第45話 転生者お出かけする
今日は紅葉ちゃんと約束していたので一緒にお出かけだ。
向かうのは、紅葉ちゃんが最近お気に入りの洋菓子店『ガトー・ラ・アナベル』イートインも出来きケーキとお茶を楽しめる。
ただ、マスコット?的なアンティークドールは何度見ても怖いけど。
最寄り駅で紅葉ちゃんと待ち合わせ。
先に来ていた紅葉ちゃんは、下心見え見えで話しかけてくる男達を華麗にスルーしていた。
「ごめんね、待たせて」
「ううん、今来たところだから」
そう言った紅葉ちゃんはカッコいい。
今日はパンツルックスタイルで尚更だ。
「今日はあると良いなー」
紅葉ちゃんが、そう言ったのは『アマ・デトワール』という看板ケーキ。人気のため早いときには午前中で売り切れてしまうこともある。
「そのために開店直後に行くんだよね」
「うん、だから早く行こ、早く」
紅葉ちゃんに促され電車で久方君とミークちゃんの最寄り駅に向う。
そこから歩いて店に着く。
扉を開けると例のアンティークドールのアナベルがお出迎えしてくれる。
ガラスケースを横切る時に……。
「ひっ」
目が動いた気がした。
「どうしたの未来?」
もう一度、アナベルを見ると真正面を向いたままだ。どうやら私の気のせいらしい。
「ごめん、何でもない、それよりもあれ」
私がお目当てのケーキを指差す。
「あっ、あった、あった、今日こそ食べれるよ」
一目散にレジヘ並び、ケーキセットをイートインで注文する。私も同じセットにして席に着く。
「これ、見た目も名前の通り星屑みたいで綺麗だよね。肝心の味はと」
紅葉ちゃんはケーキを口に運ぶと目を丸くする。
「うまっぁぁ、未来これ凄く美味しいよ食べてみなよ」
「あっ、うん」
私も紅葉ちゃんに勧められたとおりケーキをひとくち頬張る。
びっくりした、本当に驚くほど美味しかったから、これなら午前中で売り切れてしまうのも納得だ。
「もう一個頼んじゃおうかなー」
あっという間にケーキを平らげた紅葉ちゃんが追加でもうひとつ頼んでいた。
ケーキに舌鼓を打ちつつ、未来ちゃんに尋ねた。
「それで、昨日はどうだったの?」
本来は紅葉ちゃんのヒロインルートで発生する水族館イベントが前倒し的に発生していた。本来は主人公君と行くのだが、今回は久方君と。
逆にミークちゃんのプールイベントは本来夏休み中のイベントとして発生するのが、遅れて今やってきた感じだ。
「それがさ、諒也君……」
話を聞いてて、率直に感じた感情は羨ましいだった。どつしてそう思ったのか自分でも分からない。
「……そっか上手く言ったのなら良かったよ」
「うん、ありがとう。あとさ、瀬貝のやつとも会ってさ、明らかに様子が変だったからさ、一応未来も気をつけておいて」
そう紅葉ちゃんに言われたので、もっと具体的な話を聞いてみた。
「言動はいつものようにおかしかったけど、しまいには、これから起こる事が分かるなんて言いだすしさ」
やっぱり瀬貝君は否定していたが、転生者の可能性は高い、もしくは……。
「ねぇ、紅葉ちゃん。瀬貝君って子供の時からあんな感じなの」
私の質問に頭を捻りながら紅葉ちゃんが考え込む。
「ちがうかな、小学生の頃はあんな自分本位じゃなくて、もっと周りにも気を配って優しかったかな」
昔を思い出したせいか、紅葉ちゃんか寂しい表情を一瞬だけ見せる。
「それなら、いつ頃から変わったように感じらたかな?」
「うーん、そうだなー、夏休みの前辺りからかな、それこそ伯東さんと親しくなってきた辺りかな」
「なるほど」
時期的には私がこの世界に転生するより少し前からのようだ。
「あと、他に瀬貝君、他におかしな事言ってなかった」
行動からしてハーレムルート狙いなのは間違いないようだが、行動が雑過ぎる。大まかな流れは知っているけど細かい部分は知らない、もしかしたらライトユーザーなのだろうか?
「うーん、さっきの事以外は、そうそう諒也君のことをチャラ男のクズとか言ってきたんだよ、酷いと思わない」
紅葉ちゃんの言葉が私にも突き刺さる。
私もちゃんと話をするまではゲームの先入観からそう思ってました。心なかで久方君に「ゴメンなさい」と謝っておく。
「……そっ、そうだね」
「うん、まあ後は変わらずというか、最近の言動が全部おかしいんだけどね」
紅葉ちゃんからしたらそうなのだろう。
私から見ても主人公君らしさが全く失われてしまっている。
イベント関連も紅葉ちゃんとミークちゃんはほぼ久方君側に発生している。
水族館のイベントが起きたなら多分、来週は図書館イベントが起こる可能性が高い。
それにしても久方君、ゲームでは不可能な同時攻略を進めるなんて凄い。
対照的に瀬貝君はほぼ失敗しないはずのハーレムルート攻略を失敗している。これもある意味凄い。
皮肉な話だ。
どちらも転生者として疑わしい二人なのに。
瀬貝君に関してはお互い関わり合いにならないように約束したので、今さ私の方から近づくわけにはいかない。
かと言って久方君にも!真実を話す勇気もない、今の私はミークちゃんや紅葉ちゃんと違い、ただ流されているだけの傍観者。
そう、そのはずだったのに、なんでこうなった。
翌週、起こる図書館イベントそれが何故か私の身に降り掛かったのだ。
ヒロインじゃないモブキャラの私に……って、あれ?相手は瀬貝君じゃなく久方君だから別に良いのかな、と自分自身を誤魔化してみた。
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「Gsこえけん」に応募しているので応援してくれると嬉しいです。
短編になります。
完結しましたので読んで頂けると嬉しいです。
タイトル
『最愛の幼馴染が僕を暗殺するために送り込まれた刺客だった、それだけの話』
https://kakuyomu.jp/works/16817139557603851062
よろしくおねがいします。
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