西海岸戦争//マトリクス
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──西海岸戦争//マトリクス
東雲たちが居酒屋で作戦会議をしているとき、ベリアたちはマトリクスからニューロサンジェルスの情報を集めようとしていた。
「さて、何から調べる?」
「ニューロサンジェルスの現状からってところかな。企業戦争については直接は関係ないだろうから、ニューロサンジェルスがどうなっているかを探ろう」
「“ネクストワールド”はどうするの?」
「調査がある程度済んだらBAR.三毛猫でトピックを立ててみる」
「了解」
ベリアが言うのにロスヴィータが頷いた。
「じゃあ、ニューロサンジェルスの現状だけどニューロサンジェルスのALESSの構造物をに
「うん。ALESSの
「それでは早速飛ぼう」
そうベリアが説明し、ロスヴィータが先にニューロサンジェルスのマトリクスに向けてジャンプした。
ニューロサンジェルスのマトリクスが目に前に広がる。
「流石は国際経済都市。
「ただ、構造物からのトラフィックが少ない。AELSSがマトリクスでも封鎖を行っているみたいだ。アトランティス関係の構造物だけが活発にトラフィックを出してる」
「おっと。そのアトランティスの構造物が
「アローの
アトランティスの構造物は外部から攻撃を受けているのが分かった。複数のハッカーによって
「さて、私たちも
「オーケー。どのアイスブレイカーを使う?」
「Perseph-Oneならどんな
「じゃあ、軍用
「そうしよう。ちょっと改良すればALESSの
「了解。やってみよう」
ベリアとロスヴィータはアングラで出回っているアイスブレイカーであるLazyLarryを改良する。ジャバウォックとバンダースナッチも動員して、白鯨由来の技術──魔術を組み込んでいく。
「これでいい。後はALESSの構造物を実際に調べる。もしかすると、非常時になったせいで
ベリアはそう言ってロスヴィータとニューロサンジェルスにおけるALESSの構造物に向けって進んでいく。
「これだ。トラフィックが膨大。これに紛れてアクセスできるね」
「好都合だ。
ベリアがALESSの構造物を守る
「オーケー。これなら行ける。
「了解なのだ!」
ベリアがジャバウォックとバンダースナッチにアイスブレイカーを渡して、ふたりのAIがALESSの構造物に
単純な演算能力ならば
ジャバウォックとバンダースナッチは正確に
「できたのにゃ、ご主人様!」
「グッドジョブ。じゃあ、中身を拝見と」
ベリアたちはALESSの構造物内に進入し、内部に検索エージェントを放つ。
「ALESSのコントラクターの通信が見れるよ」
「どれどれ」
ロスヴィータが報告するのにベリアがデータを読み始めた。
『ミシシッピ・ゼロ・ワンより
『
これはニューロサンジェルスの災害地帯で戦闘を行っているALESSの部隊だ。
「ニューロサンジェルスは激戦みたい。ハンター・インターナショナルが介入したって情報も流れてるよ。でも、戦闘地帯は災害地帯だけ。復興されずに放置された場所。汚染と崩壊した建物でいっぱい」
「ふうむ。ニューロサンジェルス内で動きはないのかな。東雲たちが直接関係するのはニューロサンジェルスの企業地区だよ。災害地帯から砲撃でも受けない限り、直接は関係することがない」
「調べてみよう」
検索エージェントがALESSの構造物内を走る。
『ベイカー・ゼロ・ワンより
『
ALESSの交信記録が流れて来た。
「やっぱりアローは既にニューロサンジェルス市内に
「アローも汚い仕事をするための非合法傭兵やグレーの民間軍事会社を雇っているからね。下手すると東雲たちの
ベリアとロスヴィータがそう言いながらしばしALESSの構造物内でニューロサンジェルスの現状を調査し続けた。
「オーケー。ニューロサンジェルス市内にはアローの
「アローとアトランティスの戦争は市外だ。今はね」
ニューロサンジェルスに向かうことは不可能ではなく、現状が維持されれば東雲たちの
「さて、お次は?」
「BAR.三毛猫で“ネクストワールド”について話し合う。恐らくはこの
「だね。そして、ボクたちが先に“ネクストワールド”について真実にいたり、ジェーン・ドウを、六大多国籍企業を出し抜く?」
「そこまでは。正直、ジェーン・ドウはもう“ネクストワールド”について真実に辿り着いているのかも。“ネクストワールド”の情報を集めろって
「だとすると、六大多国籍企業が争っている理由は?」
「疑心暗鬼になってるとか。“ネクストワールド”はこれまでの保安手続きに引っかからず持ち込めて、大規模なテロを起こせる。できることをやる六大多国籍企業が他の企業にこの手のテロを仕掛けないとか限らない」
「ふうむ。ありそうだけど“ネクストワールド”が存在し続ける限り、その懸念は続くことになるね」
ベリアとロスヴィータはそう話し合いながら、ニューロサンジェルスのマトリクスを離れ、BAR.三毛猫に飛び、ログインした。
「あれま。あちこちで戦争しているみたい。企業戦争のトピックだらけだ」
「本当だ。欧州もアフリカも大荒れ」
BAR.三毛猫で目に付くトピックは企業戦争の話題だらけであった。
「そっちには用はない。もうニューロサンジェルスの情報あるし。“ネクストワールド”についてのトピックはある?」
「ないね。まだここのハッカーは誰も“ネクストワールド”を手に入れてないのかな」
「なら、私たちが一番乗りだ」
ベリアがそう言ってBAR.三毛猫でトピックを立てる。
““ネクストワールド”というプログラムについてのトピック”だ。
そして、ベリアは同時にトピックに“ネクストワールド”と雪風から託されたデータベースをアップロードする。
暫く待つとハッカーたちがやってきてアップロードされたデータをスキャンしてからダウンロードし確かめ始めた。
「これ、何なんだ?
やって来たグルメドラマのサラリーマンの格好をしたアバターの男性が、ベリアにそう尋ねて来た。
「大井海運本社ビルへのテロに使われたプログラムだよ。マトリクスの理を
「マジかよ。大井海運本社ビル爆破テロにこいつが?」
やってきたグルメサラリーマンのアバターは目を見開くと友人たちに連絡を始めた。それから続々とハッカーたちがトピックに集まってくる。
「これが大井海運本社ビルのテロに」
「どういう原理だ? 説明できる奴、いるか?」
「おいおい。これってダウンロードしても逮捕されないよな?」
トピックがざわめき、説明を求める声が響く。
「さて、説明するから聞いて! これはASAが開発したプログラム。マトリクスの理を
「そして、この“ネクストワールド”は同時接続者数に応じて上書きされる範囲が決まってくる。で、オカルト話で聞いたことがある人もいると思うけど、マトリクスは奇妙なことが起きる場所。死者の世界に繋がったりね」
ベリアとロスヴィータがそう説明した。
「つまり、この“ネクストワールド”はマトリクスで働く奇妙な現象を、魔術や死後の世界を
「そういうことだよ。これを突き止めたのは他でもない雪風。信じるでしょ」
いつものようにメガネウサギのアバターがやってきて確認するのにベリアがそう返した。雪風の名が出ると場がより一層ざわめいた。
「このデータベースは雪風の解析したデータってところか? これは白鯨の新言語だろう。まだ誰も解析できていない」
「そう。恐らくはこれを使えばPerseph-Oneも解析できる」
「ふうむ。面白いことになってきたな」
アニメキャラのアバターもやってきてデータベースを閲覧していた。
「ASAが何を目指しているのか。現状では分からない。けど、この時点で言えるのは彼らは白鯨を超知能化した。彼らは超知能を有し、白鯨が生み出すマリーゴールドを有し、六大多国籍企業と戦争をしてる」
「やばいな。あの白鯨だろ。世界征服をやろうとした殺人AI。そいつが超知能化してるとか、クソみたいに不味いじゃないか」
ベリアの言葉にアラブ人のアバターが唸る。
「ASAについて調べている連中がいる。飯のタネになりそうだってな。そいつらにもこのことを知らせよう。正直、このままだとまた白鯨事件みたいなことになりかねないぞ」
ハッカーたちが仲間たちに急いで連絡を始める。
「よ。お久しぶり」
「ああ。BGM-109君か。君も興味が出て来た?」
やってきたのは以前アルゼンチンのマトリクスで一緒に
「私はASAについて調べてるから。彼らの動きを探って、その情報を依頼主に売る」
「君は情報屋か。稼ぎ時だね」
「まあ、いくら稼げても世界が終わったら困るけど」
BGM-109はそう言って“ネクストワールド”をダウンロードし始めた。
「世界が終わる?」
「ASAは思想に取り付かれてる。世界を救うってさ。一種の
BGM-109はベリアにそう返したのだった。
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