全人類自由法

豊多磨イナリ

全人類自由法

時代は少しだけ先の未来。ジェンダーレス,平等の叫びが勢いを増す中、全ての人にとって平等である法律を施行せよという風潮が高まった。そして、世界の各国を対象とした国際法「全人類自由法」が施行された。さて、この法律の条文は唯一つ「全人類は束縛されることなく、自由に行動して良い。何をしても罰則規定はない。」というものだ。これに全人類が湧いた。長年のデモや努力によって〈真の自由〉を勝ちとった人々は以前でいう犯罪を犯すことなく、真の平和を享受していた。

時代は更に進んで、全人類自由法施行後200年が経った頃、人類の中に努力の末この法律を勝ちとったことを知るものはいない。傷害に殺人、詐欺、拷問に虐殺、レイプとても平和とは思えない惨状であった。しかし、これらの凶悪な事態に対しても誰も何も言わない。そんな矢先、甲国が乙国に対して核を落とした。それは突然のことであった。乙国は焼け野原の如くになり、それは自由或いは平和とは全く逆の状況である。

そんな戦争状態が50年程続いたある日、新たに法律を作り凶悪な事態や戦争が起こらないようにするとの声明が、全ての国のトップから発表された。それに対し、自由を求める人類は激怒し、自由を求める反対運動などが世界中で行われた。

更に時代は下って数年後、自由を勝ちとった人類は再び平和な暮らしを始めた。彼らは自由を勝ち取るための努力を知っているからである。しかし彼らは数十年後、再び惨状が世界に拡がることは知らない。

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