第9話 滅茶苦茶ですわね……
「ちょっとレイラ!! あんた、何なのよ!! 何がしたいわけ?!」
エドモント達から遠ざかると、エマは物凄い剣幕でまくし立ててくる。
「それはこちらの台詞なのだけれど」と言いたいのをおさえて、レイラはエマをジッとただ見つめた。
「な、何よ? 何とか言いなさいよ。」
「……あなた、私に意地悪されることを望んでいるの?」
「は? 望んでいるも何も、レイラは私に意地悪する役じゃない。なのに何にもしてこないから、私はいつまでもエドと恋人になれないし。上手く行かないのは全部レイラのせい!!」
「………」
「気づいてないとでも思った? 悪役令嬢、レイラ・ドートリシュ。あなたの中身は、日本人でしょ?」
薄々感じてはいたけれど、それで確信した。
エマも転生者であるという事を。
けれど、それが何だというのだろう。
エマが転生者であるが為に、変にイベントにこだわるのなら、その必要が無い事を教えてあげればいい。
これですべては解決するのではないだろうか。
「……えぇ。ですが私はもう悪役を降りました。殿下とは何の関わりもありません。婚約者でも恋人でもないし、その座を狙っているわけでもありません。ですから、殿下とどうにかなりたいようでしたら、私に構わずに、お好きになさったらいかがですか?」
しかし、そんなレイラの考えは全くの見当違い。
エマは思った以上に手ごわい相手であった。
「あなた馬鹿なの? 愛には試練が必要なのよ。それをエドと乗り越えてこそ、私たちは永遠の愛で結ばれる、それがこのシナリオでしょ? 「大体、悪役を降りた」ですって? アルレットを自分の身代わりにしといてよく言うわよ。結局、性根が腐っているところは変わらないじゃない。サイテーよ!!」
「誤解ですわ。アルレット様が婚約者候補に挙がったのは、単に彼女がそれにふさわしい優秀な令嬢だからです。この現実は、ゲームのシナリオとは全く違うストーリーを進んでいるんです。ですから、悪役の事なんて気にせず、どうにでも……」
「煩い! レイラは私の踏み台として、しっかり仕事をして断罪されればいいのよ!!」
エマの悲痛の叫びが廊下に響き渡る。
しかしその内容は……
「滅茶苦茶ですわね……」
「滅茶苦茶はあなたのほうよ。悪役令嬢が簡単に辞められると思わないでレイラ、本当なら、私はエドと楽しい学園生活を送るはずだったのに!! それだけが私の希望だったのに!!! あなたが勝手な事をしたせいで、エドは私に見向きもしてくれない。………私の人生を滅茶苦茶にしたあなただけは絶対に許さないから!!」
勢いに任せて捨てぜりふを吐き、エマは立ち去って行く。
困った事に、エマとは会話が出来そうにない。
レイラが悪役として歩んでこなかったが故に、
( これは、平穏な学園生活は諦めなければならないかもしれないですわね……)
その現実を重く受け止め、レイラは憂いを抱えるのだった。
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