第十六、十七話改稿(読みやすいです)

「教室」で話そう、「隅」で話そう……

奇妙なことばかりだ、と圭太は眉を顰めた。


新島の話は続く。


「それで、不思議に思ったけど、取り敢えず隅に行ってから話したの。


ーーこの時も、普通だった。

いつもと同じ、他愛もない会話をして、笑って…詩の言う、「聞かれたくないこと」っていうのは話さなかった」


「……うん」

少年が相槌を打つ。


「そして暫く話して、少し間が出来た時に、うたが本題を、話し始めたの。


・・・・・内容は、【会ってほしい人がいる】」


これもまた奇異なものである。

その事が果たして、余程聞かれなく無いことで、教室で最も声の届かない隅にまで行かなければならなかったのか。


静香は言葉を続ける。


「私が、誰? って聞いたら・・・・・・

それはいいから、とか会えば分かる、とか言って、一向に答えてくれなくて。

だから、「何年生かだけ教えて」って言ったんだ」



「・・・・・・そしたら、なったの?」


「……」


沈黙は、肯定の意だろう。

彼女は目を伏せた後、布団を頭から被る。

ーー今迄共に過ごしてきた友達が突然、瘋癲な行動を起こした。

その悲しみを受けても尚、涙を流さない彼女は本当に強いのだな、と圭太は感じた。


暫くの間、無言の時が続く。


刻は朝、更に来客も無い為、鳥の囀りが良く聴こえる。

新島は、未だ布団に隠れたまま。

圭太もベッド近くの椅子に座り、何かを考える様に俯いていた。



「ありがとう」


唐突に、彼女が口を開く。

圭太は直ぐに顔を上げ、静香の方を見た。



「田中君は、迚も優しいんだね」


彼女はそう言って、くしゃくしゃになった顔に無理矢理笑顔を作った。



圭太は、少し泣きそうになった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


少年が新島の元を離れ教室に戻ったのは、暫くした後、保健の教師が帰ってきてからだった。


あの若い教師に預けた彼女が心配ではあるが、今は授業に集中しよう、と教科書を開く。


前日、蓮の話を聞いた後、その事ばかりを考え午後の座学が全く耳に入らなかった為、今回は反省し真剣に授業を受けることにしたのだ。


「……えー。つまり、この場合ではCを使い₃C₁となり、計算して3×1÷1……」


ーーしかし、数学教師の得意とする長時間説明ラリホーマの強大さを、彼は忘れていた。


(くそっ、寝てたまるかっ......)


結局、雪崩のように襲い掛かってくる睡魔との戦闘により、授業の大半は理解することができなかった圭太だった。



キンコンカンコン、と終鈴がなる。


クラス内の多くの生徒が帰り支度を始めたり、友達の机で談笑したりしている間、圭太は自席から動かず、只静かに窓の外を眺めていた。


生徒たちが、花弁が集められた鉛丹色の山を見て、各々の感想を言い合っている。

そんな彼らの頭上では、桜の大樹が優雅にその枝を揺らしていた。


……この席では、東林学園の誇る美しい中庭が一望できる。


彼の数少ない大切な存在の一つだ。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


新島が既に保健室を出、教室へと戻っていることは確認済みである。

三時限目辺りに、廊下を通っている姿を見たのだ。


彼女の無事を確認できた為、圭太は安心して思考する。


(新島さんのクラスで感じた違和感……あの、詩って人のものじゃない)


ーー彼女のクラスで感じた、奇怪な違和感について。


♧♧♧♧♧♧♧♧

祝! 累計600PV、一日100PV突破!

感謝感激です!

皆さん、本当にありがとうございます!

特に、「一日100PV」は、僕の目標の一つだったので、迚も嬉しいです!

これからも、よろしくお願いします!

(本作を面白いと感じていただけたら、

★★★を頂けると、今後の最大の励みになります。もし良ければ、お願いします)


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

Tommyからお知らせです。

この度、新たにもう1.2作品程投稿する事に致しました。

一つは「ラブコメ」、

もう一つは「復讐」の話です。

何方も精魂込めて製作中です。

「戦闘力5」と共にお楽しみ頂けたなら、嬉しいです。

乞うご期待!

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