第7話 家をつくろう
「お~い。ユリちゃん」
太陽が真上に昇っていた。私はタクマと採掘作業に没頭中。家を作る敷地を平らにならしていたところだった。小さな湖畔の奥に目を凝らす。作業を終えたユリちゃんとシュンスケが、コッチに歩いてくる。
「ユリちゃん。敵は出なかった?大丈夫だった?」
「う、うん」
「俺がいるんだから大丈夫だって言っただろ」
「だから、心配なのよ」
「二人とも戻りましたか?無事でなによりです」
タクマも顔を出し、みんながそろった。
なんとなく、全員そろうと嬉しくなる。ゲームの世界とはいえ、死んじゃったら、どうなるんだろ?そう考えるとコワイ。それでも仲間がいると少しはまぎれる。ユリちゃんが無事に戻ってきたことが、ウチにとって何よりも嬉しかった。
「こっちは、めっちゃ木を切ってきたぜ。で、そっちはどうよ」
「家を作りやすいように石で土台を固めてあります」
「じゃあ、時間もないことだし、さっさと作っちゃおう」
「「お~!」」
平らに整地しておいた場所には土台となる石を敷き詰め、その上から木材の床を作っていく。壁も木材。屋根も……まぁ、ちょっとカクカクしてるけど、それっぽくなった。
ちょっと離れた所には余った木材で柵を作り、敷地を囲む。
最後は入り口に、クラフトしたドアをつけて完成!
「やった!できた」
「まあまあの出来栄え、と言ったところでしょうか」
夕暮れ時。なんとか家を作ることが出来た。見た目は簡素なログハウスだが、それなりに広さもあり、4人でも狭くは感じない。おしゃれな小物とか置きたいけど……今ある材料じゃ無理だよね。
それより……
「家が出来たと言っても、やっぱり不安……じゃない?」
「なんだ、カナはビビりだな」
「そんなんじゃ……」
シュンスケに茶化されるとムカつく。私は頼るようにユリちゃんを見ると、彼女は微笑みながら答えてくれた。
「ベッドを作れば夜をスキップできるよ」
「なるほど。さすがユリさんですね。たしかに、実際のゲームと設定が同じならば可能なハズ……でも、ベッドを作るには毛糸が必要ですね」
さすがはユリちゃん。私の知らないことをいっぱい知ってる。
「タクマ。毛糸はどこにあるんだ?」
「ひつじから取れますが……」
「ウチ、知ってる。ハサミが必要なんだよね。それなら鉄を探しに行かないと」
はしゃぐ私は外に出て落胆した。外は陽が傾き暗くなりかかっていた。
「さすがに、時間がないか~。また明日にでも……」
「大丈夫だよ。カナちゃん、羊を倒しちゃえば良いんだよ。それなら、なんとか夜までに間に合うと思う。食糧もゲットできるし、一石二鳥だね」
「で、でも……」
ぐぅーとみんなのお腹がなる。
「そうだな。生き残って現実世界に戻らないとな」
「躊躇していられませんね」
——なんか、ユリちゃん。いつもと様子が違う……ような?気のせいよね
ウチらは松明を作り、オレンジに染まる草原を歩き出した。
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