミはネズミだ」


「ネズミでも何でもいいけど。

            でも一体、何でこんな事をするんだ?」


リックは、メイソンに何故、殺人を犯したのか質問をしてみた。


「…いいだろう。説明してやろう」


すると、メイソンはリックに説明を始めた。

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