第12話《誰なんだ…》

女性の悲鳴が響き渡る。


仰向けになって倒れている男性の姿があった。

その隣で、女性が男性の身体にしがみつきながら泣いている様子。


その女性はジェイコブの妻、ヴィクトリアだった。


そして、仰向けになって倒れているのは…

ヴィクトリアの夫、ジェイコブだった。


ジェイコブは、自分の部屋で仰向けで倒れており

口に手を当てられている状態になって、死んでいた。


ジェイコブの遺体には

ウィリアムの時と同様、手には釘が打ちつけられていた。


ヴィクトリアの悲鳴を聞き、シルエットとリックが駆けつけ

すぐに、ジェイコブの遺体の手の釘に気付いた。


「なんてことだ…」

シルエットが頭を抱えている。


「畜生…」

リックは、苛立ちを隠せない様子。


暫くして、

ルークがジェイコブの部屋へ到着し、一体何が起きたのかと思い

辺りを見渡すと、倒れているジェイコブの姿に気付いた。


「ジェイコブ様…」


ヴィクトリアは、ジェイコブの遺体に触れ

涙を流しながら何度も何度も、ジェイコブの名前を呼び続けた。


シルエットが、ヴィクトリアの身体を支えながら言った。


「さぁ、こちらへ」

シルエットがジェイコブの部屋から、ヴィクトリアを連れ出し

リックが、ルークに「警察に連絡をしてくれ」そう伝えると

ルークは「はい」と答え、急いで電話を掛けに向かった。


そしてリックは、ジェイコブの部屋に一人残っていた。


仰向けに横たわっているジェイコブの遺体を見ながら、

部屋の中の様子を見ているリック。

そしてまた、リックがジェイコブの遺体へと視線を戻すと…

ある異変に気付いた。


「…なんだ?」


リックはしゃがみこみ、ジェイコブの遺体の手に注目した。


遺体となったジェイコブの右手をよく見てみると、

薬指だけが怪我しているのを発見した。


「怪我している?」


リックは、その場から立ち上がり

もう一度、この部屋の中を見ている。

部屋に異変がないか辺りを見回すが

特に変わった様子や、争った形跡が無い。


間もなくして、

シルエットがジェイコブの部屋に戻り

ジェイコブの遺体を見ながら「また、釘だ」

とても残念そうな表情を浮かべるシルエット。

「あぁ。酷い事をしやがる」

リックも、残念そうな表情を浮かべた。


シルエットは、辺りを見渡しながらリックに聞いた。

「何か手掛かりになる様な物は、あったか?」

「いや、特に争った形跡も無い。ただ…」

リックの言葉に疑問を抱いたシルエットが

「ただ?ただ何だ?」っと、質問をする。


「これを見てくれ」

リックが、ジェイコブの指先を指しながら言った。


「右手の薬指だけが、怪我している」


それを見たシルエットは、

何やら考え込んでいる様子で、無言のままでいる。

暫くすると、

シルエットもリック同様に、部屋の中を見て回るが

異常だと思われる様な事が、まったく無かった。


間もなくして、シルエットが

「ちょっと外を見てくる」そう、リックに伝えると

「あぁ。俺は、もう少し此処にいる」


シルエットがジェイコブの部屋を出ようとするが

足を止めて、リックの方へと振り返った。

「リック」

「?」

リックが何かあったのか?という表情を浮かべる。

すると、シルエットが心配そうな表情で言った。


「気をつけろ。まだ犯人が近くいるかもしれない」

リックは、シルエットの気遣いに笑みを浮かべながら

「あぁ。アンタも気をつけろよ」

そう言いながら、2人は互いを心配した。


シルエットは外へ向かい、

リックはジェイコブの遺体の指先を見ながら

「どうして…怪我している?」


リックは再度、ジェイコブの遺体のところにしゃがみこむ。

「怪我していた?怪我した?」


リックは、独り言を言いながら持っていた携帯電話のカメラで

ジェイコブの遺体の写真を撮っている。


すると、

何か指に付いているのを発見したリックは

近くにあった、棒状の様な物と小さな袋の様な物を手に取り

ジェイコブの右手の薬指の血痕と異物を採取している。


袋に入れ、それを見ているリック。

「一体…何があったぁ?」

リックは、採取したモノをポケットに入れる。


間もなくして、ジェイコブの部屋にルークが戻ってきた。

「間もなく、警察が到着すると思います」

「わかった」リックはふと、疑問に思ったことを言葉にした。


「あれ?ポケットチーフは?」


ルークは、スーツの胸元のポケットに手を当て、次に目で確認し

ポケットチーフが無い事に気付く。


「可笑しいですね…

      急いでおりましたので

              何処かで落としたのでしょうか?」


ルークは、幾つものポケットを手で確認している様子。


リックは、冷静な感じで

「何処かで見つけたら、渡すよ」っと、ルークに言った。


「申し訳ありません。お願い致します」

そう言うと、ルークはリックに頭を下げたが、

どこかルークの表情が固まっているかの様にも見える。


何か引っかかる様な気持を抱きながらも、

リックはジェイコブの部屋を後にし、外へと向かう。


シルエットとリックは別々ではあるが、庭にいた。


2人はそれぞれ

自分達が此処へ来る以前に、四男ウィリアムが殺害され。

そして次に

自分達が此処へ来ている最中で、三男ジェイコブが殺害された。


その事を考えていた。


誰が何故?

何の為に?

一体、誰が殺人を…。


《誰なんだ…》


シルエットとリックは、別々の場所で同じ事を思い考えていた。

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