第3話 そんなアホな婚約者、こっちから願い下げですわ!
話によると、カミーユが前世の記憶を取り戻したのは産まれたばかりのレイラを抱いたときだったそうだ。
そのせいでうっかりレイラを落としそうになり、レイラの母、アンヌには酷く怒られたそう。
カミーユは、前世では2児の父親で、娘がこのゲームにハマっていたのを横目で眺めていたらしい。
自身がプレイしたわけではないので、大した知識はないのだとか。
ただ、「
「とはいえ、中々日本とは教育観念が違うから難しかった。厳しくというとすぐに鞭で打ちたがるし、心を鍛えたいといえば剣術を磨けとなる。間違ってはいないが……レイラに自室の掃除をさせてはどうかと言ったら、アンヌに鬼の形相で怒られたしな……。」
「お父様も苦労なされたのですね。私は記憶を得たのも遅かったですし、すでにお父様がレールを違う道に引いてくださってましたから、そんなことは気にも留めずに呑気に過ごしておりました。申し訳ありません。」
「それが、親の役割だ。レイラが気にする事はない。だが、今はまだ物語の序章。ゲーム開始はこの後だろう?」
「はい……。」
――― そう、ゲームの舞台はドヌール学園。
ひと月後にレイラが入学を予定している貴族学校である。
ゲーム開始イベントは、エドモントと登校するレイラに、食パンならぬクロワッサンを加えたエマがぶつかって転ぶという描写から始まる。
「君のような刺激的な子、初めてだ。」
と、目を輝かせてアホな感想をほざくエドモントに対して、レイラは…
「仮にも令嬢がなんてはしたないんですの!!」
と、至極当たり前の叱責を与えるが、それで泣き出すエマをエドモントは擁護する。
そして最後には…
「君には他者を思いやる心がないのか?」
などという言葉を残し、エマと二人で登校していくのだ。
(……そんなアホな婚約者、こっちから願い下げですわ!)
と、今なら思う所だが。
超我が儘で、世界は自分中心に回っているレイラの、思い通りにならないエドモントへの執着は底知れなかった事だろう。
それがきっかけで、レイラはあの手この手でエマを虐めるようになり、エドモントの心は更に離れていってしまうのだ。
「学園生活が始まれば、私が手助けできることは殆どないだろう。この先はレイラ自身が選択していかなければならない。」
「ですね……。でも、お父様。現状私には、殿下との接点はなにひとつありません。それに、私の取り巻きで悪役の一人、アングラード家のアルレット嬢とも、面識がありません。ですから、
「それは、頼もしい。何か私に出来ることがあれば気兼ねなく相談しなさい。微力ながら力になろう。」
「ありがとうございます。お父様。」
現状、物語は始まってもいないわけだけれど、同じ目標に向かって歩める味方がいるというのは心強い。
カミーユに繋いでもらったバトンを落とさないよう気合いを入れて、レイラは
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