第4話「お化けに関する考察②」
生霊という言葉を知ったのは中学生の頃だったか、源氏物語でおなじみ「六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)」のエピソードを読んでからだろうと思う。
まさか自分がソレを観測することになるとは夢にも思わなかったという話。
* * *
高校生の頃。いつもつるんでいる男友達がいた。
まず、リーダー各の友人A。
こいつは日本人離れした彫りの深い顔に、茶色くカールした地毛。家はお金持ち。高身長。裏表なくさっぱりした性格。趣味は洋楽。ただし、運動神経と頭は普通。(僕の方が学校の成績は上だったと無駄な抵抗だけしておく)
そしてもうひとり、友人B。
こいつは友人Aとは逆ベクトルにイケメン(?)で、身長は低い。やたら華奢。大きな瞳。サラサラ黒髪に童顔で女顔というか、むしろクラスの女子より女の子している顔立ち。
女子はもちろん、男子からも告白される妖怪。
そして特徴がないのが特徴という僕の三人組で毎日面白おかしく暮らしていた。
②生霊的なオバケ
【現象】
学校帰りに友人Aと友人Bと僕の三人でぶらぶらと街を歩いていると、背後を知らない女の子が無表情に、かつ至近距離でついてきているのに気がついた。
『いつの間に? つか、近っ!』
僕は軽く驚くが友人AとBは気がついていない様子。それで、これまでの経験的に『出たか』と理解した。しかし、昼日中に見る事は個人的には珍しい。これまで人生において3回ぐらいしかない。
友人ABが喋りながら先を歩いていたので何となく距離を空けて、二人二列になるような形で歩きつつ、隣を歩く『ソレ』を観察する。
ショートカットで、ちょっと凛々しい感じのする顔立ちと、その髪型や顔立ちとは似合わないフェミニンな感じのふわりとした服を着たアンバランスさが特徴的な、同い年ぐらいの女の子。
無表情だけど、悲しさとか怒りとか寂しさを感じる。
何故か絶対に僕と目を合わせないという徹底ぶり。無視ですか?
あまりにハッキリくっきり見えるので一瞬人間なんじゃないの?とか思えてくるけど……言葉で説明しにくいが、肌で異様さは感じ取れる。
『これ死人じゃないなあ…』
肌の血色の良さから、そう思ったと記憶している。そして、僕らについてくるだけて『害』は無さそうだけど……と、怪訝そうに観測を続けていたら友人ABから「何しとるの?」と心配されたのが実害といえば実害か。
【対処法?】
雰囲気的に僕だけにしか見えていないのは分かったので放置。
ほっとけばいつの間にか勝手に消える。
「知ってるよ、コレ。生霊ってやつでしょ? 凄えな!」
なんて、ひとりでワクワクしてたら、その数週間後にご本人様が登場。
別の高校の女子でしたよ。
この方と共通する別の友人経由で僕ら三人組に接触してきたんだけど、最初にお会いした時には飲んでたジュースを吹きそうになってむせたのを覚えている。
この方を仮にCさんとしておく。
例の生霊の件があって楽しくなってしまい、まず僕が先にCさんと友達になった気がする。
もちろん生霊のことは永遠に僕の中だけの秘密。
その後、Cさんに詳しく話を聞いてみたら、友人Aの隣にいつもいる友人Bを女性と勘違いしてたんだって。
たしかに、この友人Bはスカートこそはかないが……って、男だった。まあ、どっちにでも取れるような服装ばかり着ていたのでCさんの気持ちは分からんでもない。
そしてなるほど、Cさんがショートカットにしているのも友人Bを意識してかと気づき、思わず笑いが出てくる。
部活か何かの活動で、たまたま他校の友人Aを見かけて一目惚れ……からの軽い霊的ストーキング生活が始まってたらしい。もちろん、Cさんは無意識であろう。
面白いったらありゃしない。
その後、Cさんの猛烈なアタックと僕の後方支援(その顔にその服はやめよう。こっちのシンプルでカジュアルなのがいいよ。どうせAはお姉さまに甘えたいという性癖の持ち主だし……という僕的にナイスなアドバイス)により、友人AとCさんは無事にくっついたので一安心です。
高校卒業後には何となく友人ABとCさんとは疎遠になってしまったので、さらにその後の事は分からないけれど、生霊を飛ばすぐらい好きだったんだから大丈夫でしょう、きっと……
【考察】
誰かを想う強い気持ちが魂的なモノになって、時間や空間を超えて意中の相手に会いに来れるのかもしれない。
それぐらい誰かを好きになれたらなあ……なんて、ちょっと羨ましい気もした。
【結論】
他人に迷惑がかからなければ霊的ストーキングはセーフ!
終わりよければ全て良し!
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