第20話 一応確認しますけど、不敬罪にはなりませんよね?

 王妃、シャーロット・ラルックのお茶会当日。

 

 カミーユと共に城を訪れたレイラは、城の一角にある中庭に案内された。


 そこには他の参加者であるシルヴィとアルレットの姿もあって、レイラに気づいたシルヴィが、目をキラキラさせながら近づいてきた。


「あ、レイラ様!!」

「レイラ様、お久しぶりです。その後体調はいかがですか?」

「シルヴィ様にアルレット様、お久しぶりです。その節は心配をおかけしましたわ。」

「とんでもないです。レイラ様の元気そうな姿を見られて良かったです。にしても、今日は一段と華やかですね。」

「そうなのよ。アルレット様。実はもっとフリフリ全開になりそうだったのを、何とかお母様に引いてもらったんだけど、派手過ぎるわよね。」

「そんな事ないです。とっても似合っていると思います。」

「そうですよ!! レイラ様は綺麗ですから、衣装が派手でも全然負けません。いつものシックな感じもいいですけど、大胆なデザインも素敵です。」

「ありがとうございます。シルヴィ様。」


 アンヌとララに任せていたら、派手に派手に派手を掛け合わせたような物凄いドレスの図案が出来上がって、その案をそぎ落としていくだけで丸一日かかって出来た、いつもより少々派手目なドレス。

 だけど、これはこれで、実は結構気に入ってたりもするから、褒めてもらえて嬉しい。


「でも、ますます分かりません。レイラ様やアルレット様は分かりますけど、何で私なんかが呼ばれたんだろ……何故個人宛? 私、何か罰せられるんじゃないかと気が気じゃなくて……」

「最近の王室の動きは、不審な事も多いですからね。私も、父や兄にやんわりと止められました。ですが、流石に王妃様のお茶会を欠席はできません。レイラ様は、ドートリシュ公爵様とご一緒なんですね。」

「えぇ。お父様は事前に王妃殿下と話をされたようですわ。出席者はきっと、これで全員なんじゃないかしら?」

「どういう意味で・・・あ。」


 流石のアルレットもその事実に気づいたようだ。


 この場に居るのは、アルレット・カミーユ・レイラ・シルヴィの4人。

 ゲームでの悪役5人中の4人である。

 そして、エドモントの母親でもある、シャーロット・ラルック王妃殿下は、このゲームのラスボスに当たる最後の悪役なのだ。


「え、つまり、そういう事なんですか?」

「みたいですわ。私も詳しくは教えてもらえてないのだけれど。沖縄出身の方みたい。」

「はぁ……そんな事があるものなのですね。」


 アルレットの言葉には同感しかない。

 ゲームの主人公及び悪役主要キャラが、全員転生者だなんて、いたいどうしてこんな事が起こるのだろうか。


「え!? なんで2人だけで盛り上がるんですか!? 私にも教えて下さ―――」

「めんそ~れ~♪」


 シルヴィの言葉を遮り、とてつもなく明るい声がその場に響いた。


「ようこそ、私のお茶会へ。」


 このお茶会の主催者、シャーロット・ラルックの登場は、王妃とは思えない程、軽くあっけらかんとしたものだった。


 一瞬あっけにとられたが、すぐさまカーテシーするレイラ。

 隣のアルレットとシルヴィも、ハッとしてレイラに続いた。


「ヤダ。そんな気を使わなくていいから。今日は、無礼講の中の無礼講だから。今の私、王妃なんかじゃないから。私の事は気軽に、シャーリーとでも呼んで。」


 そう言われても、初めて会う王妃殿下を馴れ馴れしく呼べるわけがない。

 いや、でも、呼べと言われているのに呼ばないのは、逆に失礼になるのかしら?


「……。」

「……。」

「……。」


 皆黙ってしまった。


「恐れながら、突然そのような事を言われましても、目の前にいらっしゃるのは間違いなく王妃殿下です。貴族の子供たちには、荷が重い話ですよ。」


 カミーユが率先して進言してくれる。

 唯一の大人だもの。

 こういう時は頼りになる。


「えー……じゃぁ、変装する?」

「王室からの正式な招待状が個人に届いているんです。そもそも子供たちは緊張しています。」

「そっかぁ。そうよねぇ。もっとフランクな手紙にしようかと思ったんだけど、悪戯と思われたら困るから、正式なものにしたけど仇になったわね。んー。でも、堅苦しいのは嫌だし………じゃぁ。那海なみでもいいわ。これ、私の前の名前なの。今日は、王妃としてここに居る訳じゃなくて、どうしてもあなた達に教えて欲しい事があって集まってもらったの。だからお願い。今この時だけでいいので、一般人の那海として、普通にお話してください。」


 顔の前で手を合わせて、目を瞑りながら「お願い!!」と頭を下げるシャーロット。

 流石にそこまでされたのに、嫌とは言えない。

 王妃を一般人の様には扱えないけれど、出来る限り力になるためにも、肩の力を抜く努力をしようと思う。


「……一応確認しますけれど、不敬罪にはなりませんよね?」

「もちろんよレイラちゃん。そんな事を言い出す輩がいたならただちに刑に処するから安心して。」


 それでは逆に安心できないけど……

 まぁ、いいや。


 カミーユが、この会をそう気を張るものではいと言っていたし、きっと大丈夫なのだろう。


 シルヴィはすっかり怯えて泣きそう目をしているけれど、アルレットは案外この状況を楽しんでいる様にも見える。


( 折角仲間が増えたのだから、力にならないといけませんわね。)


「分かりました。では、お話を聞かせていただいてもよろしいですか。」

「ありがとう! レイラちゃん!! 本当にありがとうございます。じゃぁ、お茶とお菓子をいただきながら、じっくりお話ししましょう! アルレットちゃんもシルヴィちゃんも、さぁ、座って座って!!」


 シャーロットが指を鳴らすと、用意されていた大きめのガーデンテーブルの上に、次々と美味しそうなお菓子が並べられ、着いた席には香り高い紅茶が注がれる。


 それを楽しみながら、一行はシャーロットの話に耳を傾けるのだった。






 ★ 感謝とお知らせ ★


 最新話お読みいただきありがとうございます。

 この作品も、残すところ3話(予定)となりました。

(ちゃんと畳めるのかな………?)


 たくさんの方にお読みいただけて感謝しています♪

 どうぞ残り数話、お付き合い宜しくお願いいたします。



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