カシスソーダとアルファ・ケンタウルス

阿紋

 僕はカシスソーダのビンのキャップをひねったあと、氷の入ったグラスにそれを注いでいる。グラスの上のほうにできた泡がピンク色をしている。甘酸っぱいというより、少し酸味の強いその味はまるで君のように思えた。そう、君はいつも僕を困らせている。

「そんなことないよ」多分君はそう言うだろう。いま僕の意部屋に流れているのは、マービン・ゲイの「アイ・ウォン・チュー」そう僕は君がほしいんだ。君に会いたいんだ。それなのに僕は君に会えずにいる。このところずっとね。やっぱり君は僕を困らせている。この前僕が電話した時、君は僕にしばらくケータイがつながらなくなるからと言った。僕がそのわけを聞いても、君は僕に教えてくれなかった。「今度会ったときに話すよ」君はそう言っただけ。

「海外にでも行くの。それとも入院でもするの」そう聞いても君の答えは「今度会ったときに話すよ」ただそれだけ。今度会うときって、今度はいつ会えるんだい。

 いま君はどこに行ってるの。ニューヨーク、ロスアンゼルス、それとも香港、シンガポール。君から海外に行ってみたいって話は一度も聞いたことがなかったよね。君から聞く話はいつも体の調子の悪い話ばかり。君は何かあるとかならず熱を出す。《いま九度近くあるよ》君はメールで僕にこう伝える。僕が《大丈夫?》ってメール送っても君からの返事は返ってこない。どっか体を悪くして入院でもしたの。気のことが心配なんだ。僕は何度も君のケータイに電話をしてみたんだ。結果はいつも同じ。つながらない。

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