第5話 魔法のつえ
私たちは森の木々を避けながら進みました。
「ユリちゃん。声はこっちの方から聞こえたよね?」
「うん。急がないと!」
日が落ち、暗がりの森は不気味です。月明かりで、どうにか進むことができますが、森の深くまでは見通すことができません。
私たちの進むペースも、だんだんとゆっくりになっていきます。
「迷わないようにしないと」
「ユリちゃん。あれ見て!明かりが見える」
カナちゃんが指差す方向には、温かみのあるオレンジ色の光が見えました。その中に人影が動いているのが、かすかに見えました。
「シュンスケとタクマかな?」
「行ってみようよ!」
「うん。そうだね」
私たちは勢いよく地面を蹴って走り出しました。生い茂った雑草を踏む音が森に木霊し、少しずつ、明かりに近づく。
カナちゃんは運動神経が良く、森の木々をスルリと、かわすようにして駆け抜けていきます。
「待ってよ〜」
私も遅れないように必死になって走りました。
「ユリちゃん。早く来て。スゴイ!森が無くなったよ」
私がカナちゃんに追いつくと、森があけてました。木々はあるもののさっきまでの鬱蒼とした深い森林とは、まったく異なる光景。
目の前には月明かりに照らされた草原。所々に松明が地面に突き刺してあり、視界は良好とまではいかないものの、状況を把握するには充分でした。
「はぁ〜〜〜!」
シュンスケ君が緑色のゴブリンに木の剣で切りかかっていました。
「タクマ。数が多すぎるぞ」
「口を動かす前に手を動かしてください。次、来ますよ」
そんな姿を見て、わたしとカナちゃんは目を合わせます。
——私たちも行こう!
お互いの気持ちを確認するように、こくりと首を縦に振ります。駆けだします。初めての戦闘にドキドキと胸の鼓動は高鳴ります。
それでも、私は(助けたい)という気持ちを、作ったばかりの魔法の杖に乗せて、ゴブリン目掛けて魔法の杖を振り下ろしました。
杖の先が光り輝く。ほのかに温かい空気の流れから、杖からの反動と同時に炎が噴き出し、ゴブリンに命中しました。
「これはユリがやったのか?」
燃え盛るゴブリン。口を多く開けて、目をぱちくりとさせるシュンスケ君が、私を見ながら首を傾げました。
「戦闘が長引いてはぐれてしまって……無事だったんですね」
「それはコッチのセリフだよ」
「よかった。でも、魔法ですか。これは強力ですね」
「ユリちゃんだけじゃないよ。ウチだって!」
カナちゃんが大きく杖を振ると薄い緑色の風が刃となって、ゴブリンを斬りつけました。
「さらに!」
緑色の宝石が煌めく。カナちゃんは魔法の力で近くにある石ブロックを持ち上げると、敵めがけて石礫を放ちました。
「カナちゃんの魔法、スゴイね」
「ユリちゃんもね」
シュンスケくんが剣を振るい。タクマくんが弓を射る。私とカナちゃんが魔法で支援して、何とか夜を乗り切る事ができました。
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