デモリッション//ハード・ワイヤード
……………………
──デモリッション//ハード・ワイヤード
東雲とセイレムが大暴れ、大虐殺を繰り広げる。
『奴らを通すな! もはや我々が引く場所はない!』
『自分のために死ぬな! 戦友たちのために死ね!』
だが、サンドストーム・タクティカルの
「大井の! 気を付けろ! そいつは死んでない!」
「なっ!」
東雲が斬り殺したと思ったサンドストーム・タクティカルの
「死ね、サイバーサムライ」
「クソが! てめえだけで死んでろ!」
東雲が腕を斬り落とし、爆発から間一髪で逃れる。
「連中、イカれてるぞ。正気じゃねえ」
「殺し甲斐があっていいだろ」
「うんざりだよ」
セイレムが愉快そうに笑うのに東雲がため息を吐いた。
『シルバー・シェパードよりジャイアント。
『ジャイアントよりシルバー・シェパード。ここが我々の死に場所です。
『……シルバー・シェパードよりジャイアント。幸運を祈る』
ASAの研究施設内のサンドストーム・タクティカルのコントラクターたちがどこまで抵抗し、東雲たちを止めようとする。
「クソ。こいつらマジかよ。どう考えたって撤退した方がマシだろ」
「どうせ爆弾で皆殺しにするんだ。あたしたちが殺しても変わりはない。それとも人殺しが嫌になったか、大井の?」
「好きだったこともねえよ。あんたと違ってな」
サンドストーム・タクティカルの警備部隊は次から次に東雲たちのところに押し寄せてくる。アーマードスーツが上階の床を爆破して降下してくるし、弾が切れた
『
『了解。ひとりでも道ずれにします』
サンドストーム・タクティカルは
彼らは──。
「狂ってやがる」
東雲がアーマードスーツをまた撃破して呟く。
アーマードスーツは有人機で機体に大量の爆薬を装備し、電磁機関砲を乱射して東雲たちに突っ込んできた。東雲は“月光”を投射してパイロットを仕留めたが、爆発で右腕を持って行かれた。
「死にたがってるな」
「民間軍事会社のコントラクターがそこまで忠義を示す必要があるのか? 所詮は金の関係でしかない
「あたしが知るかよ。死にたがってるなら殺してやれ。それが戦場での慈悲だ」
「あいよ。そうしましょう。死にたい奴なら死んで本望だろう」
セイレムが吐き捨て、東雲が前に出る。
研究施設の階段を目指して東雲たちは進む。エレベーターはすでにサンドストーム・タクティカルによって爆破されており、階段しか上階に向かう手段はない。
『来たぞ。蜂の巣にしろ!』
『我々はもう命など惜しくはない。ただ、敵を殺せ! 義務を果たせ!』
階段の付近に陣地が出来ており、
「クソ。重機関銃陣地もある」
「切り捨ててやろう」
50口径の電磁重機関銃が据えられた陣地に東雲たちが突撃する。
東雲たちはその使用する装備の都合上、相手に接近することが迫られる。遮蔽物に隠れて射撃を行ったり、対戦車ロケットのような強力な火力を陣地に叩き込むことはできないのだ。
故に敵を見れば突撃するのである。
『撃て、撃て! 重機関銃は弾幕を展開! 他は保有する全ての火力を敵に叩きつけろ! 義務を果たせ!』
重機関銃の猛烈な射撃に加えて、
運動エネルギーミサイルは文字通り、運動エネルギーで相手を撃破するものであり、強力な推進ロケットを使って加速し、爆発などではなく衝突することで威力を発揮する。
それが東雲に牙を剥いた。
「うおっ!?」
“月光”で弾こうとした運動エネルギーミサイルが“月光”を押し込み、東雲に向かって来る。ロケットは未だ燃焼しており、東雲が後退する。
「くそったれー!」
東雲が運動エネルギーミサイルを完全に弾き、弾道が逸れた運動エネルギーミサイルが研究施設の壁にぶつかって貫いていった。
「あんなの何発も叩き込まれたあの世行きだぜ」
「じゃあ、その前に殺すしかないな」
「ああ。ぶっ殺してやる!」
セイレムが言い東雲が彼女と突撃する。
『運動エネルギーミサイル、次弾を準備! 急げ!』
『撃ち続けろ! 銃身が焼けただれるまで!』
猛烈な射撃が繰り広げられるも東雲たちはひるまずに陣地に向けて突撃を続ける。
『運動エネルギーミサイル、次弾装填!』
『撃て!』
サンドストーム・タクティカルのコントラクターたちが運動エネルギーミサイルを再び東雲に向ける。
「やらせるかよ、ボケ!」
東雲は射手に向けて“月光”を投射し、運動エネルギーミサイルの射手が首を刎ね飛ばされてミサイルは明後日の方向に向けて飛んでいった。
「セイレム! 畳め!」
「ああ!」
そして、セイレムが重機関銃陣地に飛び込み、サンドストーム・タクティカルの
『このっ! せめて道ずれにしてやる!』
サンドストーム・タクティカルのコントラクターが手榴弾のピンを抜いてセイレムに向けて突っ込む。
「大人しく死んどけ、死にぞこない」
東雲がそこに“月光”を投射し、手榴弾を持った
「いい仕事だったな、大井の」
「そりゃどうも。この調子で進もうぜ」
セイレムがそう言い、東雲が前進を再開する。
サンドストーム・タクティカルのコントラクターたちは必死に妨害を試み、まさに命がけで戦って来る。自爆すら厭わず、東雲たちを攻撃する。
『東雲。連中の研究施設における司令部近くまで来たよ。司令部を潰せば、敵は混乱すると思うけどどうする?』
「突っ込もう。もうこの連中の相手するのやだよ」
旧日本軍でもまだ理性があっただろと東雲が愚痴る。
『了解。ナビするからそれに従って進んで』
「オーケー。セイレム! 司令部、潰すぞ!」
ベリアの誘導で東雲たちがサンドストーム・タクティカルの警備部隊司令部を目指す。だが、簡単にはいかないものだ。
無数のブービートラップとコントラクターの抵抗、アーマードスーツなどの重武装の部隊の攻撃と東雲たちは何度も死にそうになる。
「クソッタレ。俺たちがふっ飛ばす前に連中が自分たちの手で研究所をふっ飛ばしちまうんじゃねえか」
「つべこべ言うな。敵を殺せ」
「はいはい」
セイレムが苛立った様子で言うのに東雲が肩をすくめて進んだ。
『司令部までまもなく。敵の抵抗に注意して』
「あいよ。連中も無限には湧いてこないだろう」
東雲とセイレムが司令部を目指し、そして司令部のある部屋の前に到着した。
「俺が突っ込む。援護してくれ、セイレム」
「分かった」
「3カウント」
3──2──1──。
「おらっ!」
東雲が司令部の扉を蹴り破り、内部に
「来たな、サイバーサムライども」
司令部には様々な通信機器と指揮機能を有する電子機器が置かれており、3名のサンドストーム・タクティカルの司令部要員がいた。
「おうおう。皆殺しだぜ?」
「元より生き残ろうなどと思っていない。我々の死に場所はここだ。今、戦友たちと同じ場所に向かう」
「お前──!」
そこで司令部要員のひとりが爆弾の起爆スイッチを持っていることに気づいた。
「ジャイアントよりシルバー・シェパード。我々は先に行きます。幸運を」
「セイレム! 逃げろ──」
起爆スイッチが押され、司令部内に山のように設置されていた高性能軍用爆薬が炸裂した。爆風がコンクリートの壁を吹き飛ばし、赤い炎と衝撃波、黒煙が辺りを覆い尽くしていく。
「い、生きてるか、セイレム……」
「何とか生きてるよ、大井の。クソ、無茶苦茶しやがったな」
東雲がせき込みながら尋ねるのにセイレムが床に唾を吐いてそう返した。
「マジで滅茶苦茶だぜ。連中、何考えてんだ?」
「知るか」
東雲がそう言い、セイレムが吐き捨てたとき、東雲のARに通知が来た。
『東雲? サンドストーム・タクティカルの構造物が消滅したけど何かあった?』
「自爆した。大量の爆薬でドカン」
『本当? 大丈夫だった?』
「辛うじて」
『じゃあ、研究所を吹き飛ばす前にしてほしいことがあるんだけど』
「おいおい。勘弁してくれよ。死にかけたんだぜ?」
『いいから。死にかけたとけど、死んではいないんでしょう? 簡単なことだから、ちょっと寄り道してくれればいい』
「お前、ますますジェーン・ドウに似て来たぞ」
『失礼なこと言わないで。とにかくやってよ』
ベリアがそう言い張る。
「はいはい。なにすりゃいいんだ?」
『八重野を研究所の指定されたサーバーに
「大丈夫なのか? 前にメティス本社のネットワークに
『忘れたの? 八重野は今は絶対に死なないって呪いがあるんだよ』
「そうだったな。じゃあ、八重野に頼んでみる」
東雲はそう言って後方からついてきている八重野に連絡を取る。
「八重野。ベリアからの追加のオーダーだ。ASAの連中のサーバーに
『分かった。どのサーバーだ?』
「情報を送る」
東雲が八重野にベリアが指定したサーバーの情報を送信した。
『分かった。まさ先だ。中心部を目指してくれ』
「了解。セイレム、休憩終わり。前進再開だ」
東雲がそう言って進み始める。
サンドストーム・タクティカルの警備部隊はほぼ壊滅したのか、ブービートラップがあちこちにあるだけでもうコントラクターとは遭遇しなかった。
本来ならば無人警備システムが作動し、警備ボットや警備ドローンが現れる場面でも東雲たちは何にも遭遇せずに進めた。
「品切れかね?」
「そのようだな。つまらん」
東雲たちが研究施設のベリアに指定されたサーバーのある地点まで辿り着いた。
「八重野。頼んだぞ。一応
「ああ。すぐに終わらせる」
八重野がサーバーに
「ダウンロードするのにどれくらいかかりそうだ?」
「10分前後だ。情報抜き取ったらすぐにベリアたちに送信する」
「分かった」
東雲が八重野がサーバーからデータをダウンロードしている間、周囲を守る。
「ダウンロード完了。終わったぞ、東雲」
「オーケー。後は研究所をふっ飛ばすだけだ。さっさと終わらせて逃げようぜ」
東雲がそう言って爆弾の設置予定地点に向けて進み始める。
「大井の。気を付けろ。何かデカいものが動いてる」
「何だよ。流石に建物の中に戦車はいねえだろ?」
「だといいんだがな」
東雲が明らかに辟易した様子で言うのにセイレムが肩をすくめた。
そして、東雲たちが研究施設内を進み続けていると──。
「音響センサーが大型機械の駆動音を捉えている。近いぞ」
「何が──」
突然大爆発が起きて研究施設全体が大きく揺れ、東雲たちの周囲が黒煙に包まれた。
「クソ! 何だよ、畜生!」
「おっと。こいつは凄いぞ」
東雲が叫ぶのにセイレムの口角がつり上がった。
東雲たちの前に現れたのは六脚の足と八本の電磁機関砲とオートマチックグレネードランチャー、ガトリングガン備えたマニピュレーターアームを持ち、口径70ミリロケット弾及び対戦車ミサイルで武装したアーマードスーツだ。
「おいおい。普通のアーマードスーツよりふたまわりはデカいぞ」
「前に米軍上層部が考えた代物だ。戦場で両軍が強力な防空コンプレックスを構築していると無人攻撃ヘリはおろかドローンまで使えなくなる。そのときどのように軽装歩兵に過ぎない空中機動部隊や山岳歩兵を支援するのか」
セイレムがそう言って巨大なアーマードスーツを見る。
「その答えがこれだ。重空挺装甲生体システム。アロー・ダイナミクス・ランドディフェンス製──“ハニー・バジャー”」
東雲たちの前に現れた“ハニー・バジャー”が東雲たちをセンサーで捉える。
……………………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます