第2話《懐中時計》

AM8:05 

目覚まし時計が鳴り響く。

ベットの中から、ゆっくりと手が伸び出て、

鳴り響く目覚まし時計のアラーム音。

手探りで探すが…手に当たり床に落ちる目覚まし時計。


「畜生…」

リックは身体を起こし、

床に落ちた鳴り響く目覚まし時計を拾い上げ、音を止める。


「ふぅ~」

リックは一息尽き、オーディオの電源を入れ、

やがてスローテンポのベース音が流れはじめる。

音に合わせながら身体を左右にゆっくりと揺らしながら歩き、

窓の方へと向かい、閉ざされたカーテンに手を掛ける。

カーテンを開けると同時に、太陽の眩しい光が部屋中に差し込み、今までスローテンポだったベース音から一気に明るいメロディアスな曲へと変わる。


「朝だ~おはよう~」

さっきまでとは打って変わり、リックは朝からかなり上機嫌だ。

間もなくして、キッチンへと向かったリックは

朝食を作りながらペットに餌を与えている。

すると、

PCの着信音が鳴り、どうやらメールが届いたようだ。


メールには、「依頼」という文字が映し出されている

一件のメールが、リックの元に届けられた。


「ある一族に…奇妙な、、、出来事?」

リックは続けてメールの内容に、目を通す。


「是非とも、ご協力願いたい」   


メールに目を通し終えたリックは、直ぐにメールの返信をする。

「ご希望に添えない場合もありますが、先ずは詳しい話やお聞きし 

 たい事もあるので一度お会いするお時間を頂けますか?」

リックは、メールを返信する。


すると、

「今からお会いするのは可能ですか?場所は何処にしましょうか?  

 貴方だと分かるような、何か目印などありますか?」

 直ぐにメールの返信が届く。


「やけに返信が速いな…目印?

          私が持っている物でも大丈夫でしょうか?」リックは小さく呟きながら、「分かり易ければ何でもいいんだよ」

そう言いながらリックは、メールの返信をする。

「分かり易ければ何でも構いません」


すると、

また直ぐにメールの返信が届く。


「すみません。こちらは貴方様のお顔を存じているもので、

         ついつい知り合っている気になっていました」


そのメールの内容を見たリックは、眉毛がピクっと動く。


「なんなんだ?コイツは?」

突然の意味不明なメールの内容に、リックの目が少し細くなる。


その一方、キッチンでは朝食が焦げはじめ、

うっすらと白い煙が上がり始めている事に

リックは気付いていない様子。


「こちらこそ、すみません。

 名前や顔など一度知れば、あまり忘れる事はないのですが・・・ 

                       失礼しました。

出来れば何時何処で、お会いしたか教えて頂ければと思います。」

メールのやり取りが続けて行われる。


「先週末に、あの有名な美術館から少し離れた公園付近で、

                   お目に掛かりました。」


「公園付近、、、ですか?何時くらいに?」 


「あれは確か、、、24時くらいだったと思いますが」


リックは、記憶を辿る。


「あの夜、俺は…BARにいた。

     だとしたら…このメールの人物は奴等か?

            それとも奴等に関係する人物なのか?」


リックの表情が少し険しくなる。


「とても暗い場所だったので、もしかすると貴方様からは、

  こちらの顔が見えない立ち位置だったのかもしれませんね?」


その内容のメールを読んだリックは、更に記憶を呼び覚ます。

あの日の夜、BARでの出来事が頭の中で記憶が呼び起される。


すると、メールが届く。


「懐中時計と言えば、思い出して頂けますか?」


リックは、ハッとした表情を浮かべる。


~瞳の裏側~思考回路~脳内~

更に、リックの頭の中であの日の夜の記憶が鮮明に映し出される。


「あの時の…人影…一体何者だ?」


リックが、続けてメールの返信をしようとすると。


「すみません。今、急用が入ってしまったもので。

               またこちらからご連絡致します。

 近々、お会いする事と思いますので、               

    要件の程どうか前向きにご検討、宜しくお願い致します」

                     とのメールが届く。


「こちらこそ、お会いする日を楽しみにしています」


メールの返信を終えたリックは、両手を頭の後ろに回しながら、

PCの画面からゆっくりと天井の方へと視線を向け。 


「ふぅ~、一体何者なんだ…

            名前すら名乗らずに、完全に怪しいな」


すると、

先程と同じ人物からメールが届く。

「度々すみません。一応、資料をお送りします。

           前向きな気持ちで宜しくお願い致します」


リックは、その内容のメールには返信はせず、何やら煮え切らない表情を浮かべている。

リックはふと、キッチンの方へと視線を向けた。

すると、

キッチンでは、朝食から黒い煙がモクモクと出ている。

「畜生!俺の朝ごはん!」

リックは、叫びながら急いでキッチンへと向かう。

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