スフィンクスの足元で//脱出及び報告
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──スフィンクスの足元で//脱出及び報告
東雲たちはポートサイドのスラム街からは脱出した。
そこでは既にZ&E第5
「何とか逃げられたな。ギリギリセーフだ」
「でも、Perseph-Oneは手に入らなかったよ」
「仕方ない。あのままだと殺されてたぜ」
ベリアはため息を吐くのに東雲は肩をすくめた。
「それよりも脱出だ。ジェーン・ドウが準備したチケットは今日エジプトをでることになっている。急いでマンスーラに向かわなければ」
「そうだな。チケット代無駄にしたくないし。帰りのチケットは
「そうだ。チャーター機で成田に直行だ。待ってはくれない」
「全く。客の都合も考えてほしいぜ」
東雲はぼやきながら駅に向かう。
「わお。厳戒態勢だ」
「テロリストを警戒してるね。
東雲が駅の前に広がる陣地や装甲車、無人戦車を見て呻くのにベリアがそう返した。
「まあ、爆発物や銃火器は持ってない。自然に行こうぜ、自然にな」
東雲がそう言って
東雲たちは爆薬や銃火器を所有していないので
それからベリアが準備した列車の指定席に座る。
「で、サンドストーム・タクティカルってのはどんな連中なんだ?」
「今、調べてるよ。ロスヴィータも調べてる」
東雲が尋ねるとベリアがそう答えた。
「どういう連中なんだろうな。堂々と
「ろくでもない気配がするな。軍用
「Perseph-Oneを作った人間と関わり合いがあるのは確実だな」
八重野が言い、東雲が返す。
「しかし、どうあれ
「だから、サンドストーム・タクティカルって連中の情報がいるんだ。Perseph-Oneに関わる情報を少しでも手に入れて、それで見逃してもらう。ジェーン・ドウのちょっとぐらい収穫があれば
東雲はそう言ってマトリクスに潜っているベリアを見た。
場が
マトリクスでベリアはロスヴィータと合流していた。
「サンドストーム・タクティカル、ね。聞いたことない。少なくとも
「前にALESSから警告は出てた。Perseph-Oneに関わる事件で。何かしら子のアイスブレイカーを開発した人間と関係がある」
「オーケー。調べよう」
ベリアが語るのにロスヴィータが検索エージェントを走らせる。
「BAR.三毛猫も覗いてみよう。何か分かるかも」
「民間軍事会社について並々ならぬ執着を持っているハッカーもいるからね」
ベリアとロスヴィータがBAR.三毛猫にログインした。
「エジプトでのテロについて新情報は?」
「なさそう。トピックは伸びてない。今回のイスラム殉教機構エジプト戦線と民間軍事会社の戦闘について情報はない」
「分かった。それじゃあログを漁ろう」
ベリアがジュークボックスに向かってサンドストーム・タクティカルという単語で検索をかけた。
「ヒット。1件だけ。少ないね」
「マイナーな民間軍事会社でもトピックはあるものなのに」
ベリアたちがログを再生した。
『結局、
『大抵は欧米に亡命した。いくつもの国が
絶滅したニュージーランドの鳥を頭に乗せた探検家風のアバターの男性がいうのに、一昔前のカートゥーンキャラのアバターをした女性が返す。
『もう誰も
『皮肉なものだな。これまでは弾圧された被害者として振る舞っていたのが、一気に大量虐殺をやった加害者だ』
『
『エルサレムを戦術核で爆破した』
イスラエルは自らが引き起こした核攻撃によってアメリカが敵に回り、一気に情勢が悪くなっていく中、聖地を敵に渡すぐらいならばと戦術核でエルサレムを爆破した。
『なあ、サンドストーム・タクティカルって知ってるか?』
『ああ。元
『そのサンドストーム・タクティカルにローエー旅団の連中がいるって話。ローエー旅団は
『ふうむ。イスラエルは戦争前には軍需産業がアロー・グループに買収されてた。根こそぎな。アローは現地生産を約束し、技術者を引き抜き、
『そう。機械化ボディもアロー・ダイナミクス・ランドディフェンス製。
『それを装備した元
『ああ。旅団長が拳銃自殺した後に副旅団長が野戦任官で少将に昇進して旅団長になった。モーシェ・ダガンって奴だ。こいつがサンドストーム・タクティカルの
『確認した。本当だな。こいつ、元ローエー旅団の司令官かよ。エルサレムを戦術核でふっ飛ばした人間が平然と民間軍事会社の最高経営責任者やってるなんて』
『別に
探検家風のアバターが肩をすくめる。
『それからこの民間軍事会社には元
『ネオナチの妄言である第四帝国みたいな話だな。だが、今さら
『ユダヤ人は今さらイスラエルに戻ろうとは思わないしな。連中が亡命した欧米は六大多国籍企業が支配していて、時代錯誤な反ユダヤ主義は消滅してる』
『その時代錯誤な価値観に熱心な人種差別主義者の
そこら辺でサンドストーム・タクティカルに関する話題は終わった。
「元
ベリアがそう感想を述べる。
「第六次中東戦争後、イスラエルの技術者は六大多国籍企業に大勢引き抜かれた。その伝手で六大多国籍企業と関係しているのかも。Perseph-Oneを開発したのは六大多国籍企業だと思うんだ」
「白鯨の気配がするって話? それは六大多国籍企業は少なからず白鯨に興味を抱いているとは思うけど」
「サンドストーム・タクティカルの業務内容は?」
「公開されてない。株式非公開だから義務がない。業務内容も投資した人間も謎」
ロスヴィータが尋ねるのに検索エージェントが持ち帰ったサンドストーム・タクティカルの情報を見ながらベリアが答える。
「投資する人間がいなければ民間軍事会社なんて装備の調達などの初期投資に金がかかる企業が起こせない。けど、六大多国籍企業とは距離を置いている辺り、投資したのは六大多国籍企業ではない。では、誰が?」
「さあ。この世界で全く六大多国籍企業に関わらず起こせる企業なんて限られてる。どこかで何かしらの接点があるものだよ」
「六大多国籍企業が関与を否定できる汚い仕事をさせている民間軍事会社みたいな?」
「そう。大手の民間軍事会社もモラルは底辺だけど、もっと過激な非人道的行為を行う。利益のための虐殺。虐殺が付随的損害ではなく、虐殺そのものが目的」
民間軍事会社は正規軍と違って軍法会議がないし、大抵は免責特権で裁かれないとロスヴィータが言う。
「サンドストーム・タクティカルについて明らかになってる契約がある。エジプト政府との契約。これは本物だね。警察業務を引き受けてる」
「アルゼンチンでは?」
「公式記録にはない」
アルゼンチンのALESSに警報が出されていたサンドストーム・タクティカルだが、アルゼンチン政府と契約した様子はなく、活動していたとは考えられない。
「困った。ジェーン・ドウに報告できそうなことがない。サンドストーム・タクティカルはPerseph-Oneに関係はあるかもしれない。今回の件でそれは確実。彼らはわざわざハッカーを襲撃してPerseph-Oneを削除した」
「犯行は経済的な理由か。あるいは思想や宗教か」
「民間軍事会社は営利企業である以上、利益が必要になる。最初に考えられるのは経済的な理由。だけど、サンドストーム・タクティカルは政治的な民間軍事会社でもある。元
「でも、それならどうしてこれまでイスラエルによって不倶戴天の敵であったイスラム原理主義者に対してPerseph-Oneを?」
「最初からモルモットにするつもりだったから? アルゼンチンでもどう考えても繋がりがあると思えない学生ハッカーに与えてるし」
「モルモットが必要になるアイスブレイカー。私たちは白鯨とマトリクスの魔導書の件でマトリクスと
「白鯨の目標は世界征服による平和と平等でマトリクスの魔導書の目的は人類及び地球における生命の宇宙進出。どちらも耳障りはいいけれど、やり方は陰湿極まった」
ベリアが尋ねロスヴィータがそう返す。
「これも今はちゃちなテロに使われているだけかもしれない。何か最終的な目的があって、そのためのオリバー・オールドリッジやルナ・ラーウィルがいうところの“全ての人たちのための必要な犠牲”って奴なのか」
「オリバー・オールドリッジとルナ・ラーウィルの両者は六大多国籍企業に所属していながら、その六大多国籍企業の目的と反したことをやった。今回も似たようなケースだったりして」
「六大多国籍企業の理事会に黙ってこっそり何かやってる、か。それなら六大多国籍企業直属の民間軍事会社を使わず、サンドストーム・タクティカルのようなフリーの民間軍事会社を使っている理由にもなる」
そこでベリアに東雲からの通信が入った。
『ベリア。そろそろ着くぞ。降りる準備しとけ。それからまたテロリストや民間軍事会社に襲われる危険性はあるか?』
「それはないと思うから大丈夫」
『オーケー。戻って来いよ』
東雲からの連絡はそこで切れた。
「じゃあ、
「気を付けて帰ってきてね。お土産もよろしく」
「お土産がないからジェーン・ドウに怒られそうなのに」
ベリアはそう言ってマトリクスから
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