第11話《近づくモノ音》

サミュエルに忍び寄るモノ音。


だが、

サミュエルは、邸のありとあらゆる物の状態を知り尽くしている。


邸がとても古い為、場所によっては

床がギシ、ギシ、と音がする箇所があり、

ゆっくりと忍び寄るモノ音との距離を耳で計るサミュエル。


すると、急に床のギシ、ギシ、という音が無くなった。


その時、 


サミュエルの耳元で、とても小さく低い声がする。


「やがて時が訪れる…」


まるで身体中に電気が走ったかのように、

サミュエルの身体がビクッなり、

背筋は伸びきった状態で硬直した。


「その日が…とても待ち遠しくはない…か…?」


サミュエルは、震え出す心を表すかのうように顔は青ざめている。


「…また…来るよ…」


そう言い残し、

モノ音がまたギシ、ギシ、ギシ、っと古びた床を鳴らしながら、

ゆっくり去って行った。


サミュエルの身体は硬直したまま、その場に佇んでいた。

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