第9話《みない・いわない・きかない》

馬小屋から更に北へ歩くと

先程の見晴らしの良かった景色とは異なり

雑草や枝が折れている木なども多く

数年は手入れをされていない様子だった。


暫くすると、

コンクリート状の様な物体があるのを、シルエットが発見した。


「リック、アレを見てくれ」

シルエットが指を指した方向へと、リックが目を向ける。


「あれは…なんだ?」

それが一体何なのか、気になっている様子のリック対しに

シルエットが答えた。

「もう少し近づいてみよう」

そう言いながらシルエットは

更に、コンクリート状の様な物体へと1歩ずつ進んで行く。

続けてリックもシルエットの後を追う。

徐々に近づくにつれ、その物体が何なのか、やがて明らかになる。


「これは…」

シルエットとリックは

コンクリート状の様な物体がある所へと辿り着いた。


「この邸…やっぱり呪われてるんじゃないか?」


2人の目の前に現れたのは、古びている三つの石造だった。

2人は、石造を一つ一つ凝視している。


「呪われる理由は、これだろう?」

リックがそう言うと、シルエットは眉間に皺を寄せながら

「そうだな。そうかもしれない」


その三つの石造は、悪魔の様な姿をしており

一つ一つの石像の形が異なっていた。


目を塞いでいる状態。

口を塞いでいる状態。

耳を塞いでいる状態。


その三つの石造を見て、2人は思った。


ウィリアムの死は、この石造と繋がりがあるのでは?と、

2人は、まったく同じ事を思っていた。


「なんだか…嫌な予感しないか?」

そうリックが言うと、シルエットは

「そうだな…確かに嫌な予感がする」

胸騒ぎを感じている2人。


すると、

シルエットが一つの石造の一部分に注目していた。


「リック、ここを見てくれ」

シルエットが、石造のある部分を指さす。

「偶然か?それとも必然か?」

シルエットが指をさしていたのは、耳を塞いでいる状態の石造。

そして、その石像の耳の部分が破損している箇所だった。


「壊れていたのか…誰かが壊したのか…

                どっちにしても気味が悪いな」


リックがそう言うと、シルエットは何やら考え込んでいる様子で

「…行こうリック」

リックは、辺りを見渡しながら

「あぁ」と、シルエットに返事をし

2人は石造に背を向けて、歩き出した。



暫く歩くと、シルエットとリックは

石造の場所から南東に位置する邸の方へと戻っていた。

邸の玄関先では、執事のルークが立っており、

2人がルークの姿に気付き、またルークも2人に気付く。


間もなくして、3人が邸の玄関先で話し始める。


「お散歩ですか?」ルークが訪ねるとシルエットは

「えぇ。まぁ、そんなところです」そう答えた。


ルークは2人に笑顔を見せながら、こう言った。

「只今、メイソン様・サミュエル様・ジェイコブ様

      ヴィクトリア様・サラ様。

           皆様が一室にお集りになられております」


リックは、邸の方を見ながら

「おっ、勢ぞろいか?」

「はい。お飲み物のご用意をさせて頂きましたので

            よろしければ、ご一緒に如何ですか?」

ルークが、そう訪ねるとシルエットは

「そうですか。有り難う御座います」


シルエットとリックとルークの3人は、邸の中へと入って行った。

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