第二十話 無敵の会長
「なっ……せ、生徒会長……?」
「あぁ、そうだが。ーーで、どうしたんだ? 君は」
生徒会長ーー神門 新羅は、その細身に箒を構えられているにも関わらず、実に落ち着いた様子で問いかけてきた。
「い、いや、怒号が聞こえてきたと思って、ちょっと心配になって来ただけですよ」
相手が校内有数の権力者である事を知り、少し退けてしまう圭太だろうか。
言動がいつもに増して弱々しい。
「そうか。それなら大丈夫だな。怒号は恐らく小林先生のものだろう」
小林先生ーーそれは、どの学校にも1人はいる、「よく分からんが細かい事でめっちゃ怒る生徒指導部」である。
尤もこいつは、寧ろ生徒を怒る事で自分が教師である事を認識しているという中々に嫌な奴であり、生徒からの人気は皆無に近いのだが。
閑話休題。
「は、はぁ・・・・・・。しかし、怒号はここから聞こえたと思います。
しかも、ーーまぁ物騒な事ですがーーなんとなく、暴力的な音も少し聞こえましたし」
控え目ながらも、疑問に思った事を迷いなくぶつけていく少年。
しかし、それでも神門は余裕の表情を崩さなかった。
「ふむ、それは多分、違うだろう。
何せ、私はずっと一人だったからな。
あと、暴力的な音、というのならそれも空耳だな。
ーー何故なら、そんな事はこの学園で起きる訳がないからだ。私がいる限りな」
それを聞き、余計怪しがる圭太。
(前半はいくらでも変えられるし、後半もある意味トンデモ論だ。そんなもので信じる奴はいない)
ーーしかし、圭太は。
「・・・・・・そうですか。すみません」
「そうか、それならいいんだ……気をつけて帰るんだぞ」
神門は、結局顔色ひとつ変えなかった。
ーー彼は、決して彼女を信じた訳ではない。
しかし、信じざるを得なかった。
何故なら。
(くそっ、どうして二人目が見つからないんだ、僕が会長の前に現れるまで、三秒も無かったぞ? 隠せる訳がない)
そう。
一番の証拠である、居るはずの『虐められている二人目』が消えたからである。
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