第43話 妹は、兄を攻略開始する
楽しかったデートの帰り道。
様子のおかしかった瀬貝の事もあり、不安だったので楓を家まで送る。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
俺が素直にお礼を言うと、本当に嬉しそうに笑ってくれた。
「楽しんでくれたなら嬉しいよ、また水族館行こうね」
「ああ、約束したもんな」
「うん、また学校でね。バイバイ気をつけて帰ってね」
楓が去り際に名残惜しそうに手を離す。
「うん、またな」
俺も温もりがなくなり、寂しくなった手でバイバイと手を振る。
楓を送って、ひとり寂しく家に帰ると美郁が待ち構えており、今日のデート内容を根掘り葉掘り聞かれた。
「むむむ、さすが楓さん、手強いなー、僕も明日は負けられないや」
話を聞いて鼻息を荒くして息巻く美郁。
「別に張り合う必要はないだろう」
「駄目だよ、ただでさえ僕は妹ってことで、恋人として認識してもらえにくいんだから」
美郁の言うとおり、俺としても今は妹的存在としての位置づけが強い。
ただ、時折見せる仕草にドキッとさせられたりするのは事実だ。
「まあ、そうかもしれないだけど」
「だから、明日はしっかり悩殺してあげるから」
うん?
いま怪しげな言葉が聞こえたんだが気のせいだろうか。
そういえば美郁とのデートは何処に行くか聞いていなかった。
「なあ、ミィ明日は何処に行く予定なんだ?」
「それはー、明日になってのお楽しみだよ、ちゃんとお兄ちゃんの分のお出かけ準備も済ませてあるから明日は付いてきてくれたらそれで良いからね」
俺の準備も済ませてあるってどういうことだ?
疑問に思いつつ、その日の夜はグッスリと眠れなかった。
やっぱり楓の時と同様に、美郁と、その言葉を意識しすぎたせいか寝付きが悪かった。
翌朝目を覚ますと、既に美郁が朝食の準備まで済ませてあった。
相変わらず奇妙な色合いだったけど、にこにこ顔の美郁に見守れながら朝食を済ます。
「それじゃあ、出掛ける準備は身だしなみだけで良いからね」
美郁にそう言われ、部屋で服を着替えだけ済ませてリビングに戻る。
「はい、お兄ちゃん。今日必要なものは入ってるから」
美郁から鞄を渡される。
「それで、今日行くとこって?」
「ふっふっふー、昨日言ったとおり付いてきてからのお楽しみだよ」
「そうか、分かった。それじゃあ、それを楽しみに行こうか」
「うん、僕にお任せだよ」
俺は美郁に連れられ目的の場所に向かう。
電車とバスを乗り継いで着いた場所は、この時期でもやっている、有名なレジャープール。
つまり、昨日の悩殺というのは美郁の水着姿。
まあ、俺も一般的な男子だ。付き合うとかは別にして、超絶美少女の水着姿が嫌いな訳はない。
しかし、問題点がひとつ。
「ミィ、俺水着持ってきてないぞ」
「ん? そのために準備してたんだよ、ちゃんと鞄に入ってるから安心して」
「あっ、そうなのか、良かった」
「もちろんだよ、今日は僕のお任せだからね!」
そう言って親指を立てる美郁。
本当に俺には勿体ないくらいの良い妹だ。
「それじゃあ、また後でな」
待ち合わせ場所を決めた後、お互い更衣室に向かうためにいったん別れる。
男子更衣室に入り、空いてるロッカーを確保する。
いざ着替えようとして鞄から水着を出す。
そして俺は軽く絶望する。
いや、美郁さんや、さすがに体は鍛えられてきて引き締まってきた。だがブーメランはまだ俺にはレベルが高すぎる。否定はしないがはく勇気はない。
幸い入口付近で水着を売っていたのを見かけたので買いに行き、無難なサーフパンツにする。
ただ折角俺のために? 用意してくれていたものなのでインナー代わりにブーメランを穿いてみた。
水着を買い直したせいで少し遅れてしまった為、急いで待ち合わせ場所に向う。
美郁程の美少女を放置してしまったらどうなるかは明らかだからだ。
案の定というか、美郁に言い寄る男が二人。
早速割り込んで追い払う。
「ゴメンミィ、遅れた」
そう美郁に謝って振り返る。
目の前には可愛らしいフリルが付いたスカートタイプの白い水着。美郁の魅力を引き出すのに充分な効果を発揮していた。
現に俺は、美郁が妹だと分かっていながらも、その可愛らしさに見惚れてしまっていた。
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「Gsこえけん」に応募しているので応援してくれると嬉しいです。
短編になります。
完結しましたので読んで頂けると嬉しいです。
タイトル
『最愛の幼馴染が僕を暗殺するために送り込まれた刺客だった、それだけの話』
https://kakuyomu.jp/works/16817139557603851062
よろしくおねがいします。
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