第十八話 一回あること二度はある

圭太は違和感の正体に気付き、やっと顔を上げた。

どのくらい考え込んでいたのか、と時計を見ると、既に完全下校時刻に差し掛かっている。


「長く考え過ぎたかな」


よいしょ、と鞄をからい、少年は早々に教室を後にした。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢

長い廊下を進む。


聞こえるのは自身の足音のみで、昨日の様な悲鳴はない。


新島は既に帰っている事だろう。


「ふぅ、今日は何も無いよな」


圭太は安心しながら歩を進めた。



・・・・・・しかし、天は天邪鬼である。


ーーゴッ!


何か硬いものが、何かを殴る打撃音が聞こえた。

廊下に圭太以外誰も居ないだけに、よく響く。



「……くそっ、なんでこんなにも面倒事が起きるんだよ、放課後はっ!」


不満を爆発させながらも、少年は音源の方向へと走ってゆく。

その顔は正に鬼人の如く。

もしここに人がいたならば、「憤怒の顔の鬼が走ってる」と思われたろう。


「階段の下かっ」


そう呟いた圭太は、左手に見える階段に走っていきーー跳んだ。


ーー秘儀、『五段飛ばし』。


中学時代から磨き続けた、彼の奥義である。


「とうっ……!」


一時的に重力から解放され、身体が軽くなる。

それと同時に、正面からの風が全身を打った。


そして、すたっ、という気持ちの良い音を残して着地。

まだまだイケるじゃん、と思いながらも急ぐ圭太だった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「ここらへんか」


走る足をとめ、ゆっくりと近づく。

下駄箱の影に身を隠して、慎重に。


「ーー! ~?!」


何を言っているかはよく聞こえないが、声の主は「怒鳴っている」、そのことは容易に判った。


「ただの喧嘩じゃ、済まなさそうだな…」


苦笑しつつ、頭の中で救出の算段を立てる。


(怒鳴っているのは一人だけ……しかも、声の切れ目にあの殴ってるような音がしているから、誰かが襲われているのは間違いない)


少年はちらりと横目で、下駄箱の横に設置された掃除道具入れを見た。


(あれを使えれば……!)


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


お読みくださりありがとうございます。


さて、読者の皆様もお気づきの様ですが、

ーー投稿頻度、減りました......すみません💦


しかし! その分新しい物語を書いておりますので、暫しお待ちを!





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