6
「なに落ち込んでんのさあ。心配してたんだよ。突然電話なんかしてきたから」
君は突然僕の前にあらわれた。
「何でここにいるの」
「約束したじゃん。今日ここで会うって」
そう言って君は両手に持っていたソフトクリームをひとつ僕に差し出した。僕がソフトクリームを受け取ると、君は僕のとなりにすわった。
「今日は暑かったねえ。そこで売ってたから買ってきたの。早く食べないととけちゃうよ」
僕は受け取ったソフトクリームをにぎりしめながらじっと見ている。そして、しばらくして「そうか、とけちゃうよね」とポツリと言う。
「やっぱりおかしいよ。元気出して」
ソフトクリームをにぎりしめたままでいる僕の顔をのぞきこんで君が言う。そして、カバンの中からビニール袋を取り出して、僕のひざのうえに置いた。
「ロスに行ってきたの。電話もらったときはちょうど空港に行く途中だったの。落ち込んでるみたいだったから、いまから遊びに行くって言えなくて。これおみやげ」
「君が元気でよかった」
また僕がポツリと言った。
「何言ってんの。心配なのはあたしじゃなくてあなたのほうじゃない。ねえ、どこいこっか」
「何が食べたい」
「そうだなあ。ハンバーガーみたいのばっかり食べてたから、うなぎなんかいいな。元気なさそうだし。少し元気つけないとね」
そう言いながら君はおいしそうにソフトクリームを食べている。ソフトクリームを食べおわったあと、僕は君の手に引かれるように立ち上がった。僕のひざにあったビニール袋が地面に落ちる。僕はそれを拾い上げて、袋の中身を出してみた。Tシャツだった。アルファベットの下に星が輝いている。
「ねえ、なんて書いてあるの」僕は君にきいた。
「アルファ・ケンタウルス」君が答えた。
カシスソーダとアルファ・ケンタウルス 阿紋 @amon-1968
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます