ごめんね。くしゃみが止まらないんだ。外はまだ暑いのにね。どうしたんだろう。君ほどじゃないけれど、僕もそんなに体が強い方じゃない。多分これはタバコの吸い過ぎなんだ。グラスを置いたテーブルのまわりに、小さなアリがうろうろしている。いくらティッシュで捕まえても、あとからあとから次々と出てくる。僕はすっかりあきらめてしまって、ビンに残っていたカシスソーダをグラスの注いだ。すっかり消えてしまっていたピンク色の泡がグラスの中にまた少しだけできた。

 そう、僕は君に会わなくちゃならない、君に話したいことがたくさんあるんだ。僕が君と会うときはいつも、僕は君の話ばかりきかされている。君の飼っている犬の話。その犬がほかの犬とケンカをして耳をケガした話。そしてケガをさせた犬の飼い主と君が大ゲンカをした話。それから君の家族の話。友だちの話。君の体調の話。そういえば胃の調子は良くなった。君の胃の調子が良くならないと、いっしょにご飯も食べに行けない。お酒を飲みにも行けない。タバコが一番いけないって言ってたけど、タバコは止められた。だめだよね。君はタバコはやめられない。僕はふとテーブルの上に無造作に放置されたノド飴を見つけた。つつみが破れたまま、まだ何個か残っていた。なかをのぞくとアリがたくさん這いまわっている。こいつか。僕はノートを引きちぎって、そのノド飴をアリごと包んでゴミ箱に放り込んだ。

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