地球の一番長い日//顕現
……………………
──地球の一番長い日//顕現
「白鯨が
『
日本海軍の駆逐艦から白鯨を見て唸る
『
『タイフーン・ゼロ・ワンより
フナフティ・オーシャン・ベース上空を飛行するドローンのセンサーには爆撃の影響を全く受けていない白鯨の姿が映っていた。
『
そして、攻撃が通じない中で
「不味いよ、東雲。
「地獄だな。どうしろってんだ?」
「世界が終わっちゃうかも」
「勘弁してくれ。マジで」
ベリアが肩をすくめるのに東雲がため息。
「お喋りしている場合か。さっさといくぞ。白鯨の本体はここにいるんだろう。最悪、サーバーをぶっ飛ばせばいい」
「了解、セイレム。俺たちは俺たちの
セイレムが苛立った様子でそう言い、東雲が渋々動く始めた。
「東雲。雪風からの情報によれば
「ぶち殺して進む。それしかない。だろ、八重野?」
「それもそうだな」
東雲が軽く返し、八重野が頷いた。
「私の音響センサーをASAの監視システムと同期させた。これで敵が熱光学迷彩を使用していようとも敵の位置が分かる。そっちにも送信する。ARに表示されるからそれを見て戦闘を行ってくれ」
「グッドジョブ、八重野。やってやろうぜ」
八重野が自身の音響センサーとASAの監視システムの音響センサーを同期させると、
「数は12名ね。全員電磁ライフルで武装してんだろうな」
「他に何を持ってくるってんだ? 水鉄砲か?」
「それだと平和でいいんだけどね。丁度、海も近いしさ」
呉が皮肉るのに東雲がうんざりしながら八重野の後ろから進む。
「いるぞ。クソ、こっちに気づいている! 待ち伏せだ!」
「オーケー! ぶちかませっ!」
八重野が叫び、東雲が“月光”を展開する。
『ウェアウルフ・ゼロ・スリーよりウェアウルフ・ゼロ・ワン。敵のサイバーサムライと接敵。恐らく“ケルベロス”所属だ』
『ウェアウルフ・ゼロ・ワンよりウェアウルフ・ゼロ・スリー。皆殺しにしろ』
『ウェアウルフ・ゼロ・スリー、了解』
東雲たちを待ち伏せていた
銃弾の嵐が吹き荒れ、一瞬でASAの研究施設が戦場と化す。
「さっさと突破して白鯨をどうにかするぞ。“月光”!」
東雲が叫び、“月光”の少女が召喚される。
「また戦いじゃな、主様!」
「ああ。頼むぜ、“月光”。ブリキ缶野郎どもをジャンクにしてやれ!」
“月光”の少女が刃を構えて東雲の隣に立ち、東雲とともに
「俺たちが突っ込む! 続け!」
「了解!」
東雲と“月光”の少女が弾幕を展開する
「おらおら! くたばりやがれ!」
「覚悟じゃ!」
東雲、そして“月光”の少女が
『クソ。気を付けろ。敵は未知のサイバネ技術を使用している。恐らく
『了解』
「逃がすな! ぶち殺せえ!」
「追撃じゃ!」
東雲と“月光”の少女が逃げようとする
『しつこい。サーモバリック弾を使うぞ。戦術リンクで同時交戦だ。準備!』
『了解。リンク接続、コンプリート。いつでも撃てます』
『発射』
複数の特殊作戦部隊のコントラクターたちが戦術リンクによる同時交戦能力によって一斉にサーモバリック弾を発射した。
「不味いっ!」
サーモバリック弾が同時に炸裂し、研究施設の廊下が爆炎と衝撃波に覆われ、破壊の嵐が吹き荒れた。東雲もそれに巻き込まれてしまう。
『やったか』
『待て。生体電気センサーに反応がある。しかし、このパターンは生身の人間だ。まさか機械化していない……』
『そんな馬鹿な』
「内臓がぶっ潰れて血がクソみたいになくなった。ふざけやがって。貧血は俺の最大の敵なんだぞ。造血剤だってもう残り少ないってのに!」
東雲はサーモバリック弾の炸裂の中を生きていた。
内臓が衝撃波で潰れ、骨が折れ、大量出血したものの、元勇者としての意地を見せ、傷を瞬時に回復させると“月光”の刃を
「絶対殺す。絶対許さん。死にやがれ、クソ野郎ども!」
東雲が“月光”を高速回転させて敵に向けて突撃。
『撃て、撃て。使えるものは全て使え。相手はあのジャクソン・“ヘル”・ウォーカー以上の脅威だ』
『機械化してもいないというのにどういう絡繰りだ。化け物め』
流石は訓練された特殊作戦部隊のオペレーターの出身である
脳に埋め込んだインプラントが平静さを保たさせていることもあるが、それ以上に彼らは修羅場を潜り抜けて来た経験がある。
その正確な射撃が東雲を狙い、高性能大口径ライフル弾が肉と内臓を貫いた。
「クソ、クソ、クソ! バカスカ撃ちやがって!」
「主様! 我が連中の背後に回る! 挟み撃ちじゃ!」
「ああ! やってやろうぜ、“月光”!」
“月光”の少女が加速して第七世代の熱光学迷彩で隠れた
『
『挟み撃ちにされかねない。どうする?』
『ウェアウルフ・ゼロ・スリーよりウェアウルフ・ゼロ・ワン。敵の脅威増大。撤退の許可を求める』
状態を危機的と判断した
『ウェアウルフ・ゼロ・ワンよりウェアウルフ・ゼロ・スリー。
『ウェアウルフ・ゼロ・スリーよりウェアウルフ・ゼロ・ワン。了解。合流する』
指示が下され
「逃がすわけねーだろ。ここで死ね」
「やるぞ、主様!」
だが、東雲が追撃し、“月光”の少女が挟撃。
「さあ、スライスしてやるぜ! 覚悟しな!」
『“ネクストワールド”を使用し、障壁を展開せよ』
東雲が振るう“月光”の刃を
「バーカ。もうそいつには備えてあるんだよ。元勇者なめんなよ!」
しかし、東雲の“月光”には
「八重野、呉、セイレム! 敵が総崩れだ! ぶちのめせ!」
「ああ! 東雲に続け!」
「よーし! やったぞ。ざまあないぜ、クソ野郎ども」
東雲が壊滅した
「ここで止まっている場合じゃない。急がなければ」
「分かってるよ、八重野。進もうぜ。けど、白鯨はもう何かしてるのか?」
「ロスヴィータや王蘭玲からの連絡はない」
「ふうむ。前の事件では世界中の無人兵器がジャックされて大事だったけど、今回は不気味なまでに静かだな。何がしたいんだ?」
「私が知るはずないだろ」
「はいはい。じゃあ、
八重野に急かされて東雲が研究施設内を前進。
「東雲。ちょっと不味い状況になった。ディーが
「おい。まさか、核攻撃か?」
「そう。まだ直接核攻撃を実行するのか、それも高高度爆発で電磁パルスを生じさせるのかは分からない。けど、彼らは核を使おうとしてる」
「クソ。核攻撃なんて喰らったら流石に死ぬぞ」
「しかし、本当に静かすぎるぞ。前に起きた白鯨事件のときは大騒ぎだった。地球上全てから軌道衛星都市に至るまで。ASAは白鯨を顕現させるのが目的じゃないだろ。白鯨の顕現は何かしらの目的のための手段だ」
「その通りだよ、セイレム。だけど、白鯨は存在するだけで脅威だ。超知能として人類をはるかに上回る技術を有し、そして魔術というこの世界には存在しないはずの技術を使用する。文字通りの化け物」
セイレムが訝しむのにベリアがそう返す。
「基本的に白鯨は以前起こしたのと同じ規模の事件を引き起こせる。世界中の無人兵器、インフラ、マトリクスに繋がれた全てのものをジャックして思い通りに動かせる。
「じゃあ、どうして白鯨は
「分からない。けど、ASAは白鯨を
「ふうむ。どうも妙な感じだな。白鯨から以前のような狂犬みたいな根性がなくなったみたいな、というか。白鯨なりに考えてるのかもしれないな」
「そうだとすれば猫耳先生の試みは上手く行くかもしれない。そう、白鯨を説得できるかも。彼女が世界を滅ぼしてしまう前に」
「そうなることを神様にお祈りだ」
ベリアがそう言い、東雲がそう言って進んだ。
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