第38話 ダブルシスターズ

 瀬貝聖と自己紹介してくれた美少女。

 こっちの世界に来て逆に珍しい黒髪のロングヘアー。

 長さは腰まで伸びているので手入れが大変だろうと変な感想を抱いてしまった。


 言葉遣いも丁寧で、雰囲気は清楚なお嬢様。

 あの瀬貝にはもったいない、出来た妹に見えた。


 瀬貝の妹だからといって、さすがにここでサヨナラするのは気が引けるため、駅までは見送ることにした。美郁の友達みたいだし。


 それにしても美郁のやつ瀬貝の妹と知り合いならなんでもっと早く言わなかったんだ?

 疑問から美郁を見ると、不思議そうに首を傾けると何かがひらめいたのか笑顔を作るとウインクをした。うん意味不明だ。


「それにしても、なんであんなことになってたんだ?」


 別に咎めるつもりでは無く、純粋に不思議に思い聞いた。


「あのお兄様。美郁さんを怒らないで下さいませ。美郁さんは私を心配して付き合ってくれたのです」


「どういうこと?」


「あの、実はわたくしの兄が最近塞ぎ込んでおりまして。おそらく紅葉お姉様とのことだと推測はしているのですが……兎に角、元気のない兄を励まして差し上げたくて」


 まあ、学校であんなことが露顕すれば肩身が狭くなって居心地悪いだろうから、元気もなくなるだろう。


「それでさ、聖ちゃん。励ましたいけど男心ってのがわからないから相談に乗ってたら、あの二人が年上の人と遊んで見たら何かわかるかもって誘ってきて」


「あのなー、そんなのに……」


「はい、ですから美郁さんは断ったんですが、どうしても私が気になってしまって。最初だけ付き合えばいいからと言われましたので誘いに乗ってしまいまして」


「それで、僕も心配だったから付き合うことにしたけど。見たでしょう、お兄ちゃんと比べ物にならないヤツら、すぐ触ってこようとするから聖ちゃん守るの大変だったんだから」


 他人事のように言う美郁。

 何事も無かったから良いものの、もしかして二人は思った以上に自覚がないのかもしれない。


「あのな、ミィ、えっと聖さんも、二人はただでさえ綺麗で可愛くて人目を引くんだから、もう少し男に対して危機感を持った方が良い」


 ここは兄としてビシッと説教したつもりだったのに、なぜか美郁が嬉しげに俺の肩をパンパン叩いて喜ぶ。

 一方の聖さんの方はちゃんと反省したのか俯いてコクコクと頷いてくれていた。


 美郁には後でもう一度説教しないといけないと思いつつ、駅まで到着する。


 改札前で改めて瀬貝の妹が振り返る。

 

「あのお兄様……」


「えっと、お兄様ってのはちょっと」


「でも、美郁さんのお兄様ですよね」


「そうだけど、ほら俺は美郁の兄でだなー」


「むっ、もしかして聖ちゃんからお兄様って呼ばれて照れて喜んでるんでしょう」


 美郁が当たらずも遠からずな意見を言う。

 瀬貝の妹にお兄様と呼ばれると、嬉しいというよりは、むず痒いというか落ち着かない。


「それでは、名字では美郁さんと同じですので、宜しければお名前を教えて頂いてもよろしいですか」


 確かに名字だと美郁と区別できなくなるので仕方がない。


「諒也、久方諒也だよ」


「分かりました。教えてくれてありがとうございました諒也お兄様」


 なぜかお兄様呼びは変わらない。しかもムズムズ度が増した。


「本当に諒也お兄様。今日は助けてくれてありがとうございました。さすがはわたくしの兄のご友人です」


 大きく頭を下げる瀬貝妹。

 いま、なんか聞き捨てならない発言があった気がする。


「あの、君は瀬貝から俺のこと聞いていたのか?」


「はい、クラスメイトで友達とお聞きしております、あっ、そうでした。いつも兄がお世話になっております」


 純粋無垢な瞳で告げられたせいか、俺は反論することが出来なかった。

 そのまま瀬貝妹は勘違いしたまま、改札を通り俺達に再度手を振って帰って行った。


「なあ美郁」


 俺は瀬貝の件を尋ねようとしたら美郁の方から興奮気味に話しかけてきた。


「ねえ、僕気づいちゃったよ、驚かないでね。聖ちゃんって、あのお姉ちゃんの恋人っていってた人の妹だよ」


「いまさらかよ!」


 思わず声をを出してツッコミをいれてしまう。


「だってー、お姉ちゃんの彼氏になんて興味ないし、聖ちゃんってずっと名前で読んでたから。でも普通は気づかないよー」


 普通は気付くだろと言いたかったが今はいい。


「ふぅ、まあそれは良いや、それより問題なのはやっぱり、今日の事だ。良いかミィ今日みたいな危ないことは絶対にしたらだめだぞ」


「あっ、うんゴメン。セキュリティサービスがあるから少し安心しすぎてたよ」


 美郁のいうセキュリティサービスとは、父さんの会社で、別のグループにて実施中のサービスである。

 スマホとリンクさせてボタンひとつで屈強なガードマンが駆け付けるというものだ。

 本来は幼い子供向けを想定したものだが、過保護な光四郎さんが、モニタリングを兼ねて美郁にも持たせてある。


「ふぅ、まあちゃんと分かってくれたらなら良い、母さんも心配してたし帰ろう」


「はーい」


 美郁は元気に返事をすると腕に巻き付いてきた。

 帰り道で俺は美郁に、瀬貝妹のことを聞きつつ、俺も楓との事を話した。


「なっ、なっ、なんですってー。僕もお兄ちゃんとデートしたい!」


 言われる事は覚悟していたので、ちゃんと美郁とも日曜日に二人きりでデートする約束をするのだった。





―――――――――――――――


「Gsこえけん」に応募してみることにしました。


 短編になります。

 まだ完結しておりませんが

 読んで頂けると嬉しいです。


タイトル


『最愛の幼馴染が僕を暗殺するために送り込まれたアサシンだった、それだけの話』


https://kakuyomu.jp/works/16817139557603851062

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