最終話 海

 夏休み最初の日曜日。僕の家族とルカちゃんの家族は海に来ている。


「いい天気だね」


「うん」


 今日は雲ひとつない快晴。絶好の海日和。


「隼人、行こっ」


 ルカちゃんに手を引かれ海に入ってく。


「気持ちいいね」


「うん」


 僕たちはルカちゃんの胸の辺りまで海に入っている。


「水着かわいい?」


「うん。かわいい」


 ルカちゃんの胸元を見ていた僕。水着を見ていたと勘違いされたみたいだ。


「隼人」


「なに?」


「ちゅ〜しよ」


「へっ!?」


 僕は周りを見渡した。僕たちの周りには人はいない。


「公共の場でちゅ〜はダメだよ」


「潜れば見えないから大丈夫だよ」


「それでもダメでしょ」


「ファーストキッスは海の中ってロマンチックじゃない?」


 ルカちゃんは僕の手を握った。


「ちゅ〜しよーよ」


「マジでダメだって」


「はいは〜い。ルカは今から潜りまーす。隼人がチューしないと沈んだままでーす」


 ルカちゃんはニコッと微笑んで、僕の目の前で海に潜った。


「は、はい? え? ちょ、ちょっと、ルカちゃん!?」


 ルカちゃんマジですか! どうしよう……周りには人はいない。どうするの僕!


 ルカちゃんを持ち上げてもいいけど、また潜られると思う。その繰り返しは体力を消耗するだけ。


 考えている時間はない。このままだとルカちゃんが息切れをして、『ぷはっ』っと海から顔を出してぷんぷん怒る可能性はある。そうなると今日の楽しい一日がなくなってしまう。


 うん。一旦ね、一旦。僕も潜ろう。それからどうするか考えよう。潜れば誠意は伝わるはず。


 よ、よし、いくよ。せーの!


 僕は大きく息を吸い込み、ルカちゃんの待つ海に潜った——。


 終わり。

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僕の彼女は積極的な可愛い幼馴染。 さとうはるき @satou-haruki

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