すれ違う想い……

累計5万PV 有難うございます。

急遽、執筆していたもので誤字確認できてないです。

誤字があれば報告お願いします。

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 彼が綺麗な女性と談笑しながらカフェのオープンテラスにいた。


 このカフェは私が彼に教えたお店。

 今日、彼は予定があると言っていた。

 その予定は、この女性と会う事だったんだ。


 意識せず、スマホを取り出し彼と女性の写真を撮った。


 どうしよう、彼が浮気してた。信じていたのに……

「綺麗な人だった……」

 私は自分の容姿に自信がない。

 少しは気にするようにしているけど誰が見ても綺麗と言われるような容姿ではない。よく言って『普通より少し上』そんな私にできた彼。

 交際を始めてもうすぐ一年。

 彼との関係は良好だと思っていた。

 それは私だけだったんだ……私の勘違い。

 彼にはこんな綺麗な女性がいたんだ。

「私……彼にとって、なんだったんだろう……」


 彼とのデート、今までならすごく楽しみにしていた。でも、この前見た光景が頭から離れない。


「ねぇ、私のこと、どう思ってる?」

 つい、思っていることが口をついてでた。

「えっ……好きだよ」

 今の、間はなに?

「そう……」

 好きと言われたのに心が弾まない…

「……どうか、した?」

「ううん、なんでもない」


 彼に『浮気してる』か聞きたい。

 でも、それを聞くと彼に嫌な思いをさせるかも……ああ、違う、『浮気してる』って言われることが怖いんだ。聞きたいけど、聞けない。そう思っていたら彼となにを話したらいいか分からなくなってきた。

 微妙な距離感のまま夕方になり彼と別れた。

「あっ」

 最後に何か彼が言いかけたけど、これ以上、微妙な雰囲気のもと彼といたくなかった私は聞かなかった事にしてその場を立ち去った。

 いつもならデートの後、彼の部屋で夜を過ごしていた。

 今日、彼と身体を重ねる気にはならない。

 この間の綺麗な彼女の姿が頭をよぎる。

 きっと彼もこの前……綺麗な彼女と身体を重ねたんだろうか?

 彼女と比べられるのが嫌、だって私から見ても容姿もスタイルも彼女の方がいい。私に勝ち目はない。

「ああ、このまま別れた方がいいのかなぁ」

 このまま彼と付き合っていても『どうせ、フラれるだけ』きっと彼は彼女の方に行ってしまう。


 その日の晩、彼に『別れましょう』とメッセージを送った。

 既読はついたけど、返信はなかった。

「やっぱり……」

 あの日から覚悟はしていた。

 だから、涙も溢れなかった。


 彼と別れた後、私は自分を磨くことに努力を惜しまなかった。

 新しく行った美容室で知り合ったスタッフのお姉さんに手入れ方法やお洒落を教えてもらったり、参考になりそうなサイトも教えてもらった。

 ひと月かからずに私は以前より容姿も良くなったんだと思う。

 声をかけてくる男性が増えたから自惚ではないはず。


◇ ——————————————————————————————— ◇


 付き合い始めてもうすぐ一年になる彼女と最近、上手くいってない。

 なにが悪いのか一人で考えていても分からない。

 でも、こんなことを彼女に聞くのはカッコ悪くて聞けない。

「誰にも相談できないよなぁ〜」

 ここ何日か同じことで思い悩んでいる。

「どうしたの?このところいつも難しい顔してるけど」

「ああ、彼女とちょっとな……」

「ほう、ほう、私に話てみ」

 綺麗な顔に悪戯な笑みを浮かべて俺の向かいに腰を下ろした彼女友人は高校からの友人。彼女ができるまでは一番仲の良かった子。

 そして、こうなったら話すまで解放してくれない。

 彼女と交際を始める前はよく相談をしていた。


 彼女に教えてもらったオープンテラスのあるカフェに行く。

 席に着き、俺はパスタとアイスコーヒー、彼女友人はケーキセットとアイスオレを注文した。

「それで、なに、悩んでるのよ?」

 話を誤魔化すのは無理と諦めて最近悩んでいたことを相談することにした。

「ん?ああ……実はな———」

 他の人に相談できないと思っていたこと。

「彼女を満足させられていないように感じるんだ」

 ポカンとした表情をした後、彼女友人は顔を赤らめる。

「もしかして、夜の方?」

 視線を俺から外して尋ねてきた。

「いや、違う、違う、なにかは分からないけど、最近、彼女といても楽しそうじゃないんだよ」

「それって———」

 思案げな表情を浮かべた彼女友人は少し躊躇った後、言葉を続けた。

「他に好きな相手ができた。とか……」

 その言葉を聞き、俺は息をのんだ。

 それなら俺といても楽しくないはずだよな。俯き黙り込んだ俺の頬に手を当てて彼女友人が声をかけてくれた。

「今度、デートをしたときに彼女を誘ってみたら?気持ちが離れてなかったら断られる事はないでしょ?」

「そう、だよな……彼氏なんだし、誘ってもいいよな……」

「彼女とシテないなんて言わないよね?」

「そりゃあ、一年になればな」

「なら、大丈夫でしょ」

「ああ」

 少しだけ気分が楽になった。

「ありがと、相談して良かったよ」

「また、なにかあったら相談してきていいよ」

 それから近況を話し合って彼女友人とは別れた。

 前向きな気持ちでデートの約束の日をまった。


 デート当日。

 彼女に楽しんで欲しくて選んだ場所は最近リニューアルした水族館。

 昔の水族館のイメージとはかけ離れたお洒落な館内に空調にも気を遣っているんだろう水族館にありがちなあの独特な臭いもしない。

 館内を二人で歩く。時折、彼女の反応を伺うがあまり楽しめてないようだ。

「ねぇ、私のこと、どう思ってる?」

 不意に尋ねられた言葉。

「えっ……好きだよ」

 驚いて即答できなかった。

「そう……」

 浮かない返答が返ってきた。

「……どうか、した?」

「ううん、なんでもない」

 そう言うけど絶対なんかありそうな気がする。

 その後も彼女は何かを考えているようで受け答えに精彩を欠いた。

 夕方になり彼女を誘おうとしたその時、

「帰る、ね」

 そう言って彼女は去って行った。

 いつもならこの後、俺の部屋にくるのに……


 悶々と考え込みながら家に帰った。

 頭によぎるのは相談した時に彼女の告げた言葉『他に好きな相手ができた』信じたくはなかった。あのメッセージが届くまでは。

 彼女から送られてきた『別れましょう』のメッセージ。

 彼女友人の想像は的中していた。

 やっぱり他に好きな相手がいるんだな。

 そう思うと返信を返すこともできないまま夜を過ごした。


 彼女と顔を合わせられないまま一月が過ぎた。

 その間も時々、彼女友人は俺の話を聞いてくれた。彼女と付き合う前に戻ったような気やすい関係に戻った。

 慰めてくれる彼女友人、親身になってくれているその姿につい聞いてしまった。

「もしかして、俺のこと好きだったりする?」

「……うん」

 頬を赤らめて頷く彼女友人の手を取る。

「いつから?」

「高校の時から……アンタといる時だけ自然でいられたから。はっきり気づいたのはもう少し後になってからだけど……」

 そうだったんだ。全然気が付かなかった。


「それで?」

「ん?」

「それを聞いてくるってことは私と、付き合ってくれるの?」

 上目遣いで潤んだ瞳を向けられる。

「俺は———」


◇ ——————————————————————————————— ◇


 私の視線の先に彼とあの綺麗な女性がいる。

 やっぱり付き合っていたんだ。

 だから、私の『別れましょう』というメッセージに返信がなかったんだ……

 二人とも見つめあってその距離が近づいてゆく。

 ああ、こんなところで見せつけられる、決定的なところを。

 踵を返し私は駆け出した。

 返信がなかったことで少しだけ期待を持っていた。

 綺麗になれば振り返ってもらえると思っていた。でも、やっぱりダメだった。

 あの時にはもう、彼はあの人に奪われていたんだ。


 完全に終わった私の恋。

 私は彼をあの人に寝取られていたんだ。だから、彼は私を求めてこなかったんだ。あんな綺麗でスタイルのいい人が相手なら私を求めなくて当然かぁ……


◇ ——————————————————————————————— ◇


「俺は———」

 彼女が他の相手に靡いた後、寄り添い俺に気持ちを寄せていてくれた彼女友人の想いを受け入れた。

「俺と付き合ってくれ」

 はっきりと告げた俺の想いを受けて驚いた表情を浮かべていた彼女友人、すぐにその表情を綻ばせた。

「はい、嬉しい」

 目を瞑り、その顔を近づけてくる。

 俺もそれに応える。


 二人の距離は近づいてゆき一つに重なる。

 離れた二人の唇を繋ぐ銀色のいと。


「これからもよろしくな」

「私があなたを幸せにするわ」

「俺も、お前を幸せにする———」

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