第44話 プールでキャキャ!


「お兄ちゃん、どうかな僕の水着?」


 クルッと一回転して俺に見せてくれる。


「あっ、ああ凄く良いと思う」


「そっか、やったね。これでお兄ちゃんも僕にメロメロだね」


「まあ、そうなる可能性はなくもないような」


 メロメロとまではいかないが、心を惹かれたのは間違いない。


「えっ、本当に、本当。ついにお兄ちゃんが僕と付き合う気になったの」


「いや、まだそこまでは」


「なんですとー」


 何か反応が明日野っぽいぞ。

 最近仲良くなって遊んだりしてる影響だろうか。


「そんなことより、早く泳がないかミィ」


「うん、そうだねって、お兄ちゃん、私が用意した水着は?」


「あれは流石にな、折角ミィが選んでくれたから中に穿いてるけど」


「えー、絶対にお兄ちゃんに似合って、セクシーだったのに」


「俺はまだミィほど自分に自信が持ててないからな」


「うーん、そんなことないと思うんだけどなー」


「ほらほら、そんなことより、水が待ってるぞー」


 残念顔の美郁の手を引いてプールに向う。


「あっ、うん、そうだね。先ずは楽しまないとだよ。じゃあ、早速ウォータースライダー廻りしようよ」


 俺が引いていたはずなのに、引っ張る手はいつの間にか美郁に変わっていた。


 その美郁に、連れてこられたのは一番高いスライダー。


「それじゃあ、僕から行くよー、後からちゃんと付いてきてね」


「おっおう!」


 一応返事はしたが予想以上の高さに、ちょっとだけビビる。


 順番が来て美郁が俺に笑いかけると、楽しそうな掛け声と共に躊躇うことなく滑っていった。


「イヤッフォー!」


 絶叫マシンなども、女子の方が強いと聞いたことがあるので同じ理由なのかもしれない。


 俺も覚悟を決めると美郁の後を追って滑り降りる。


 水飛沫をあげながら、高速で落下していく感覚は思ってたより……気持ちよかった。


 下のプールで待ってくれていた美郁が俺に近づいてくる。


「アハハ、気持ちよかったね。お兄ちゃん、これ癖になるよね」


「ああ、初めてだったから、少し心配だったけど、あの感覚は気持ちよかったよ」


「あれ? お兄ちゃん初めてだっけ?」


 美郁が不思議そうに尋ねる。

 ウォータースライダーで滑った記憶は無いので間違いないく初体験だ。


「ああ、プールは何度か来たけど、伯東はスライダー系は滑らないからな」


「そっか、お姉ちゃん勿体ないなー。あっ、でもでも、これって僕と一緒が初めての経験ってことだよね」


「まあ、そうなるな」


「うん、うん、ねぇお兄ちゃん。これからも一緒の初めて増やして行こうね」


 美郁がプールの中で抱きついてくる。


「そうだな、ミィとなら……色々な事を一緒に体験して行くのも楽しいだろうな」


「勿論だよ、というわけで今度はあっちのスライダー滑ろうよ」


 美郁はもう一度俺の手を取ると今度は別のスライダーに向かって引っ張っていく。


 今度のは高さよりは長くて曲がりくねった奴だ。


 しかも、こちらはカップルで滑る事が可能らしい。


「お兄ちゃん、一緒に滑ろうよ。ねっ良いでしょう。これこそ二人の初めての共同作業だし」


 一緒とはいえ、滑る事を共同作業とは言わないだろうと思う。


「共同作業かどうかは置いておいて、一緒に滑るのは良いぞ」


「えっ、本当。やったね」


 順番が来たので、美郁はカップル用のシートを受け取る。

 ポジション的には美郁が前で俺が後ろだ。

 

 シートに座ると、美郁が後ろの俺にもたれ掛かってくる。


「お兄ちゃん。しっかり握っててくれる」


 俺は美郁のお腹に手を回しきっちりとホールドしておく。手に直接伝わる美郁の感触は柔らかく妹はながら少しドキドキした。


「じゃあ、行くよー、ヤッフォー」


 美郁の掛け声と共に一緒に滑り降りる。


「キャハハ、イエェェエイ」


 水飛沫と共に美郁の楽しそうな声が響く。

 落下地点に二人一緒に飛び込む。

 美郁を掴んだままなので水中で絡み合う形になってしまう。


「イヤン、お兄ちゃん」


 ズレた手が思いがけず美郁の胸に触れてしまう。


「済まない、事故だからな、事故」


「だっ大丈夫だよ、事故じゃなくてもお兄ちゃんなら、いつでもオーケーだから」


 プールから顔を出して照れたようにこちらを見上げてくる。


「いや、流石にいつでもは駄目だろう」


 動揺を悟られないように、冷静にツッコんでおく。


「えー、お兄ちゃんの意地悪」


「意地悪じゃありません。それより少し落ち着いたプールの方に行かないか、少しまったりしたいんまけど」


「それじゃあ、流れるプールに行こう」


「ああ、それならプカプカ浮いてれば良いから楽だな」


「うん、僕もしてもらいたいことあるし」


「なんだ、あんまり過激なのは無しだぞ」


 先程の件もあり過度なスキンシップは俺の精神に負担が掛かりすぎる。


「別に過激じゃないよ、一緒にプカプカ浮かぶだけなんだから」


「そうか、それなら良いんだけど」


 そう言ったものの、実際に美郁の行動力を俺はまだなめていた。


 流れるプールでは、美郁は大きめの浮き輪を借りてくると、その上に俺を座らせると、さらにその上に座った。

 これは……過激じゃないのか?


 まったりと浮き輪の上でプカプカと流される。

 時間はまったりと流れているのに、俺の上に感じる美郁の存在に俺の気持ちは落ち着いていられない。。


「お兄ちゃん。逞しくなったよね」


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、胸元に頭を預けたままの美郁が、少しだけ首を上向きに反らし俺を見てくる。


「鍛えているからな、それに護身術もやってるからな」


 体がちゃんと動くようになって筋トレは欠かしていない。護身術は以前の俺の感覚を基に、教本などを参考にしてトレースすることで体に覚えさせた。

 その点で、本当に諒也の体は優秀だ。


「すごいね、お兄ちゃん。護身術かー、アチョーっていう感じ?」


「はははっ、そんな感じかもな。だからミィに何かある時は絶対に護ってやるからな」


「うん、僕はいつでもお兄ちゃんを信じてるよ」


 そう言ってくれた美郁の頭を後ろからポンポンする。じゃれつくように頭を擦り付ける美郁。 

 この世界で結んだ大切な繋がり。それは、妹や恋人に関係なく、間違いなく護りたい大切な存在へと昇華していた。


 


 ―――――――――――――――


「Gsこえけん」に応募しているので応援してくれると嬉しいです。


 短編になります。

 完結しましたので読んで頂けると嬉しいです。


タイトル


『最愛の幼馴染が僕を暗殺するために送り込まれた刺客だった、それだけの話』


https://kakuyomu.jp/works/16817139557603851062


よろしくおねがいします。 


 








 

 




 









 




 


 

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