第10話《晩餐①》
邸の中の一室では、一族が椅子に腰かけながら
飲み物を口にし、くつろいでいる様子だ。
ルークに席を案内されたシルエットとリックは、
サミュエルの隣の席へと腰掛けた。
すると、サミュエルが口を開いた。
「皆に紹介しよう」
サミュエルは自分以外の、この邸の全ての者に
シルエットがFBIである事は伏せながら
シルエットとリックを紹介する。
「シルエットさんとリックさんだ」
サミュエルから紹介を受けた2人は、集まった一族に向け
「初めまして。シルエットです」
「リックです」
2人は、一族に挨拶をする。
そしてサミュエルが、2人を邸に招いた経緯を語った。
「2人共、私の友人だ。都会での疲れもあるだろうと思い
暫くの間だが我が家で休息の時を過ごして貰おうと思い、招いた」
すると、メイソンが笑顔で迎えた。
「ようこそ、おいでくださった。ゆっくりしていってくれ」
シルエットは、全員に向けて言った。
「急にお邪魔して、申し訳ありません。
暫くの間ですが、お世話になります」
メイソンが、手でグラスを持つかのよう様に
「酒は呑むかね?」と、シルエットとリックに質問した。
「えぇ。そんなに強くはないですが」
恐縮している様子で答えたシルエットに対し、
リックは要望するかの様に答えた。
「酒と肉があったら最高だな!」
シルエットがリックの方を見ながら
「リック」
すると、メイソンは大きな声で笑った。
「わっははは。確かに、君の言う通りだ。
私も、酒と肉には目がなくてね」
メイソンは、とても人当たりが良く
陽気な感じの印象を、シルエットとリックは同じ様に感じていた。
「ルーク!今夜は最高級の肉を用意してくれ!
それと、上手い酒も忘れるなよ!」
そう、ルークに申し付けると
「はい。かしこまりました。ご用意致します」
そんな会話のやり取りをよそに、
窓の外を見つめているウィリアムの妻、サラの姿があった。
シルエットは、サラの様子を伺っていた。
すると、突然シルエットに話しかけてきたのは、
ジェイコブの妻、ヴィクトリアだった。
「すみませんね」
ヴィクトリアは、サラの方を見ながら言った。
「以前は、ともて明るい性格だったの」
シルエットは、話しかけてきたヴィクトリアに対し
「お察しします」そう答えた。
すると、
言葉の話せないジェイコブが、ヴィクトリアを手で呼びかける。
ジェイコブとヴィクトリアが眼と眼で会話をしている様に見える。そんな2人をシルエットが見ていると、ヴィクトリアが言った。
「夫が、ゆっくりしていってくれと言っています」
ゆっくりと頷くジェイコブにシルエットは
「ありがとうございます」と、言うと
ジェイコブとヴィクトリアはシルエットとリックを、
とても優しい笑顔で歓迎した。
すると、シルエットが言った。
「素敵ですね」
ヴィクトリアが、「えっ?」っと、驚いた表情を浮かべる。
「いえ。心が通じ合っているのですね」
シルエットが笑顔でそう言うと、ジェイコブとヴィクトリアは
とても幸せそうに微笑み合う。
そして、その晩。
一族が、シルエットとリックを盛大に迎え、晩餐が行われた。
見た目も美しく、食欲をそそる香り漂う料理がテーブルに並べられ
そして、様々な酒も一緒に用意されている。
食卓には、皆の笑顔で賑わっていた。
シルエットとリックも笑顔で、晩餐を楽しんでいた。
それと、同時に…
この中に《犯人》が、いるのかもしれない。
そんな思いを抱きつつも、晩餐は夜更けまで行われた。
大きな空には、紅い満月が怪しく輝いていた。
風によって雲が流れて…時折、月が見え隠れする。
時間は流れ、空の上では、月と太陽がゆっくりと入れ替わる。
紅い満月は沈み、
眩しい光を放つ太陽が、夜明けと共に街中を照らす。
また、新しい1日が始まった。
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