第10話 ヒナの空

私は電柱の陰に隠れて見守る。


この変は野良猫が多いし、最近カラスの鳴き声も聞こえる。


もしも、そいつらが近づいたら追っ払わなきゃ!


電線の上から「ピピピ」と声がする。


その声に興奮しているのかクーラーボックスの中でヒナが羽をバタバタしているようだ。

羽の先っぽが見え隠れする。


少し心配になりヒナの様子を見るとかなり興奮している様子だ。


『もう帰る? 』


ヒナは私の顔を.. いや、ヒナは空を見ているんだ。


再び私は電柱の陰に身を隠した。


すると1匹の雀がクーラーボックスの前に舞い降りた。


近づいたり離れたり。


「チッ チチチ」


クーラーボックスを一回りするとババッと飛び去った。


親鳥なら中を覗くはずなんだけどなぁ....


それから3分ほどクーラーボックスを見守った。

もう電線に雀の気配が無くなった。


『ヒナ、今日はもう帰ろうね 』


『 !!』


いない!

キッチンペーパーをどけてもヒナの姿が見当たらない!


『ヒナ! ヒナ!! 』


耳を澄ましてもいつもの声が返って来ない。


もしかしたら飛び出してまだその辺に..


辺りを探してみた。



クーラーボックスからは目を離さなかったのに!


まるで神隠しにあったようにヒナは消えてしまった。




散歩になんか連れて来なければよかった..




でも.. ヒナは空を見ていたんだ。


私は空を仰ぎ見た。


『 ヒナ.. 』

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