第8話 いっぽう、そのころ……

「ここはどこ?」


 まわりを見渡すと洞窟とは少し様子が違う。整えられた石壁。窓はなく、明かりは松明の光だけで、目の前には強固な鉄格子があります。


 ……ここは、オリの中?私は閉じ込められたのだと理解しました。


 ——誰がこんなことを。


 記憶を思い返す。私はシュンスケ君と木材を集めているところでした。森のなか、少し奥まったところで、不思議な魔法陣に目を奪われた……そうだ、あの時だ!


 魔法陣を踏んでしまった私は、体を動かすことはできず、視界が揺れる。そして、気づいたら此処にいたんだ。


 ——魔法陣?ゲームで、こんな機能あったかな?


「それより、ここから出る方法を考えなくっちゃ」


 ……そうだ。魔法なら!


 振り下ろす杖から、ほとばしる炎。しかし、魔法を使ってもオリを壊すどころか、まわりの石壁すら、びくともしません。


「魔法は……だめかぁ〜。あッ!ここにも宝箱がある」


 森でカナちゃんと見つけた宝箱と似ています。古びた質素な宝箱。そっと開けて中身を確認。もしかしたら、脱出に必要な道具があるかも……中身はパンと牛乳?


 そして、身代わり人形。レアアイテム、ゲット!って、そんな浮かれてる場合じゃないよ〜。


 身代わり人形は、一度HPが尽きても復活できるレアアイテム。でも、今は必要ないかな。脱出に必要なものは、入っていませんでした。なかに入っていたパンは……


「なにこれ!焼きたてみたいに香ばしい」


 牛乳を飲んでふぅーと一息。もう一度、確認。宝箱には脱出できるアイテムはなく、ポケットの中には、さっきまでシュンスケ君と拾っていた木材しかない。鉄格子は魔法でも壊すことができなく、まわりは石壁で……石壁、そっか!


 私はクラフト台をポケットから取り出す。手のひらサイズほどのクラフト台は地面に置くと、机くらいの大きさまで膨れ上がります。

 木材をこねていき、私は木でツルハシを作りました。オリを叩いても、びくともしない。やっぱり、そうだよね。でも……


「コッチなら!」


 石壁にツルハシをぶつけます。感触アリ!ツルハシをコツコツとぶつけていると、やがて石のブロックは粉々に崩れ、私はオリの外へと脱出することに成功しました。ヤッター!



 オリの外は、ところどころに松明がおいてあり、人工のトンネルの様に整えられています。特に敵は現れず、私はひたすらに舗装された道を歩きます。


「カナちゃん。心配してるかな?みんなも……家は出来たかな?夜は乗り切れたかな?」


 考え始めると止まらない。みんなが心配です。急がないと!はやる気持ちで足は速くなる。どこまで続いているのか分からないトンネル。カツカツと私の足音だけが響いていました。


 ——あぁ、早くみんなに会いたい


 奥の方に眩い光が見える!


「やった!出口だ」


 と、喜んだのもつかの間。私はガクッと肩を落としました。落胆したのでした。

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