第39話 土曜日、戦の地へ
約束したときはそこまでもなかったが、土曜日が近付くにつれ緊張してくる。
そして明日が肝心のデート当日……どうしよう眠れない。
一応、彼女がいたのでデートくらいしたことはある。でも、その時は付き合ってからのデートで、どちらかといえば喜びの方が大きかった。
しかし、今回は違う、今まで経験したことない相手からのアプローチ、真正面から向き合うと言った手前、意識しない訳にはいかない。
そして、意識すると楓の色々な部分が見えてきた。
最初の印象の通り、他のクラスメイトにはクールを通り越して冷淡。多分明日野の件もあるのだろうげと、だいたい「ええ」とか「そう」て話が終わってしまう。
しかも、あの容姿だ。美人が多いこの世界の中でも抜きん出ているため、告白された数と撃墜数もダントツ。
そんな彼女が学校では男で唯一と言っていいほど、心を許してくれてるのが友人の俺なわけで。
俺と話す時は、他の人達と全く違い、普通の言葉遣いだし、笑いかけてもくれる。
そのギャップが何というか……イイ、グッドだ。
別に聖人君子ではない俺としては、普通に優越感も感じる。
そして何より彼女と話してて、気が合うのは価値観が似ているからだろう。
お互い残念な幼馴染が居るのもシンパシーを感じる要因でもある。
何がいいたいかと言えば、俺は間違いなく彼女に惹かれ続けているということだろう。
そんなことを考えていると、明日のデートが特別に思えてきて……。
俺はそんな寝付けないままに朝を迎え。
完全に寝不足のまま、待ち合わせ場所に向った。
楓はわざわざ、俺の最寄り駅を待ち合わせ場所に指定した。今日のプランは、楓自身に任せてくれと頼まれたので何処に行くのかまるで知らない。
予定の時刻より少し早めに家を出たはずなのに、駅前には既に楓が待ってくれていた。
折角だから定番の『遅くなってゴメン』『いまきたところだから』をやりたかったのに残念だ。
などと思っている間に、見知らぬ男が楓に声を掛けてきた。
楓は目を合わそうともせずに無視していたが、何を思ったのか男は楓の手を掴み無理やり連れて行こうとした。
「あの、俺の彼女に何かようでも」
楓の手を掴む男の手を俺がさらに掴んで力を込める。退院後から始めている筋トレの効果が発揮され、男の顔が苦悶の表情に変わる。
「離せよ」
「彼女の手を離すのが先でしょう」
楓の手を離すように伝え、さらにもう少しだけ力をこめる。
「イデェ、えデデデで」
男は痛みに耐えかねて楓の手を離す。
解放された楓はすぐさま俺の後ろに隠れる。
「くっそ、ちっと顔が良いからって調子に乗りやがって」
男はそう捨て台詞を残して去っていた。
「ありがとう諒也君」
楓がお礼しつつも、さすがに怖かったのか、背中越しの服をギュッと強く掴んできた。
「いや、いいけど、それより本当に大丈夫か?」
心配して聞いただけなのに、楓の事を昨日の夜から意識しすぎたせいで素っ気ない態度になったかもしれない。俺は小学生かと自嘲する。
「ええ、大丈夫。折角の初デートなのに、のっけからケチがついちゃったと思ったら……」
「思ったら??」
「諒也君がさっそうと現れて守ってくれたから、逆に幸先が良いかもって思っちゃった」
暗い気持ちでデートしても楽しくはないだろうからある意味では良かった。
「それなら良かった。それで今日は何処に行く?」
「ふふっ、実は初デートはここって決めてたんだ。少し電車乗り継ぐけど良いかな」
「俺は全然構わないよ。それじゃあ行こうか」
そう言って俺は手を差し出す。
楓は嬉しそうに俺の手を取るとギュッと握っできた。思わず握り返したら嬉しそうな表情を俺に見せてくれた。
ただ、手を繋いだままだと改札を抜けれないので直ぐに手を離す事になってしまい、今度は名残惜しそうにしてくれた。
いつもは感情が表に出ない楓が見せてくれる、色とりどりの表情。
自然と俺も嬉しくなる。
改札を通って手を繋ぎなおす。
ホームで急行を待つ間は、水族館うんちくを楓が話して聞かせてくれた。
電車に乗ってからは目的の場所までかなり時間が掛った。でもその時間も学校ではしない色々な話が出来て楽しめた。
ただ途中、妙な視線を感じたのは気のせいだったのだろうか?
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「Gsこえけん」に応募しているので応援してくれると嬉しいです。
短編になります。
完結しましたので読んで頂けると嬉しいです。
タイトル
『最愛の幼馴染が僕を暗殺するために送り込まれた刺客だった、それだけの話』
https://kakuyomu.jp/works/16817139557603851062
よろしくおねがいします。
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