第6話 夜にそなえて
日は昇る。まばゆいほどの太陽が薄明りの山々から顔を出します。すると、ゴブリンは目をくらますように、手で目をおおい、森の中へ消えていきました。
「ゴブリンは暗いところには強いけど、太陽の光には弱いのですよ」
タクマくんは、ゴブリンの生態を説明しながら、長い弓をポケットの中へと入れていく。小さなポケットに長い弓矢がずぶずぶと入っていきます。
それ以外にも、ゴブリンが落とした石オノや弓矢なんかも拾ってはポケットに詰めていました。
「はぁ、さすがに疲れたな」
そう言って、シュンスケくんはドカッと地面に腰掛けました。カナちゃんも「ふぃ~」と大きく息を吐きながら地べたに寝そべります。
「こんなんじゃ、身が持たないよ。ユリちゃん、何か良い方法はないかな?」
カナちゃんが困ったように私の顔を見上げていました。
敵から身を守るためには、どうすればいいか?私は周りを見渡しながら、何かいい方法はないか考えます。タクマくんも「う~む……」と唸りながら首をひねっていました。
周りは草原。朝焼けに小さな湖畔の水辺はキラキラと輝いています。その奥には、私たちが通ってきた深い森。その中から、白い綿毛を身に纏った羊が三頭、ぽてぽてと歩いています。
「そうだ、私たちで家を作れば良いのよ!」
「ウチらで家を!?」
「いや、さすがに……そりゃ無理だろ」
カナちゃんもシュンスケ君も驚いている様子でしたが、タクマ君だけは違いました。右手を顎に持ってきて、何やらぶつぶつと言いながら考え込んでいます。
「ユリさん。ナイスなアイデアですね。これだけ材料がそろっていれば……厳重な家、それと柵があれば、夜を過ごすのは楽になる筈です」
「マジで家つくれるのかよ……」
「大丈夫、作れるよ。ユリちゃんは無理な事は言わないもん。タクマだって言ってるし。ね、ユリちゃん」
「う、うん。たぶん作れると思う」
「俺は、どうやって家を作ればいいか。まったく、わかんねぇぞ」
「それなら、ユリさんと一緒に行動してください」
「なるほど。そりゃいいな。いろいろと教えてくれよ。ユリ」
「う、うん。わかった」
私たちは分担して家を作るための材料を集めることになりました。効率化を図るため二手に別れます。木を集めるグループと石を集めるグループ。私はシュンスケくんと木を集める事になりました。
「シュンスケ!しっかり、ユリちゃんを守りなさいよ」
「お、おう。それは任せろ!」
私とシュンスケ君は森の方へと向かいました。
作業は思った以上に手際よく進みました。タクマ君が渡してくれた石斧で、シュンスケ君が木々を倒し、私は拾い集めました。
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